2月初めにアメリカ上空に現れ、飛行を続けていた中国の偵察気球とみられる気球が撃墜されました。軍事施設の周辺を飛んでいたこの気球の狙いとは…そして、アメリカと中国の関係はどうなるのか?

中国の偵察気球“実態”と米中関係

中国による偵察気球の問題でアメリカのブリンケン国務長官の中国訪問が急きょ取り止めになり、米中外相会談が延期になった。

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台湾問題やロシアによるウクライナ侵攻がある中、米中関係は緊張が高まってしまうのか?今後の行方をその政治的な背景なども含めて、関西テレビ・神崎博デスクや専門家の解説と合わせて考えていく。

関西テレビ・神崎博デスク:
(Q.この気球の大きさなどは?)

大きさなんですが、アメリカメディアのよるとおよそバス3台分、30メートルを超えるということなんです。普通の気象用の気球は5~6メートルが標準といわれているので、それの何倍もの大きさ。かつ、ソーラーパネルのようなものもあって普通の気象用のものとは考えにくいと思われます

続いて、その気球の飛行ルートを見てみると…  

2月1日から4日にかけて、中国の偵察気球がアメリカ本土上空、北西からフロリダ半島の北側を南東方向に飛行していった。これについて、中国側は「民間の気象研究用の気球が風の影響で誤ってアメリカに入った」としているが、アメリカ側は「(中国当局が)機密軍事施設を監視しようとしていたと」と中国を非難している。

アメリカが神経をとがらせる理由は…中国の偵察気球が飛行したルートには、ICBM(大陸間弾道ミサイル)配備、爆撃機運用、核ミサイル配備、空軍基地、ステルス爆撃機運用、原子力施設といった軍事的に重要な施設がことごとくあるからだ。どのような目的で中国は偵察気球を飛ばしたのか?安全保障に詳しい防衛研究所の高橋杉雄さんによると今回の気球について…

防衛研究所 高橋杉雄さん:
気象用の気球・科学調査であれば他国の領空に入る場合には相手の国の了承を取るべき。なので、了承を取っていない時点で気象用という信ぴょう性は低い

とした上で、国際社会では、スパイ衛星ならぬ、スパイ気球を飛ばすことに一定の役割があるといいます。

防衛研究所 高橋杉雄さん:
人工衛星は飛ぶ時間が分かっているので、時間に合わせて隠されるものがあるかもしれないので極秘の兵器の実験場であるとか核兵器の施設を(気球で)見たいと考える可能性はある。(撃墜された気球の)破片を収集すれば、どういったセンサーを積んでいたかが分かるので、現時点で憶測する意味はないが、カメラが積んであれば画像情報、アンテナが積んであれば電波・電磁波を収集する目的だったと考えられる

高橋さんは今回の気球の飛行目的について

防衛研究所 高橋杉雄さん:
アメリカの軍事的な弱点を探す可能性と自国で同じような施設を建設する場合にマネをする情報を探す可能性がある

と、2つの可能性を指摘しています。いま中国はICBMを広く配備した基地をつくっているのでアメリカはどうやっているのか?中国は知りたかったのではないかと高橋さんはみている。

気球“撃墜”の政治背景 今後の米中関係

Q)各国、偵察衛星もあるのになぜ、わざわざ今回、偵察気球で探ったのか?
関西テレビ・神崎デスク:

軍事用の偵察衛星は同じ場所は4日に1度くらいしか見ることができないのと、来る時間のパターンが分かれば、大事なものを隠そうとすることもできる。一方、気球ならゆっくり進んでいくので、見つかるリスクはあるが、じっくり見れるので偵察気球は偵察衛星を補完的な役割があるとみることができる

Q.バイデン政権は海上に抜けてからようやく気球を撃墜しましたが、一連の判断は?
関西テレビ・神崎デスク:

中国のかな?と、思いつつもおそらく当初は事を荒立てたくないと考えていた。撃墜すると国際問題に発展するかもしれないので「静観」しようと…また、陸地で撃墜すると破片が落ちてきて危険だと考えていた。一方で、静観していると「中国に弱腰すぎる」と野党(共和党)からの突き上げ・圧力が出てきた。そこで、態度を変え、海に出たタイミングで撃墜した。アメリカは撃墜した気球にどんなセンサーが付いていたかなどを調査しています

Q.米中関係は緊張が高まるのでしょうか?
関西テレビ・神崎デスク: 

(お互い)対話路線は変わらないと思います。アメリカ側は当初、これ(気球)を問題にしたくなかった。国内事情で問題にせざるを得なくなったんで、中国に対し弱腰と見られたくなかったんで、外相会談は中止でなく、とりあえず延期にしたんです。中止でないところがポイントなんです。対話路線を続けたい意向があった

関西テレビ・神崎デスク: 
一方、中国側も今までも日本やアメリカで同様の気球を飛ばしていたので、問題にならないと思っていたが、結果的に大事になった。中国からすると予期せぬ(アメリカ側の)対応だった

“観測気球”か“スパイ気球”か…いずれにしても、米中関係の行方は日本にも大きく影響しそうだ。今後も引き続き注視が必要だ。

(関西テレビ「報道ランナー」2023年2月6日放送)

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