火事や救急、そして災害現場などでいち早く現場に駆けつけ人命救助を行う消防士。鹿児島市消防局では523人の職員が働く中で、女性職員はわずか12人だ。
「女性だからこそできることもある」そんな思いで日々の業務に励む、23歳の女性消防士に密着した。

訓練・教室…学ぶこと多い新人消防士

右:訓練中の早川満晴さん
右:訓練中の早川満晴さん
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「残圧14!活動時間10分!面体着装!」重いもので80kgにもなるホースを必死に操り、消火活動を行う消防士。早川満晴(みつな)さん。鹿児島市消防局の23歳の女性消防士だ。

午前7時半、鹿児島市中央消防署に早川さんが出勤してきた。

記者:
来るの早いんですね!

鹿児島市消防局 消防士・早川満晴さん:
色々と準備があるので

入局2年目の新人消防士。制服に着替えると誰よりも早く車庫へ向かい、下準備を始める。道具の準備や車両点検など、いつでも出動できるよう隅々まで確認する。

午前10時。消防車に乗って出動!と思いきや、向かった先は近くの幼稚園。火災を想定した避難訓練の指導を行うためだ。

幼稚園で避難訓練の指導をする早川さん
幼稚園で避難訓練の指導をする早川さん

鹿児島市消防局 消防士・早川満晴さん:
火事が起きたら何をすればいいか。みんな「おはしも」って知ってる?

「おはしも」とは、火事で避難するときの注意事項をまとめた言葉。「押さない」「走らない」「しゃべらない」「戻らない」の頭文字をとったもの。子どもたちに防火意識を啓発することも重要な仕事の一つ。

もちろん、訓練も欠かさない。最も高いところで35mにもなるはしご車を使った救助訓練。自分で操縦し、細かく微調整しながら建物にクレーンを近づけ、現場を目指す。

高所もものともせずに操縦しているように見えたが、「はしごの近づけ方がちょっとよくない」と、先輩からの厳しいダメ出しが…。まだまだ2年目。指摘を受けて学ぶことも多くある。

将来は「救急隊員」に

その一方で、弱音を吐かず訓練に取り組む早川さんのことを、先輩たちはどう見ているのだろうか。

先輩消防士:
男だけの職場の中で、負けないぐらい声を出して動いている

先輩消防士:
消防隊には体力自慢が多いが、同じレベルの訓練をずっとしているので、根性もあるなと思う

先輩からも一目置かれる早川さん。なぜここまで頑張れるのだろうか。彼女が消防士を目指したきっかけは、離島からヘリコプターで搬送中に亡くなった、祖父の存在だった。

鹿児島市消防局 消防士・早川満晴さん:
救急隊とかドクターカーとかできる前に、大動脈破裂を起こして亡くなってしまった。今みたいに救急が発達していなかったので、処置が遅れてしまった。結構祖母も後悔じゃないけど、「今だったら(助かった)」という思いが強いみたいで、そういう人のために、救急隊になって、悲しい出来事というか手遅れになることをなくしたいと思った

救急隊員の先輩に指導してもらっている様子
救急隊員の先輩に指導してもらっている様子

今は消防隊員として配属され日々訓練を重ねているが、いつかは救急車に乗って人の命を救う救急隊員になることを目指す早川さん。日々勉強を重ねるだけでなく、空いた時間があれば自分から救急隊の先輩に指導を頼むことも。

母も女性消防団の一員として活動

まだ道半ば、そんな早川さんを意外な形で支える人もいた。母親の直美さん。実は数年前から鹿児島市の女性消防団の一員として火災予防や応急手当の普及活動を行っている。

母親の直美さん:
頑張っている姿を見ると、何かしてあげたいというより、娘の後ろに立って、一番の応援団でいたいと思いながら活動しています

家族の存在が、早川さんの思いを強くさせていた。

鹿児島市消防局 消防士・早川満晴さん:
女性として安心感を与えたりすることもできるなと。私にできること、救急でもそうですし、災害。普通の方は一生に一度あるかないかの現場ですよね。そこに私たちは行くわけで、そういうときの消防官の安心感ってすごいあると思うんですよ。その1回のために私たちは日々訓練して、目標としては市民の方を一人でも多く救いたい

入局2年目、新人消防士ながらも抱く強い決意からは、頼もしさがあふれ出ていた。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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