ウクライナ情勢で核兵器の脅威が高まる中、核兵器廃絶への道筋について内外の有識者や外交官が意見を交わす国際賢人会議の初会合が広島市で開かれた。
被爆地ヒロシマからのメッセージは伝わったのか、2日間の会議を振り返る。

英語での被爆証言 「胸に突き刺さった」

オバマ元大統領のビデオメッセージ:
私たちは子供たちのために核兵器のない世界を追求する責務がある

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2016年に現職のアメリカ大統領として初めて広島を訪れたオバマ元大統領のビデオメッセージで開幕した国際賢人会議。

初会合にはロシアを含む核兵器を持つ6か国と核兵器を持たない6か国の双方から計13人の委員が出席。

この会議は広島が地元の岸田首相が提唱したもので、学者などの有識者が中心だったこれまでの「賢人会議」に政治指導者も加えて議論のレベルアップを狙ったもの。しかし、今回、その政治指導者のオバマ氏、国連のグテーレス事務総長などは、いずれもメッセージを寄せるにとどまった。

初日には、8歳の時に被爆した八幡照子さん(85歳)が当時の惨状について英語で語り、委員は熱心に耳を傾けた。

八幡さんの被爆証言を聞くメンバー
八幡さんの被爆証言を聞くメンバー

八幡照子さん:
有識者の方の議論の中にぜひ活かしていただいて、核廃絶のための目標にしていただきたい

2日目には原爆資料館を訪れ、原爆投下前後の爆心地周辺の様子を再現したパノラマを真剣に見るなど、およそ1時間かけて見学し被爆の実相に触れた。

原爆資料館を見学した国際賢人会議メンバー
原爆資料館を見学した国際賢人会議メンバー

参加メンバーからは被爆地ヒロシマでの開催の意義を強調する声が聞かれた。

アメリカ元国務次官 ローズ・ゴッテメラー委員:
今回、英語で被爆証言を初めて聞き、胸に突き刺さった。この会議の議論や成果にも反映されると思う

ウクライナ侵攻批判にロシアが反発する場面も

2日間の会議では核軍縮を取り巻く世界情勢について率直に意見をかわしたほか、核軍縮を訴えるNGOメンバーとの意見交換の場も設けられ、核軍縮の機運を高めるためには、市民を巻き込んだ議論が欠かせないことなどを確認した。

閉会セッションで岸田首相は今後の会議での議論に期待を表明。

国際賢人会議を提唱した岸田首相:
厳しい現実を理想に近づけていくための具体的な方策につきましては、より議論を深めていただき有益な成果を達成いただきますことを期待いたします

ウクライナ情勢をめぐっては、初日にロシアによる核の威嚇を非難した岸田首相らのメッセージに対し、ロシアのメンバーが反発する場面も。

ロシア エネルギー・安全保障研究センター長 アントン・フロプコフ委員:
オーストラリアや日本の首相、ドイツの大統領らがまちがった発言をした。特にロシアがウクライナに対して核の威嚇を行っているという点だ

白石隆座長は会議を振り返り「核兵器のない世界」に近づけるための議論を深める必要があるとの考えを示した。

熊本県立大学理事長 白石隆座長:
政治的な意思の重要性ということが確認されると同時に、核リスクの低減ということで、やはり対話をもっと意識的に重視すべきだろう

アジアでは中国の脅威の増大で、日本はアメリカの核の傘に守られざるをえないのが現実だ。このような中、世界唯一の被爆国として、核軍縮について核兵器保有国と非保有国間の意見調整という難しい役割をどう果たすかが課題だ。

次回は2023年のG7広島サミットの前に開催される予定。

(テレビ新広島)

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