島根県内でも数少ない「だるま職人」の男性が、開運アイテムとして人気セレクトショップとコラボ。オリジナルのだるまも製作している。ユニークな“孤高”の職人が作り上げる、島根ならではのだるまに注目した。

「ビームス」とコラボした“クセ強め”なだるま

オレンジ、赤、ピンクが印象的な、カラフルなまだら模様。ちょっと“クセが強そうな”だるまだ。

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このだるまは、出雲市・出雲大社前の神門通りに2022年12月にオープンした「ビームス ジャパン 出雲」で販売されている。
「ビームス ジャパン」は、若者を中心に人気のセレクトショップ「ビームス」が、日本各地の名品を国内外に発信しようと、2016年から展開している。

出雲店は、新宿、渋谷、京都に続いて国内4店目となり、中国・四国では初めての出店だ。
店頭には、「ビームス」のシンボルカラー、オレンジのだるまに、スサノオノミコト、因幡の白うさぎなど神話をモチーフにしたものも並ぶ。出雲だけの限定商品だ。

購入客:
こういうサイズのだるまは見たことなくて、かわいいなと思いました。家に飾ろうと思って、家族4人の名前を入れてもらった

だるまを製作したのは、松江市の堀江努さん(37)。島根県内では数少ない、現役の「だるま職人」だ。

だるま職人・堀江努さん:
ビームスはオレンジがメインカラーで、オレンジと赤とピンク2種類が入っている。縁結びのご利益カラーとして新しく作った

松江市の伝統工芸品「出雲民芸紙」を使用

堀江さんが10年前から手がけているのは「縁結び」をテーマにしただるま。しめ縄を巻いたり、リボンをあしらったりと、ちょっと“クセのある”だるまだ。

一般的には、眉毛が鶴、ひげには亀が描かれるが、堀江さんのだるまは、まゆは龍、ひげには勾玉(まがたま)が描かれ、神話の国・出雲にちなんだデザインだ。

そして2020年に販売を始めたのが、疫病退散の妖怪「アマビエ」。今も月に100個ほどは注文が入るほどの人気だという。

疫病退散の妖怪「アマビエ」をモチーフにしただるまも
疫病退散の妖怪「アマビエ」をモチーフにしただるまも

堀江さんの工房は、松江市にある自宅の6畳の和室だ。

だるま職人・堀江努さん:
ひとつ貼り合わせるのに7分くらい。次に貼る和紙がポンポンと決まると早くできる

記者:
きょうの調子は?

だるま職人・堀江努さん:
きょう、絶好調です

だるまの作り方は、ちょっと変わっている。特徴的なまだら模様は、松江市の伝統工芸品「出雲民芸紙」を小さくちぎり、ひとつひとつ貼り合わせ、描いている。

「出雲民芸紙」をひとつひとつ貼り合わせていく
「出雲民芸紙」をひとつひとつ貼り合わせていく

だるま職人・堀江努さん:
刃物でやってしまうと継ぎ目がどうしても出てしまうので、手でちぎることにこだわって、一つ一つ作るのは時間が結構かかる

絵の具で色をつけるのに比べ、数倍の手間がかかるが、それでも…。

だるま職人・堀江努さん:
地元のものを使いたいという気持ちがあったのと、だるまを作るというより、だるまを通して願いがかなったり、また島根に来てもらったり、島根を思い出してもらったり、「体験」を作っていると思っている

だるまを通じて感じられる“出雲”

日本一のだるまの産地、群馬・高崎市で学生時代を過ごし、サラリーマン生活を送った堀江さん。そこで、だるま職人の技に魅了され、自ら職人になった。

そして「島根らしい」だるまをと、10年にわたって作り続けてきたその姿勢が、世界市場を見据えたセレクトショップの目にとまった。

ビームス ジャパン 出雲・川島健店長:
(出雲が)縁結び、出雲大社が中心にある地域だと、このだるまを通じて感じることができるので、可能性を感じる

人と人との縁を取り持つよう願いを込めて作り続けた堀江さんのだるまが、自身にも良い縁を結んだ。

購入客:
すごいね

購入客:
あと何年(生きている)か、わからんからね

だるま職人・堀江努さん:
長生きして、もう一回買い替えるくらいで

購入客:
もう一回、買いに来ないとね(笑)

コロナ禍で人との距離を保つことが当たり前になっても、大切な人との縁は近いままで。そんな願いを込めながら、堀江さんはだるまと向き合い続ける。

だるま職人・堀江努さん:
だるま職人は10年ではまだ短い方なので、20年、30年と頑張って作っていきたい。手に取ってくれたお客さんの心の支えやきっかけになればと思う

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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