福岡市で2021年6月、高齢の両親を殺害し遺体を冷蔵庫に遺棄した罪に問われた男に対し、福岡地裁は1月6日、懲役30年の判決を言い渡した。

判決を受けたのは、福岡市西区の無職・松本淳二被告(判決時60歳)。30年以上にわたる「引きこもり生活」の末、両親を殺害した松本被告に下されたのは、懲役30年の判決だった。

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裁判長:
主文、被告人を懲役30年とする

高齢の両親を冷蔵庫に…

事件の発生は2021年6月。松本被告は、酒店だった自宅で父親の博和さん(当時88)の首を電気コードで絞めて殺害し、遺体を業務用冷蔵庫に遺棄したほか、母親の満喜枝さん(当時87)の首も絞めたうえで冷蔵庫に閉じ込め、窒息死させた罪に問われていた。

これまでの裁判で、一貫して罪を認めていた松本被告。検察側は、「事件の背景」について次のように指摘していた。

検察側:
被告人は大学中退後、30年以上は、ほぼ無職の状態を続けていた。父親からトイレの介助を初めて頼まれた際、鬱積(うっせき)したいら立ちが爆発して殺害に至った。父親の殺害を目撃した母親についても口封じのため殺害した。「介護疲れ」と呼べるものではなく同情すべき点はない

一方の弁護側は、「被告人は孤独を選ぶ『人格障害』があり、被告人の行動と障害には関連性がある」(冒頭陳述より)と主張。

被告人質問では、孤独に生きてきたとされる松本被告の35年にわたる引きこもり生活の実態が語られた。

弁護側:
月々の小遣いは、いくら?

松本淳二被告:
もともと3万円。最近は1万円くらい

弁護側:
35年間ずっとその生活?

松本淳二被告:
ほぼ、そんな感じ

弁護側:
友人と出かけることは?

松本淳二被告:
ない

弁護側:
35年間、一度も?

松本淳二被告:
ない

弁護側:
仲良い友達は?

松本淳二被告:
いない

弁護側:
35年間、父親との会話は、ほとんどない?

松本淳二被告:
会話と呼べるようなものはなかった

両親殺害…量刑が争点に

身勝手な犯行と断罪して無期懲役を求める検察に対し、障害などを理由に23年程度の懲役刑が相当と主張してきた弁護側。量刑で対立し、注目を集めた判決公判で福岡地裁は…。

鈴嶋晋一裁判長:
ためらうことなく、力一杯コードで首を絞め続けていて、強固な殺意に基づき冷酷な殺害を遂げ、犯行態様は相当悪質。父親を殺害した勢いのまま母親まで手をかけたことは、理不尽というほかない

また、弁護側が主張していた「障害」については、「犯行とは直接関係なく、刑事責任は左右されない」と主張を退け、松本被告に有期刑の最長である懲役30年の判決を言い渡した。

鈴嶋晋一裁判長:
30年の懲役は長く、考える時間がいっぱいありますよね。お父さんとお母さんがどういった思いで育てたか、あなたと暮らしてきたか、考えてもらいたい。嫌なことから目を背けずに、逃げ回るばかりでいいのか、よく考えるようにしてください

裁判長の説諭に、松本被告は最後まで無表情のまま耳を傾けていた。
控訴の意向について弁護側は、「松本被告自身の判断に委ねたい」としている。(1月10日現在)

(テレビ西日本)

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