小学生が「寄生虫」について研究してまとめた図鑑が、コンクールで最優秀賞を受賞した。
受賞したのは小学2年生の川島旺典くん(8歳)で、釣った魚やスーパーなどで購入した魚から寄生虫を見つけ、種類や大きさ、特徴などをまとめたという。
特に、サヨリに寄生する“サヨリヤドリムシ”に注目し、「寄生する方法や寄生せずに何日生きるのか」「どんな味がするのか」などの観察・研究を行い、寄生虫について全15ページの図鑑にした。
タイトルは「きせい虫といっしょ~ぼくのきせい虫図かん~」。

小学生と寄生虫という組み合わせにも驚くが、研究方法も大人顔負けで、この図鑑は、「第41回『海とさかな』自由研究・作品コンクール」(協賛:株式会社ニッスイ)で、研究部門の最優秀賞の1つである農林水産大臣賞を受賞した。
図鑑の内容を紹介…掘り下げ方がすごい!
研究するきっかけは、ある日、旺典くんが父親と行った魚釣りで捕まえたイワシを家でさばいたところ、「イワシノコバン」という寄生虫を見つけて、その時に驚きとともに「もっと寄生虫のことが知りたい」と思ったことだという。
具体的にはどんな研究だったのか、気になる図鑑の内容を紹介していく。
まず「どのような寄生虫がいるのか?」。自分で釣ったり、スーパーで買ったりした魚から寄生虫を探すことから始めたという。
その際、「魚のどこの部分にいたのか?」もイラストで記載し、見つけた寄生虫の写真と一緒に大きさや特徴などを細かく記録している。

例えば、“尾の表面”で見つけたというイワシノコバンは、12mmサイズで、背中に黒い線があり、両サイドにとがったものがたくさんあるのが特長。釣ったイワシから見つけたと記載されている。
今回の図鑑では、旺典くんの見つけた寄生虫7匹を紹介している。

そして旺典くんは寄生虫を集めていくうちに、さらにいくつかの疑問がわいたのだそう。
そこで、1番見つけやすく、捕まえやすかったというサヨリに寄生する「サヨリヤドリムシ」について、観察・研究を深めていくことにした。

「泳ぎ方」をはじめ、「寄生する方法」や「寄生せずに何日生きるのか」を、実際に水槽に入れて観察。さらには「どんな魚に寄生するのか」「寄生した魚が死んだらどうなるのか」も試した。

例えば「どんな魚に寄生するのか」では、サヨリヤドリムシはサヨリから見つけたため、ボラ、イワシ、サバなどのサヨリ以外の魚で試した。どんな魚にも寄生すると考えていたが、結果はどれにも寄生せず、くっつくこともなかったという。

魚以外にも、枝や手のひらなどに寄生するのか試したが、くっついても寄生しない結果となっていた。

「どんな味なのか?」が気になり実食も!
旺典くんの飽くなき探究心はとどまるところを知らない。
ついに「どんな味なのか」が気になり、寄生虫を食べてみることにしたのだ。今まで捕まえた米粒のように小さな寄生虫たちに、少し塩をかけて素揚げにしたという。
なお食べた結果、「寄生している魚の味がするに違いない」と思っていたそうだが、魚の味はせずにサナギの味がして、豆を食べている食感だったそう。素揚げにした1匹を箸でつまんでいる旺典くんは、どこか少し誇らしな表情を浮かべているように見える。

そして図鑑の最後のページには、今回の研究でさらに寄生虫が好きになったこと、そして、これからも研究を続けて、もっとみんなに知ってもらいたいと締めくくっていた。
旺典くんの観察の仕方やテーマ設定の発想力はとても小学2年生とは思えない。図鑑は写真やイラストがたくさんあり、寄生虫を全く知らない人でも、最後まで楽しく読めそうだ。
母「寄生虫がいた時はものすごく喜んでいて…」
しかし、寄生虫と聞くと少しマイナスなイメージを持つ人もいることだろう。旺典くんが研究を始めた時、どのように思ったのか?まずは母親に話を聞いてみた。
ーー旺典くんはどのような子ども?
ものすごく負けず嫌いで、どんな事でも1番でないと気が済まないタイプです。すごろくやカルタなど、ささいな遊びでも負け始めるとギャーギャー大騒ぎします。

ーー「寄生虫を集めて調べる」と息子さんが決めた際、どのように思ったの?
普段からいろいろな物を集めるのが好きですし、捕まえた虫等を持って帰ってきて、育ててみたり集めたりもしているので、今回も「そうなんだ、頑張れ」という感じでした。

ーー研究をしている様子はどうだった?
魚を観察したりさばいたりしている時はとにかく楽しそうでした。寄生虫がいた時はものすごく喜んでいて、見つからない時はとてもがっかりしていました。そういった様子を見ていて、夢中になれることがあるのは良い事だなと思っていました。

ーー図鑑は農林水産大臣賞を受賞したが、それに対してはどう?
こんなに大きな賞を頂けるとは思っていなかったので驚きましたが、これから息子がまた何かに挑戦する際の自信になってくれればと思っています。
本とかでも見たことない生き物に驚き
旺典くんは普段から、いろいろな物を収集していたそう。今回、寄生虫を集め研究し始めたのも、お母さんにとってはいつもと変わらないことだったようだ。そんな旺典くん本人にも、なぜ寄生虫に魅せられたのか話を聞いた。
ーー完成までにはどれくらいかかった?
寄生虫を集めたり、調べたりするのは2021年の9月からはじめました。図かんにまとめるのは、夏休みが終わってからもやって2か月ぐらいかかりました。

ーー研究で大変だったこと、楽しかったことを教えて。
魚が釣れても寄生虫がいなかったりするので集めるのが大変でした。寄生虫がいるかいないか魚を観察する事が楽しかったです。
ーー研究の中で特に驚いたことは何?
ぼくがはじめにみつけた寄生虫のイワシノコバンが出てきた時です。今までに本とかでも見たことのないはじめて見る生き物だったからすごく驚きました。

ーー図鑑が完成したときの気持ちは?
やったー!って思いました。
ーーこだわった部分はある?
みんなに見てもらいたいなと思って、字をていねいに書くように頑張りました。

寄生虫の魅力は「形もいろいろで個性豊かなところ」
ーー農林水産大臣賞を受賞したことを、どう感じているの?
何なんだろうその賞、と思ったけどみんながすごいって言ってくれるし、みんながぼくの図かんを見てくれるから嬉しいです。

ーー寄生虫の魅力を教えて。
いろいろなところに寄生していたり、形もいろいろで個性豊かなところです。
ーーこれからはどんなことを調べていきたい?
寄生虫はまだまだふしぎなところがいっぱいなので、これからももっともっと寄生虫のことを調べていきたいです。

今回の研究で両親は、目的の魚が釣れる場所を探して何度も訪れたり、食べたいと言われて揚げてみたりと、寄生虫を調べるために大変なこともあったという。
それでも「思いもよらない息子の発想や探究心は大事にしていきたい」と、これからも出来る範囲で研究を手助けをしていきたいと話していた。
旺典くんには、「どうしてだろう?どんな味だろう?」といった素朴な探究心をこれからも大事にしていってほしいし、将来が楽しみだ。