あるご家庭をのぞき見!1男6女の大家族、ワンオペ育児をしているエリート自衛官でもあるお母さんから、大家族をきりもりするための極意を教えてもらった。

自衛隊幹部のもう一つの顔は…7人を育てる大家族のママ

京都・桂駐屯地。記念行事に集まった、多くの親子連れのなか、人波を縫って歩く制服姿の女性がいた。前田佳代さん(42歳)。イベントなど広報活動を統括する、自衛隊員だ。明るくきびきびと働く彼女には、もう一つの顔がある。

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実は前田さん、7人の子供のお母さん。ちなみに、お父さんは単身赴任中だ。7人を実質一人で育てながら働いている。

(Q:一体どうしてそんなことが可能ですか?)
陸上自衛隊桂駐屯地 前田佳代三等陸佐:

「何とかなるかな」って思ってやっているからですかね。“適当”で。適当じゃなかったらやっていかれへんかな

テーマは”適当”?!

前田さんの1日に密着すると、毎日を幸せに送るヒントが見えてきた。

エリート自衛官ママの1日に“密着” 早朝から大忙し

明け方、自宅を訪ねると大量の洗濯物と格闘する前田さんがいた。朝、起きてきた子供たちに「ごはん食べな?と声を掛ける。

四女・葵乃(きの)ちゃん(小3)が手を伸ばしたのは、前田家の“パンカゴ”。朝食は、このカゴの中からそれぞれ自分で用意するのがルールだ。

 葵乃ちゃん、五女・智早(ちはや)ちゃん(4歳)に「ごはん食べへんの?」と声を掛ける。

三女・彩巴(いろは)ちゃん(小5)も妹たちの髪の毛を整えていた。妹の身支度は、お姉ちゃんたちがお手伝いするのがルーティーン。

母親の前田佳代さん:
誰?朝からプリンとか食べてるの!やめてよ

子供たち:
いいやん!朝にプリンは普通じゃない?

午前6時50分。前田さん、自衛隊の制服である迷彩服を着て出発だ。

(Q:荷物が多いですね?)
前田佳代さん:

これまだ全然少ないですね。おむつとか着替えとか、それぞれによって違うんですよ

朝から準備した大荷物を抱え、保育園にはこの日も一番乗りで到着した。

すると…途端に「うえ~ん」と泣き出してしまう、末っ子の六女・紡希(つむぎ)ちゃん(2歳)。前田さんがぎゅっと抱きしめると落ち着いた。

「じゃあ、お願いします」と前田さん、きびすを返して出勤。ここから“仕事”モードです。

ステップアップ諦めて、子供持つことを「選択」

徳島県で育ち、防衛大学へ進学した前田さん。過酷な訓練を乗り越え、いまでは司令業務室の室長だ。

女性の部下:
話しやすくて、とても頼りがいがあります。私も同じ子持ちなので「こういうことあるよね」と話したり。

(Q:女性の室長はよくいる?)
女性の部下:

いえ、今回(私の配属先では)初めてです

それでも、子供を持つことは大きな選択だ。同期の多くは、さらに上の階級へとステップアップする中、前田さんは家庭を優先し、選抜試験を辞退することに決めた。

前田佳代さん:
輝いている先輩・後輩・同期もたくさんいます。それでもやっぱり(子供たちは)自分が生きていく活力になっているので、子供がいるから仕事も頑張れたり、反対に子供とやり合ったから仕事もやる気がなくなったり。色々ありながらも、どうしても楽しい・かわいいが勝っちゃって、毎日やっているという感じです

お昼を迎え、職場のデスクでランチ。

前田佳代さん:
すごい適当なお弁当(笑)

おかずは、末っ子が朝食べ残したウインナー。

(Q:毎朝持ってくるんですか?)
前田佳代さん:

いやいや毎朝じゃないですよ。持ってこられない時もあるので、売店で買ったりとか

無理にルーティーンは決めない。ちなみに次女・來風(らいか)ちゃん(中1)は、自分のお弁当用に卵焼きを上手に焼いていた。自分のことは自分で対処できる子供たち。

(Q:前田さん、子育て自体に悩みはないんじゃないですか?)
前田佳代さん:

思春期の子供に対する悩みの方がもっとしんどいから。一番上の子とは、すごく衝突するんです。「仲直りしよう」ってハグすると「気持ち悪い」って言われるんですけど。怒鳴り散らしてしまった時に、なぐさめるのも自分じゃないですか。自分一人で二面性を持って、怒るのと、褒めるのと

子供たちとの向き合いは手抜き禁物、真剣だ。

保育園の迎えを終え、帰宅したのは午後7時10分。夕食の準備かと思いきや…

四女・葵乃ちゃん:
お母さん、またランニング行くん?

