石川県の能登半島にある、輪島の漁師町に伝わる漁師鍋。その名も「トコトコ鍋」。サバが主役のすき焼き風の鍋だ。一体どんな鍋なのか、取材した。

輪島にしかないトコトコ鍋

田中孝一さん:
元々は漁師さんが船の上でいろんな魚を鍋に入れて炊いたものが事の始まり。サバがそれだけ身近にあったんじゃないかなと思います。

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こう話すのは、輪島市の民宿「お宿 たなか」の2代目田中孝一さん。

お宿 たなかは、2016年と2021年の2回、ミシュランガイドに2つ星の宿として紹介されたこともある人気の宿だ。

竹内章アナウンサー:
こちらのお宿、本当にモダンな素敵な雰囲気ですよね。

田中さん:
玄関に入って来て暖簾をくぐった時に「あっ!なんか輪島の雰囲気ってこんなのかな」って感じ取ってくれるような宿づくりを考えて建てたんですよ。

田中さん:
板などは拭き漆という技法で仕上げています。夏場は湿気を出してくれますし、反対に冬は湿気を吸い取ってくれるんですよ。

竹内アナ:
昔からの知恵を今、まさにここに再現されているというか残してらっしゃるんですね。

竹内アナ:
旅館とか民宿というと「食」を楽しみにされている部分だと思うんですが、”トコトコ鍋”というのはそもそもどういう鍋なんですか?

田中さん:
昔はサバスキっていう名前だったんです。サバをすき焼き風の甘いタレで食べたというのが、それが少し時間が経ってトコトコ鍋という名前に変わったようです。

輪島市観光協会や宿泊業協同組合などが、冬場の名物になるものを探し、サバスキをトコトコ鍋という形で始めたそうだ。

竹内アナ:
立派なサバですね。
田中さん:
きょう捕れたばかりのサバです。尾の身もこれだけ太いので脂が乗っていますね。

竹内アナ:
冬場になるとサバは丸々と太ってくる?
田中さん:
サバも寒さに弱いんじゃないですか?私みたいなもんですわね。

田中さん:
キレイなサバでしょう?ほんのりと脂も乗っているのでサバスキ(トコトコ鍋)には丁度いい。

サバの特性から輪島だけの鍋に

鮮度が良く脂の乗ったサバが出回る輪島市ならではのトコトコ鍋だが、ある理由から輪島市以外に広まることは無かったと言う。

田中さん:
サバを言葉通り”さば”いていきますけれども…
竹内アナ:
良いですか?見せていただいて。
田中さん:
そこ、ツッコまないんですね(笑)

竹内アナ:
サバというのは足がはやい(傷みやすい)?
田中さん:
傷みがはやい。
竹内アナ:
サバスキ(トコトコ鍋)というのが広く伝わっていかなかったということですよね?
田中さん:
輪島の漁師町に根付いた貴重な食文化なんでしょうね。

主役のサバを引き立てるのが、この野菜たち。サトイモ、シイタケ、ダイコンなど、田中さんは自家栽培で育てたものをふんだんに使う。

そこにサバを入れ、火が通ればトコトコ鍋の完成だ。

脂が乗ったサバならではの味と鍋への思い

竹内アナ:
やっぱり香りも良いですね。
田中さん:
隠し味ににんにくを使っています。

竹内アナ:
いい感じでダシが染みていて美味しいですね。サバの美味しさが分かるお料理ですね。

田中さん:
ホクホクとした食感というか。脂が無いと身が硬くなっちゃう。

竹内アナ:
輪島の魅力が分かるお宿だなと。その1つがトコトコ鍋だなと。

田中さん:
能登には本当に知られていない価値のある歴史のあるものっていっぱいあるんですよね。これぞ”隠れ能登”みたいな形のものを伝えていきたい。

能登の冬の味覚と言えば、ズワイガニや寒ブリだが、身も心も温まる、漁師鍋「トコトコ鍋」も是非、味わってみてほしい。

(石川テレビ)

石川テレビ
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