3年半に及ぶ令和の大修復を18日に終えた広島 宮島・厳島神社の大鳥居。
新たな装いで新年の初詣客を迎える海上の大鳥居の修復をテレビ新広島のカメラがつぶさに追ってきた。コロナ禍をまたいで修復に携わった人々の記録。

「竣工清祓式」が厳かに 

山肌が雪で白く色づいた広島県廿日市市。

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宮島では真新しい“朱”で塗られたシンボルの前で無事完成したことに感謝し末永い繁栄を祈る儀式、「竣工清祓式」が行われた。

修復工事の設計・管理を担当 原島 誠 技師:
3年6カ月やっと終わりまして、やっと皆さんに見ていただくことになりまして非常に感慨深い
Q:職人みんなの思いが詰まっている?
技術だけではなく、大鳥居をやるという気持ちでやってもらっているところがあり、能力以上のものを発揮していただいたと思っている

18日も多くの観光客で賑わいをみせた宮島の商店街。
店の軒先には大鳥居完成を祝う提灯がさげられた。

店の人:
今日は神社の鳥居のお祓いがあって、どちらか一つあげる、お餅か杓子かどちらか…

記念の紅白餅や大鳥居の焼き印がついた杓子が配られた。

廿日市市民:
きょうは子供たちが鳥居を見たいというので一緒に来た
Q:大鳥居どうだった?
きれい

横浜から来た人:
修学旅行以来だったのでとてもきれいでした。ずっと見られなかったので良かった

商店街の店の人:
感慨無量、感無量。厄払いになってくれたらいいなと思うね。あれでコロナもみな吹っ飛んでくれたらいい

シロアリなど想定外の被害が見つかる

およそ3年6か月に及んだ大規模修復工事が始まったのはコロナ禍が始まる前の2019年6月。

長い間、取材してきた記者は…。
修復工事を取材してきた胡子美佳記者:
工事が始まる前に調査は行われていたが、始まってみると想定以上のシロアリによる深刻な被害が発覚しました。いくつもの大きな壁を乗り越えながら、ようやく完成した大鳥居ですが、その裏では職人たちの技だけでなく、熱意でも成し遂げた修復だと思います

工事関係者の誰もが驚き、どのように直せばよいのか悩んだという主柱の中に空いた空洞。男性が2人も入れるほどのものもあった。

そうした困難に立ち向かいながら、潮の満ち引きがあって一日の作業時間が限られる現場で奮闘した職人たち。

伝統の技と最新技術を駆使

胡子記者:
漆を塗るシーンではとても繊細な作業が求められていて、夏場だが扉も窓も締め切って作業していた。

漆塗りの作業
漆塗りの作業

胡子記者:
一番印象的だったのは宮大工の方が、補修というのは外から見た人がわからないようにするのが職人の腕だと。

胡子記者:
元々の鳥居が戻ってきたと思ってもらえたら嬉しいと言っていて、残せるものは残して、そこに足りないものは最新の技術で補って後世に残していくということ。今回の修復での大きな特徴の1つが耐震補強です。スーパーステンレスや炭素繊維という新しい技術を用いて行われました

この大鳥居、今のものは明治8年(1875年)建立で9代目とのこと。柱が海に埋められているのではなく、単に置いてあるだけということも驚きだ。

また、重しとして、屋根の下の部分に「鎮石(しずめいし)」という石が置かれていて、この石を4トン取り出し、2021年8月に洗い清める行事が行われた。

洗い清められる「鎮石(しずめいし)」
洗い清められる「鎮石(しずめいし)」

また今回の修復では、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根の葺き替えが宮大工の手によって、竹の釘を使って行われた。

屋根の檜皮の葺き替え作業
屋根の檜皮の葺き替え作業

重さ約150キロの扁額もきれいに修復、磨き上げられた。

末永く立ち続けるために施された様々な工夫は塗り替えられた色にも。
胡子記者:
大鳥居はこれまでよりも赤みが強くなっている。紫外線対策でこの色が採用されたということなんです

紫外線対策でこれまでより鮮やかな朱色に
紫外線対策でこれまでより鮮やかな朱色に

一方、今回、大鳥居の歴史についても新たな事実が発覚した。
胡子記者:
今回の修復工事を機に厳島神社の技師が文献を調査したところ、これまで8代目と言われていた大鳥居が実は9代目だと分かった

のべ1万人が関わった“令和の大修復”を終え、大鳥居は文字通り新たな心持で初詣客を迎える。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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