岸田政権が掲げる「貯蓄から投資へ」。
資産形成に投資を活用するというものだが、注意しなければならないことも多い。その一つが怪しい投資話。詐欺に悪用されることもあるのだ。

国民生活センターに投資詐欺の相談状況を聞くと、昔は未公開株式での相談が多かったが、近年はFXや暗号資産による相談が目立つという。

そしてそのターゲットとなりやすいのが投資に対する知識の少ない若者。成年年齢の18歳引き下げもあり、特に注意してほしいという。
担当者は「(商品の)仕組みが理解しにくく、詐欺の手口として使い勝手がいいものになっている」と警鐘を鳴らす。

怪しい投資話で…若者が詐欺被害に

実際に寄せられた、被害相談の一例がこちらだ。

・FXの被害相談例 20代男性
マッチングアプリで知り合った女性に、海外のFXウェブサイトを勧められて投資した。サイト上では日本円で表示額が増えていたが、出金したいと伝えると「できない」と言われた。

お金を持ち逃げされたケースも(画像はイメージ)
お金を持ち逃げされたケースも(画像はイメージ)
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・暗号資産の被害相談例 20代男性
幼馴染に暗号資産を勧められ、Aという人物を紹介された。「借金しても返せる」などと言われたので借金して投資したところ、Aと連絡がとれなくなり、お金を持ち逃げされた。

・株式の被害相談例 10代男性
SNSで知り合った女性に株を誘われ、指定されたウェブサイトにお金を振り込んだ。資産が増えたので出金しようと思ったら「早急に追加でお金を振り込む必要がある」などと言われた。

若者は成功体験を疑わずに憧れるという(画像はイメージ)
若者は成功体験を疑わずに憧れるという(画像はイメージ)

国民生活センターの担当者は、若者は勧誘側の成功体験(うそ)に憧れを抱いてしまうといい、特に「儲かる」「成功した」などの言葉をうのみにしていると指摘。「取引の内容やリスクを十分に理解できなければ、契約しないでほしい」としている。

背景にある“お金に苦労する社会”

それでは、若者はどんな点に注意すべきなのだろうか。投資トラブルの相談対応もする、CFP(FPの上級資格)・FP1級の藤井亜也さんに聞いた。

藤井亜也さん(提供:藤井さん)
藤井亜也さん(提供:藤井さん)

――若者が遭遇しやすい、投資トラブルの傾向は?

SNSの情報、人間関係のつながりが被害の入り口になっている印象です。SNSは自由に情報を発信できるので、だます側は肩書きや経歴などをアピールして信じやすいことを書きます。皆さん注意していると思いますが、若い方は時に肩書きだけで信じてしまう、手軽に得られる情報を信じてしまうことがあります。人間関係では人を疑う経験が少ないので、言われたことをそのまま受け止めがちです。


――若者からはどんな被害相談が寄せられている?

アルバイト先の先輩に誘われて投資セミナーに行き、数十万円の教材を買った、大学生からの相談を受けたことがあります。本人は「これでお金が増える」といった感じで、親が何を言っても聞かない、洗脳に近い状態でした。セミナーの登壇者に逮捕歴があったのでそのことを伝えると、その子はやっと詐欺集団であると気づき、ご両親と解約の手続きに行ったそうです。このほかにも、友人関係や学業にまで影響が出てしまう方もいます。

だまされる背景にはお金の悩みがある(画像はイメージ)
だまされる背景にはお金の悩みがある(画像はイメージ)

――なぜ、だまされてしまうの?

お金に苦労する社会が背景にあると思います。日本は不景気が続き、親御さんも給料が上がらない、学費の工面にも苦労しています。そうした姿を見て、お子さんは投資で儲けたいと思うのではないでしょうか。人を疑うことが少ない分、だまされてしまう気がします。

「私の紹介じゃないと買えない」などの条件付きの話は危険

――怪しい金融商品はどう見極めればいい?

一般的な金融商品は証券会社、銀行、保険会社など、その商品を取り扱う権利・免許のあるところなら、基本的にはいつでも誰でも購入できます。「ここじゃないと買えない」「私の紹介じゃないと買えない」といった、条件付きの話は信じないほうがいいです。きちんとしたところから購入した商品は、購入先が破綻しても、一定額までは損失を補償してもらえることがあります。詐欺に遭わない、損失を補償してもらえる。2重のリスク回避になります。

「絶対」などの言い切る言葉には要注意(画像はイメージ)
「絶対」などの言い切る言葉には要注意(画像はイメージ)

――詐欺が疑われる、要注意のフレーズは?

飛びつきたくなりますが「簡単に儲かる」「早くお金が増える」「絶対に儲かる」といった、言い切る言葉には要注意です。投資に絶対はありませんし、リスクのない商品はありません。

怪しい投資が疑われるフレーズ(編集部作成)
怪しい投資が疑われるフレーズ(編集部作成)

――だまされていると感じたら、周囲は何ができる?

だまされた人は先輩や友人の紹介で購入していたりもします。怪しまれる、否定されると反発してしまい、恥ずかしくて打ち明けられなくなるそうです。周囲ができることは、一人で考え込まないでほしい、契約は慎重にするものだと、日ごろから伝えることだと思います。

正しい商品を探すためのポイントは?

――正しい投資のための商品はどう探せばいいの?

証券会社、銀行、保険会社などで商品のパンフレットをもらい、ゆっくりと比較してみるのをお勧めします。ネット証券の公式サイトでも見ることができます。商品の見方など、聞きたいことも多いと思いますので、アフターフォローの有無もポイントだと思います。


――SNSなどの評価を参考に探してもいい?

参考にすることはあっていいと思いますが、説明や仕組みを理解できるか、納得いくかを考えてほしいですね。例えば、投資系のインフルエンサーが儲かっていると聞くと憧れるかもしれませんが、「この人の言うことは絶対」となるのは注意が必要です。

焦らず、周囲にも意見を聞いてみよう(画像はイメージ)
焦らず、周囲にも意見を聞いてみよう(画像はイメージ)

――トラブルに遭遇しないための心がけを教えて。

自分だけは大丈夫と思わないことです。怪しい投資話は、第三者が聞けば怪しいと感じるので、周囲に意見を聞くことを意識してほしいです。だます側はその行動を封じ込めるトークをしたり、焦らせたりするので、そうした話には乗らない方が賢明です。


――投資に興味を持つ若者に伝えたいことは?

ここまでの内容を見て「投資は怖い」と思うかもしれません。ただ、若い方は公的年金が期待できないので、自分で作れる“私的年金”が重要になります。正しい知識、収入から無理のない範囲で行う判断基準を身につけて、投資を行ってほしいですね。


金融庁のウェブサイトでは投資の基礎知識も公開されている。詐欺にだまされないよう、これらで金融商品の仕組みなどを勉強してもいいだろう。被害が疑われた場合は、消費者ホットライン(188)などの相談窓口があることも覚えておいてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。