キノコや芋など様々な具材と一緒に炊いたご飯は、地域によって、「炊きこみごはん」「五目ごはん」「混ぜごはん」など、様々な呼び方がされている。各地を調べみると驚くようなネーミングや、ユニークな食材を使ったメニューがあった。

「炊き込みごはん」「五目ごはん」「混ぜごはん」… バラバラなのはナゼ?

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具材がたっぷり入ったご飯を何と呼んでいるのか、まずは名古屋で街の人に聞いた。

3人組の若い女性:
炊き込みごはん

若い男性:
炊き込みごはん

年配の女性:
炊き込みごはん

幅広い年代で「炊き込みごはん」との答えが挙がったが…。

2人組の若い女性:
五目ごはん

若い女性:
混ぜごはん

中年の女性A:
母親が作ってくれた“混ぜごはん”に似てる

「五目ごはん派」や「混ぜごはん派」も…。

中年の女性B:
かやくごはん…違います?子供の頃にかやくごはんと言っていたので

「かやくごはん」という名前も出てきた。

名古屋めし研究家のSwindさんは…。

Swindさん:
かやくごはん。昔からそうやって言ってるから…

40人に聞いた結果は、「炊き込みごはん」派が最も多かったが、意見は分かれた。

同じ県内でなぜこれだけ呼び名が違うのかSwindさんに尋ねたがわからないという。次は他県出身の人を中心に調査を進めた。

静岡県出身の女性:
五目ごはん

神奈川県出身の男性:
混ぜごはんかなと思います

愛知県と岡山県出身という3人の男性は…。

愛知県出身の男性A:
炊き込みごはん

岡山県出身の男性:
五目ごはん

愛知県出身の男性B:
混ぜごはん

全員バラバラだった。

長野県出身の男性:
味ごはん

初めて「味ごはん」という呼び方をする人もいた。

長野県出身の男性:
家で両親が作るのは味ごはんとかかなと

炊き込みごはんという呼び名も使うそうだが、家で食べるものは「味ごはん」と呼んでいるという。

名古屋にある京都のアンテナショップには、呼び名を使い分けている人もいた。

京都のアンテナショップの店員:
単品で成り立っているのが「炊き込みごはん」「五目ごはん」、なんかのセットでちょこんとあるのが「かやくごはん」

様々な人に話を聞いたが、例外はありつつも東海地方以外でも「炊き込みごはん」「五目ごはん」「まぜごはん」の3つがほとんど。

地域差はあまり感じられない結果になった。

さまざまな「共通語」がある一方で方言も 沖縄では全く違う呼び方も

これを共通語や方言といった分け方ができるのか。方言学の専門家、奈良大学の岸江信介教授に聞いた。

奈良大学の岸江信介教授:
辞書でこのあたりを調べてみると、いろいろな言い方がすべて出てくるんですね。方言というような認識ではなくて、いずれも共通語という形でそういう地位にあると

岸江教授によれば、「炊き込みごはん」「五目ごはん」「混ぜごはん」はどれも方言ではなく、全国的に通じる呼び名として認識されているという。

この3つのうち、数種類の具材という意味の「五目」からきている「五目ごはん」が最初に誕生し、その後、それに似た「炊き込みごはん」や「混ぜごはん」という呼び名が広まったのではないか、ということだった。

長野出身の男性が使っていた「味ごはん」については…。

岸江信介教授:
味ごはんなんていうのはよく出てきましたね、方言で。三重や岐阜でも言わないことはないですね。東海地方の言葉ですね、味ごはんは

「味ごはん」は東海地方周辺の方言、「かやくごはん」は、もともとは関西の方言ではないかというのが岸江教授の話だ。その他、奈良では「いろごはん」、島根では「しょけめし」などと呼ぶ地域もあるそうだ。沖縄では、これらの呼び名とは全く違うネーミングだという。

沖縄のアンテナショップで、沖縄出身の人に呼び方を聞いてみた。

沖縄県出身の女性:
ジューシーです

リポーター:
五目ごはんとか言いませんか?