前田佳代さん:
行くよ

忙しくても「自分の時間」を大切に

前田さん、迷彩服のまま走り出てしまった。実は、この週2回のランニングこそ、前田さんが唯一ひとりになれる時間なのだ。

前田佳代さん:
はやりの音楽を大きい音でかけて。結構気持ちよく

どんなに忙しくても、自分の時間を大切にする。さらに休日は趣味に没頭!子供を背負い、毎週のように登山を楽しんでいるというから驚きだ。

前田佳代さん:
自分じゃ気付かないことを気付いて話してくれたり。『鳥がいる』とか。発散はすごいできてるんですよ

楽しい時間を率先して作る前田さんを、小学生の2人はいつもそばで見ている。

四女・葵乃ちゃん:
お酒飲みながらギター弾いて。それで私たちが踊ってんねん

三女・彩巴ちゃん:
せやで。歌ったり

(Q:お母さんが仕事で忙しくて寂しい?)
三女・彩巴ちゃん:

帰るのが遅くて、心配することはあります。仕事帰りに、ちーちゃんとつむちゃんを迎えに行くんですけど、その時に事件が起こって遅くなったりするかもって、ちょっと心配しちゃう…

リフレッシュから戻り、改めて夕食の準備だ。前田さん、買ってきた千切りキャベツの袋を開けて盛り付ける。

前田佳代さん:
千切りするの結構ストレスやから、買ってきて。いっぱい入っているし

できる手抜きは徹底的に!でも実は前田さん、以前はこんなに“適当”ではなかったそう。

前田佳代さん:
昔は意地でも作ったやつ全部食べてもらおうと思っていたり。きょうはお汁がないじゃないですか。お汁を絶対に作ったりしていたんですけど、ストレスになっちゃったので。夏、お汁が全然食べられていないまま腐っちゃって、それが嫌で

子供たちの自主性を育む裏ワザとは

その適当さが、子供たちの自主性を生む裏ワザだと話す。前田さんも知らない間に、真ん中の子供たち3人でごみ捨て当番を決めていたのだとか。

前田佳代さん:
1回忘れてこの部屋に5袋くらいたまったことがあるんですけど、そうなると子供たち自分たちも嫌なので、(ごみ捨てに)行きますね

いやいや、だからってそう上手くいくものでしょうか…ひとつ、取材した記者が思い当たるのは、子供たちのこの会話。

(Q:お母さんは家ではどんな人?)
四女・葵乃ちゃん:

結構きれい好きやんな

三女・彩巴ちゃん:
うん。ごみ落ちてたらすぐ「拾って」って言ったり

やっぱり、お母さんの背中を見て、日々過ごしていることが大きいのかもしれない。

前田佳代さん:
ちゃんと座って食べて

前田さん、下の子供2人に夕食を食べさせようと、奮闘していた。

前田佳代さん:
何で口から出しちゃうの?もう…汚い!あはは!

一苦労しながらも、笑い声が響く。

“働くお母さん”の極意…「適度に適当に」

前田佳代さん:
「嫌やな、嫌やな」って思ったら全部嫌になってしまうじゃないですか。なので、仕事も大変な時はわざと明るくして、大変そうにしないようにしてます。正解がないんやったら自分が思う通りにやったらいいかなと思って。一番楽な方法を取っていこうかなと思って

塾に行っていた長男も帰ってきた。一息ついた前田さん、メールが届いていたことに気が付いた。

前田佳代さん:
修学旅行中の長女から、「ごはん食べる」って夕食の写真が。楽しそうでよかったです

(Q:仲良しですね?)
前田佳代さん:
まあ何だかんだ言って

悩む時間も、それを乗り越える力も、人より少し多く培ってきた。だからこそ、働く女性の道しるべになりたいと話す。

前田佳代さん:
「困った時、いつでも頼ってください」って言ってるんですよ。「7人も8人も9人も一緒やから子供も預かるよ」って。こんなんでもやれているよっていう適当感を伝えたい

“働くお母さん”の極意は、「適度に適当に」。そう心がけようとする背中に、部下も子供たちもついて来るのかもしれない。

 (関西テレビ「報道ランナー」2022年12月6日放送)

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