122年の歴史に幕 帯広市の百貨店が閉店

北海道帯広市の百貨店「藤丸」が、1月31日に122年の歴史に幕を下ろした。

大勢の人に惜しまれながらの閉店。

「藤丸さん」の愛称で親しまれてきた、老舗百貨店の最後の1日を追った。

藤丸・藤本長章社長:
いらっしゃいませ、ありがとうございます

営業最終日の午前10時。藤本長章社長が客を出迎えた。

35年前に社長に就任してから毎日続けてきましたが、この日が最後だ。

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藤丸・藤本長章社長:
最後までお客様に来ていただいて感激。今までやってきた集大成と思って、やっていきたいと思います

「離れがたい」親の代から

人気の「デパ地下」の食品売り場。ひときわ人が集まっていたのは、餅や団子を販売している「餅団子工房まる」だ。

店長の佐々木珠美さん。20年前に父親が藤丸に出店して以来、働いてきた。

餅団子工房まる・佐々木珠美さん:
親の代からやっていて、ここだけで働いてきた。温かいお客さんばかりで、離れがたいですね

営業最終日のこの日は、午前4時から仕込みを始めた。

餅団子工房まる・佐々木珠美さん:
この1週間は普段の5倍くらい作っている。最後に来てくれるお客さんが多くて、足りないくらいです。本当にありがたいですね

子どもの1歳のお祝いに「一升餅」を予約していた人だ。もう、6年の付き合いになる。

買い物客:
ちょうど最後の日だったんで、記念になったね。背負えるかな? ずっと十勝で生まれ育ったので、閉店は悲しいです

午後5時にはすべて売り切れた。このあとは帯広地方卸売市場への移転が決まっている。

餅団子工房まる・佐々木珠美さん:
今までどおりお客さんと触れ合って、販売できる場所がいいなと思ってます。寂しいですね、まだ実感はわかない。終わってからかな

「泣けてくるよう」帯広市民として

市民の立場から藤丸を支えてきた人がいる。帯広市の大松道照さんだ。

大松さんは16年前、市民による「藤丸を応援する会」を結成した。

藤丸を応援する会・大松道照さん:
泣けてくるような心境だね。普段もこれくらい人が入ってくれれば、閉店しなくてすんだのにと思う

会ではこれまでに集客イベントや、百貨店の新しい魅力を発見しようと「藤丸アレコレ探検隊」という企画などを行ってきた。

藤丸を応援する会・大松道照さん:
市民が応援しているデパートなら、もっと続けようという信頼関係を深めることができたのではないか

会の最後の活動は、市民からの藤丸へのメッセージを店内に張り出すことだった。180以上の声が集まった。

藤丸を応援する会・大松道照さん:
次の経営陣がこれを見て、『自分たちも頑張らなければ』という気持ちを起こしてもららいたい

藤丸を応援する会・梶川博子さん:
つながってほしい。期待しています

バトンを引き継ぎ 目指す営業再開

市民の願いのバトンを引き継いだのが、地元企業2社が立ち上げた新会社だ。

藤丸の屋号と土地建物を引き継ぎ、営業再開を目指す。

新しい藤丸の営業形態は検討中だが、社長に就任した村松一樹さんは…

新会社「藤丸」・村松一樹社長:
"食"というテーマは盛り込みたい。デパ地下が素晴らしい。贈答品での藤丸の包装紙には、ものすごく価値があります。そういう価値があるものを抽出し残して、次に生かしていきたい

愛されてきた「藤丸」

藤丸の営業最終日には、さまざまな人たちの思いがあふれていた。

買い物客:
小さいころからあったデパートがなくなるのは寂しいです。学生のころはしょっちゅう、買い物やアルバイトに来ていた

藤丸 総務人事課長・田中忍さん:
寂しいという気持ちと、ちゃんと最後まで全力を尽くそうという話はしています。人生の半分以上ここにいます。とてもいい会社です

午後7時。最後の別れを告げるときがやってきた。

藤丸・藤本長章社長:
藤丸の創業122年の歴史は、帯広十勝の歴史そのもの。本当に長い間お世話になりました。そして、ありがとうございました

122年の歴史に幕を下ろした藤丸。その思い出は人々の記憶に残り続ける。そして、新しい藤丸への期待が高まっている。