鉄道模型の世界にハマる人々。その情熱を集結させ、手間ひまかけた精巧なジオラマはまるで芸術作品のよう。広島で43年続く鉄道模型ファンの集いを、テレビ新広島のてっちゃん・野川諭生アナウンサーが取材した。

好きな風景をつなげた“大型ジオラマ”

野川アナ:
おおー!すごいですよ。皆さん、趣向を凝らしたジオラマを組み立てています

広島市安佐南区の公民館に集まった鉄道模型ファン
広島市安佐南区の公民館に集まった鉄道模型ファン
この記事の画像(19枚)

「広島鉄道模型友の会」は、月に1度、広島市安佐南区の安東公民館で活動する鉄道ファンの集まり。取材した日は、それぞれの会員が作ったジオラマを組み合わせて大きな鉄道模型を作る、年に一度の一大イベント。

化粧品を使って、鉄橋の”さび”を細かく表現するメンバーも。

会員:
鉄橋がキレイすぎるなと思って。本当は、ボトルからもっとさびが垂れるんですよ

そう言って、茶色のアイシャドウを鉄橋のボトル周辺に塗り、”年数を重ねた味わい”を出していく。

鉄橋に化粧品のアイシャドウを塗って”さび”を表現
鉄橋に化粧品のアイシャドウを塗って”さび”を表現

何もなかった公民館の一室に、わずか1時間ほどでリアルな鉄道ジオラマが完成した。駅、トンネル、鉄橋、電柱、山に川まで…。モジュール1つ1つは各会員が作った自分の好きな風景。それを持ち寄ってつなげ、部屋を一周する大きなジオラマに。その精巧な仕上がりは、ただただ、すごいの一言だ。

実際は見られない“工場への引込線”も

「広島鉄道模型友の会」会長の坂本工さんが作ったジオラマを見せてもらった。

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
趣味全開になってしまうんですけれど、化学工場への引込線です。一般の人は入れないので実際には見られませんが、こういう風景が見られたら楽しいかなと。そういうコンセプトで作ったジオラマです

坂本会長が作ったジオラマは化学工場への引込線
坂本会長が作ったジオラマは化学工場への引込線

”引込線”とは、鉄道の主要路線から分かれて工場などへ引き込まれた線路のこと。実際は関係者以外立ち入り禁止のため、鉄道模型だからこそ見られる風景だ。

化学工場のジオラマを走り抜ける車両
化学工場のジオラマを走り抜ける車両

一方こちらは、JR山陽線の瀬野駅から八本松駅への急勾配区間、通称「セノハチ区間」で活躍した機関車・EF67を配置し、”セノハチ越え”をイメージしたジオラマである。

機関車・EF67の”セノハチ越え”をイメージ
機関車・EF67の”セノハチ越え”をイメージ

ジオラマの時代設定もメンバーによってさまざまだ。

駅前の建物には懐かしいホーロー看板が…
駅前の建物には懐かしいホーロー看板が…

野川アナ:
駅前の懐かしいホーロー看板には、高橋カメラマンもグッと来るんじゃないですか

野川アナの問いかけに、うんうんと画面も縦に動かす高橋カメラマンだった。

模型の“走行音”で一杯飲める?

手間ひまかけて作り上げたジオラマに、車両を走らせる瞬間がたまらない。野川アナも私物の鉄道模型を持参していた。

野川アナ:
鉄道模型はサイズがいろいろありますが、私も1つ持ってきました

私物の鉄道模型を見せる野川アナ
私物の鉄道模型を見せる野川アナ

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
227ですね

野川アナ:
227、いわゆるレッドウィングです

野川アナが持ってきた模型は「Nゲージ 227系電車」。ゲージとは鉄道用語で”軌間=線路の幅”を指す言葉で、軌間が広くなるほど模型のサイズも大きくなるというわけだ。「Nゲージ」はレール幅が9ミリ、150分の1スケール前後の日本で一番人気の鉄道模型。友の会ではNゲージの約2倍、レール幅16.5ミリの「HOゲージ」の模型を楽しんでいる。

