ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、2月で1年になる。事態の収束が見通せない中、ウクライナから単身で長崎に避難した学生・ダニロバ エリザベータさんは、母国を心配しつつ、日本で夢に向かって歩んでいる。

家族残し単身で日本へ

2022年2月24日に始まった、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は今も続いている。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
ロシアのドローンが家の近くに落ちた。母親は見てはないが、すごく激しい音がした。まだ不安な毎日。それが聞こえている間は安全を感じることができない

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ウクライナの首都・キーウ出身で18歳のダニロバ エリザベータさん(2023年1月取材当時)は、2022年9月、両親と弟1人を残し単身で日本へ。長崎・佐世保市の長崎国際大学に入学した。

茶道に空手…日本の文化学ぶ

日本の文化や歴史、マンガに興味があり、ウクライナで1年近く日本語を勉強してきたエリザベータさん。「もっと日本の文化に触れ合いたい」と、大学では日本文学の講義のほか、「茶道」も学んでいる。すっかり正座にも慣れたようだ。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
ウクライナでは座らない、日本で初めて。痛くない、痛くない

長崎国際大学は、ウクライナの学生に学業や研究を続けてもらおうと、これまでにエリザベータさんを含む4人を受け入れている。入学料・授業料の免除のほか、学生寮の提供や生活費など、卒業するまでしっかりサポートする。
4人は2022年12月、大学の系列である九州文化学園高校の空手部に入部。この日、初めて袖を通す特注の空手着の胸にはウクライナ国旗が刺しゅうされていた。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
緊張して言葉もない。日本文化に触れられて、すごく楽しい

勉強だけでなく、スポーツでも日本の文化に触れてもらいたい。ウクライナ人学生に慣れない生活でのストレスを発散してもらいたいと、学校側が提案した。

ウクライナ人学生・チャイカ マクシムさん:
声を出すということに空手のスピリットを感じた

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
ウクライナでは縛るとか、ひもで結ぶとかはない。私は日本の文化と近づきたかったし、日本の文化に興味があったので、またひとつ日本の文化に近づくことができたのはうれしいこと

帯の結び方を教わるダニロバ エリザベータさん
帯の結び方を教わるダニロバ エリザベータさん

九州文化学園高校 空手道部・中村美晴主将:
楽しそうに練習をしていたので、もっとたくさん一緒にしたいと思った。日本のひとつの武道なのでぜひ広めてほしい

大学の学園祭では、ウクライナ人学生たちは母国の味を味わってもらいたいと、ウクライナのピロシキを販売した。

来日から約5カ月がたち、少しずつ増えてきた日本人の友達が彼らの「心の支え」だ。

長崎国際大学での友達:
こうやって友達になれることもそうだし、日本にきてくれるということもうれしい。彼女自身は大変な思いもしているかもしれないし、自分たちは理解して関わっているが、友達になれるのはいいことだと思う。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
私にとってベストフレンド。いつも郵便局とか連れて行ってくれたりして支えてくれている。日本の文化もシェアしてくれたり、私の支えになっている

募る母国への思い…

その一方で、日本での生活が充実するほど、ウクライナに残った家族や友人への思いは増すという。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
家族もすごく大切。寂しいという気持ちはもちろんある。日本にいるが気持ちは常にウクライナにいるということで、私自身は幸せだけど気軽に喜べない状態にあるというのは確か。この1年、終わりのない戦争、私自身は早く終わってほしいといつも願っている。罪のない住宅を攻撃するということは、ロシアはテロリストにしか見えない

ウクライナでは、日本の正月とクリスマスにあたる「新年祭」は家族や友人らと盛大にお祝いをする。しかし2023年の新年祭は、避難しているウクライナ人の多くは大切な人とお祝いすることはかなわなかった。そうした中、彼女が目指している夢がある。

ウクライナ人学生・ダニロバ エリザベータさん:
ウクライナでするか日本でするかわからないが、最終的な夢は子どもたちに教える教育者になりたい。なぜ戦争をして人を殺しあわないといけないのか、世界平和を願っている。

一刻も早い事態の収束を願いながら、エリザベータさんは母国から遠く離れた日本で前を向いている。

(テレビ長崎)

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