沖縄県出身の女性:
作ったことないですね。ジューシーなら作ったことあります

カタカナで「ジューシー」と呼ぶという。

岸江教授によれば、語源は「ジューシーな味わいだから」ではなく、「雑炊」という言葉からきていると考えられているそうだ。

沖縄料理店の人が言うには、「ジューシー」に欠かせないのが「豚肉」だ。

沖縄そばと組み合わせて食べるのが定番だという。

東海地方の“絶滅危惧種”となってしまった炊き込みご飯も

東海地方には、他にもユニークなネーミングが存在していた。1つは岐阜県各務原市。和食店にそのメニューがあった。

和食店「いっぷく茶屋 花の木」の店員:
「きんぎょめし」と言います

名前は「金魚飯」(1375円 小鉢・みそ汁付き)。各務原の郷土料理で給食にも出るといい、注文してみた。

蓋を開けてみると、出てきたのは、具材が「金魚」になっている釜めしだった。

「いっぷく茶屋 花の木」の店員:
色鮮やかな金魚に見えるということで、にんじん炊き込みごはんなんですけど

金魚めしとは、にんじんをたっぷり入れて炊き込むごはんのことだった。

「いっぷく茶屋 花の木」の店員:
各務原ではずっと前からにんじんを作っていまして、人が集まったときとかに、にんじんごはんを炊いて振る舞ったということで

各務原のにんじんは市の特産で、火山灰を含んだ保湿性に優れた土壌で育つ。

鮮やかさと深い甘味が特徴で、このニンジンを混ぜ合せたご飯を、地元では金魚のような見た目から、金魚めしと呼ぶようになったという。20年ほど前から地元の「郷土料理」として学校給食でも提供されているそうだ。

リポーター:
めっちゃくちゃおいしいですね。味が染みていますね。にんじんが全く臭みがなくて、甘みとごはんにも染み込んでいる味が、にんじんにもしっかり染み込んでいますね。すごくにんじんの食べやすい食べ方だと思いました

2つ目は同じ岐阜県の可児市。可児市にも地元ならではのメニューがあるということで、地域の特産品が集まる道の駅で話を聞いた。

道の駅 可児ッテの駅長:
「さよりめし」という炊き込みごはんですね

「さより」と聞くと細長い魚をイメージするが、そうではなかった。

道の駅 可児ッテの駅長:
「さよりめし」とはいいますけども、サンマごはんです。(1939年に)宮内庁から選ばれたくらい由緒ある(ごはん)

「さよりめし」というサンマの炊き込みごはんだった。この地域では昔、細長い魚を細かく区別せず「さより」と呼んでいたことから、この名前になったという。

東京の深川めしなどと並んで、宮内庁から「日本五大名飯」にも選ばれた料理だった。

ところが…。

道の駅 可児ッテの駅長:
実は、今ではなかなか出しているお店が、私どもも含めてなかなかないというのが現状です

「さよりめし」は、サンマの小骨を取り除いたり、作るのにとても手間がかかるで、近年のサンマの価格高騰もあり、今では常時食べられるスポットがなくなってしまったという。

この絶滅危惧状態から救おうと登場したのが、缶詰の「さよりめし」だ。

郷土料理を残したいという思いから、岐阜県御嵩町の東濃実業高校の高校生と、岐阜市の食品メーカー「鵜舞屋(うまいや)」が一緒に開発した。

ごはんに入れて炊くだけで、手間なく「さよりめし」を味わうことができる。

商品は可児市の「道の駅 可児ッテ」や鵜舞屋のHP で、1個800円で販売されている。また1月中旬からはJR岐阜駅と岐阜羽島駅のキオスクでも販売される予定だ。

2022年10月25日放送
(東海テレビ)

東海テレビ
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