大学入学や社会人になって、ひとり暮らしを始める人もいるだろう。 

ただし「自立」は「孤立」ではないことは頭に入れておいてほしい。 2度のひとり暮らしを経験し、数々の失敗を重ねたという華井由利奈さんは「ひとり暮らしは“できて当たり前”ではない」と言う。 

華井さんの著書『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)には、ひとり暮らしの先輩や専門家のアドバイスが詰まっている。 

そこから「自分の心を自分でケアする方法」について、一部抜粋・再編集して紹介する。ひとり暮らしや心がつかれたときにぜひ読んでほしい。

「自立」は「孤立」ではない 

「自立」とは、誰にも依存せずひとりで生きることだと思われがちです。 

しかし、そもそも人は、単体で生きられる生きものではありません。 

友達や社会など、依存先を増やして安心感を得ることで「自分は生きていける」と思えるようになること。これが、本当の意味での「自立」です。 

「ひとりでどうにかしなきゃ」となんでも抱え込むと、パンクしてしまいます。困ったときは、無理をせず身近な人にSOSを出しましょう。 

そして、もし自分を責めそうになったらゆっくり休みましょう。 

「すぐ不安になる」「人と比べて落ち込む」「消えてしまいたいと思う」…そう感じたときは自分が思っている以上に心と体が疲れています。 

勉強も仕事も休んで心と体をいたわることが大事です。 

「しんどいモード」のサインが出たら 

体や心が疲れて「しんどい」と感じているときには、4つの兆しがあります。 

1つ目は、「自分責めモード」。

「ボーッと過ごしてしまった」「余分なものを買ってしまった」「やらなきゃいけないことがあるのにやってない」など。自分は何をやってもダメだという気持ちになり、1日のうちに何度か自分を責めてしまう状態です。 

2つ目は、「頭の働き低速モード」。

「簡単な取扱説明書を読んでも、操作できない」 「いつもは素早くできるのに、スピードが落ちてしまった」など、今まで簡単にできたことが、できなくなってしまう状態です。 

『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)
『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)
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3つ目は、「無力感モード」。

1つ目、2つ目が悪化した状態です。「私はやっぱりダメなやつ」「私にはなんの能力もない」「このままどん底まで落ちて、二度と戻れないに違いない」など、将来になんの希望も持てなくなり、情けない自分を責め続けてしまいます。 

4つ目は、「ネガティブ感情だだ漏れモード」。

「大したことじゃないのに涙が出る」「親しい友達にキレてしまう」「不安な気持ちが止まらない」と、本人は疲れ果てていて、心穏やかに過ごしたいと思っているけれど、不安や怒り、嫉妬などに気持ちが支配されてしまう状態です。 

このような状態になったときは、自分が思っている以上に体が弱り、疲れています。

「なんとかしなきゃ」と焦るのではなく「体が疲れてるんだ」と考えて、まずはトータルで1日8時間以上寝るよう心がけ、ゆっくりと体を休めましょう。  

しっかり休息を取り、心と体が回復してくると、誰かと比べて落ち込んだり、わけもなくイライラしたりすることが、少しずつ減ってくるはず。

あえて生産性のない1日を過ごそう! 

「今日は“自分のために”ゆるっと過ごそう」と事前に決めておくと、気がラクになります。 

このとき「ムダな1日を過ごしてしまった…」と後悔せず、時間を気にしないことが大切です。急げば急ぐほど自律神経が乱れ、イライラや疲労がつのることになります。 

旅行や買いもの、スポーツなど、刺激的で楽しいアクティブなストレス解消法は、瞬間的に気持ちがラクになりますが、体には疲れがたまります。そのため翌日になると、いっそう気持ちが沈んでしまうことも。 

また、アクティブなストレス解消法は、大人数で楽しむものが大半です。人間関係はストレスの原因になりやすいもの。多くの人と関われば関わるほど、心はダメージを受けやすくなり疲労がたまってしまいます。 

『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)
『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)

疲れたときは、観光地やテーマパークなどの混雑した場所ではなく、自宅や行き慣れた静かな場所で「癒やし系」のストレス解消をするのがおすすめです。 

何か特別なことをやろうとせず、「今日は生産性のない1日を過ごせた!」と心の底から言えるような時間を過ごしましょう。

ポイントはノルマや目標を決めないこと。 

先のことは気にせず、「いま自分が楽しいと思えることをしよう」と考えて、自分のためにゆるゆると過ごすのがおすすめです。 

嫌な記憶は書き出して忘れよう 

腹が立ったときは、嫌なできごとや嫌な相手のことを紙に書き出してみましょう。

感情の勢いに任せ、イライラをぶつけて書いていくと、やがて心が落ち着いてきます。 

『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)
『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)より(イラスト/OGA)

【嫌なことの書き出し方】 

<STEP1>嫌だったことと、自分の感情を書き出す 
(例)「Aさんにめっちゃ叱られた。あんな言い方なくない? ムカつく、悲しい。本当はこうしてほしかった」 

<STEP2>被害者モードを極力そぎ落として、相手の視点に立ってみる 
(例)「忙しくて余裕がなかったからでは?」 

<STEP3>今後の対策を書き出す 
(例)「忙しいときは、なるべく近づかないようにしよう」 

冷静になってきたら、被害者モードを極力そぎ落として、相手の視点に立ってみましょう。

そうすれば、「あの人は忙しくて余裕がなかったのかもしれないな」と全体を俯瞰して見られるようになるはずです。 

さらに「忙しそうなときには、なるべく近づかないようにしよう」と、今後の対策を練っておくと、嫌な記憶はさらに薄れるでしょう。 

ポイントは、「1回書けば忘れられる」と思わないこと。そもそも人の心は、ゆっくりと変化していくものです。 

過度に期待せず、「気持ちをラクにするために、ちょっとやってみようかな」という程度のスタンスで、何度も紙に書き出してみてください。 

繰り返し書くうちに、記憶が薄れていくことに気づくはずです。「もういいや」と思えたら、嫌な記憶と一緒に紙を捨てましょう。 

『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)
『一生役に立つしんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』(光文社)

華井由利奈 
ライター。大学卒業後、印刷会社に就職。コピーライターとしてトヨタ系企業など100社以上の取材を行う。2016年に独立。現在は、女性活躍、ビジネス、教育、生活情報など幅広い分野で執筆。大学や教員講座での講演も行う。著書に『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社) 

華井由利奈
華井由利奈

ライター。大学卒業後、印刷会社に就職。コピーライターとしてトヨタ系企業など100社以上の取材を行う。2016年に独立。現在は、女性活躍、ビジネス、教育、生活情報など幅広い分野で執筆。大学や教員講座での講演も行う。著書に『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)