手前が野川アナの模型「Nゲージ 227系電車」、奥が「HOゲージ」
手前が野川アナの模型「Nゲージ 227系電車」、奥が「HOゲージ」

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
大きい分、機関車や車両のかっこよさがよりわかりやすくなると思います

野川アナ:
模型でもつなぎ目を通過する時のジョイント音…いわゆるガタンゴトンが聞こえてくるんですよね

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
音も大きいですから、魅力の一つだと思います

野川アナ:
この音を聞いているだけでも、ご飯が一杯食べられそう

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
そうそう。中には、酒が飲めるっていう人もいらっしゃいます

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長(左)と野川アナ(右)
広島鉄道模型友の会・坂本工 会長(左)と野川アナ(右)

”ご飯が食べられる音”で鉄道愛のスイッチオン!走行音について坂本会長と野川アナが意気投合した。鉄橋あたりで、特にいい音が響くという。

車両を“自分で走らせる”楽しみ

鉄道模型はただ走るだけでなく、コントローラーで方向の切り替えやスピード調整をすることができる。

ということで、野川アナも車両を走らせてみた。

野川アナ:
出発進行!スーっとゆっくり、車両が動き出しました。これはダイヤルの回し方によってスピードが変わってくるんですよね

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
そうです。スロースピードで走り始めたので、リアルだなと。うまいですね

野川アナ(左)の操作技術を褒める坂本会長(右)
野川アナ(左)の操作技術を褒める坂本会長(右)

鉄道模型の初操作で、坂本会長からお褒めの言葉をもらった野川アナ。ジオラマを一周して模型が駅に帰ってきた。うまくホームに停車できるか?

一周して駅のホームへ帰ってきた野川アナ操作の車両
一周して駅のホームへ帰ってきた野川アナ操作の車両

野川アナ:
ああ!ちょっとホームからはみ出すかな。となりの車両に並ぶ感じで…停車。これは楽しいですね

広島鉄道模型友の会・坂本工 会長:
自分で走らせるというのが楽しみの一つですよね

鉄道模型は「金を失う道」?

「広島鉄道模型友の会」が設立されたのは1980年。43年の歳月の間に会員が入れ替わりながら、今も思い思いに鉄道模型を楽しんでいる。

1993年7月の「広島鉄道模型友の会」月例会の様子
1993年7月の「広島鉄道模型友の会」月例会の様子

43年前の創設時の会員に話を聞くことができた。

(Q:創設にいたる経緯は?)
広島鉄道模型友の会・中村雅俊さん:
この鉄道ジオラマを見たらわかるように、結構、場所を取りますんでね。自分の部屋でやるっていったら、なかなか大変なんですよ。1980年に広島に鉄道模型の専門店ができまして、そこへ好きなものが集まってきました。しばらくして「こんなに集まったのなら、みんなで会を作って組み立て式にしよう」という流れになりましてね

友の会が立ち上がった当時、中村さんは社会人になったばかりでメンバーの中でも若手だった。

「広島鉄道模型友の会」創設メンバーの一人・中村雅俊さん(左)
「広島鉄道模型友の会」創設メンバーの一人・中村雅俊さん(左)

現在は仕事も定年を迎え、友の会とともに歩んだ43年を振り返って…

広島鉄道模型友の会・中村雅俊さん:
鉄道って漢字で書くと「金」を「失う」「道」って書くんですよね。確かに金を失いましたね

野川アナ:
ははははっ。これから先の鉄道ライフは?

広島鉄道模型友の会・中村雅俊さん:
自宅にはNゲージの畳一畳半くらいのを鉄道模型を引いて、ジオラマも作っていますから。部屋の中でもちょこちょこ走らせています。金を失わないように楽しみます

金を失ってもやめられない「鉄道模型」の魅力。鉄道ファンはもちろん、そうでなくても、この小さな世界を走る車両を見ているとワクワクする。鉄道模型には、限りないリアルの追求と、鉄道へのロマンが詰まっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。