岩手・釜石市では12月11日に年末恒例の「第九」の演奏会が行われた。東日本大震災の年も開催されたが、新型コロナウイルスの影響で2020年、2021年と中止に。そして2022年、地域に希望を届けようと、復活した歌声が会場に響き渡った。
この記事の画像(12枚)11日に行われた「かまいしの第九」と呼ばれる演奏会。市内のコーラスグループなどがオーケストラの演奏に合わせ、ベートーヴェンの交響曲第9番「歓喜の歌」を合唱する師走の恒例行事。
1978年から毎年行われてきたが、2020年と2021年は新型コロナウイルスの影響で中止となり、3年ぶりの開催。この日を迎えるには、さまざまな苦労があった。
「歌える喜び」を胸に練習に励む
演奏会に向けた練習は7月から始まった。
今回の演奏会は新型コロナウイルスの感染を防ぐため、例年であれば120人以上の規模となるコーラス隊を縮小し、参加者を県民に限定し約70人で練習を重ねてきた。
マスクを着けながらの練習や、一人一人の責任が重くなったことなど、いつもより苦労が増えたが、参加者は歌える喜びを感じていた。
合唱団のメンバー:
早く歌いたいと思った。(中止した)2年間はきつかった
参加者の中で最年少、11歳の石田啓将くん、そして父の昌玄さん(48)は2022年で4回目の参加。「かまいしの第九」の復活を待ちわびていた。
石田啓将くん:
音の強弱に気を付けて丁寧に歌いたい
父・石田昌玄さん:
コロナ禍でみんながバラバラになったが、また一致団結してひとつになれるような演奏ができればいい
東日本大震災やコロナを乗り越え“歌で希望を”
40年以上市民に愛されてきた「かまいしの第九」。東日本大震災が起こった2011年も、被災した市民文化会館から高校の体育館に会場を変更して開催し、復興への希望が力強い歌声となって街に響いた。
実行委員長の川向修一さん(70)が不安を抱えながらも開催を決断したのは、釜石にもう一度「喜びの歌」を響かせ希望を与えるためだった。
川向修一実行委員長:
コロナまではずっと続いてきた。震災の年も続けたのは地域に対する応援歌になってきたことを実感。「コロナにも負けなかった」と歌声で表現したい
迎えた11日、待ちに待った演奏会を楽しもうと会場には約350人が詰めかけた。
控室には落ち着かない様子の石田くんの姿があった。
石田啓将くん:
久しぶりだから緊張してると思う
お父さんのちょうネクタイを確認して準備もばっちり。
そして、クライマックスとなる第4楽章。
みんなで歌うことができる喜びが込められた「歓喜の歌」が会場に響き渡り、観客からは大きな拍手が送られた。
観客:
感動した。夢中になって聴いた。来年もぜひ聴かせてほしい
観客:
震災や、今は新型コロナウイルスで大変な状況が続いていたと思うが、暗いご時世を明るくしようというのがすてきで、感無量という感じ
石田啓将くん:
気持ちよく歌えたので良かった。これからうまくなって丁寧に歌いたいし、今度は弟とも一緒に出たい
これからも続けていく つなげていくことの大切さ
一度は途切れてしまった「かまいしの第九」。
無事に演奏会を終えて出演者をねぎらう川向さんも、安堵したような表情だ。
川向修一実行委員長:
少ないメンバーになった分、一人一人の思いがふくらんで、それが客席に届いたのではないか。「かまいしの第九」を続けていく、つなげていく大切さを実感している
東日本大震災や新型コロナウイルスなど、いくつもの困難を乗り越え、人々に希望を与えてきた「かまいしの第九」。地域の人たちをつなぎながら、再び「歩み」を始めた。
(岩手めんこいテレビ)