CTなどの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、血管にカテーテルという細い管を通して様々な治療を行うIVR、画像下治療。金沢大学附属病院放射線科は、国内でいち早くこの治療法を取り入れ、日本のIVRの歴史を作り上げてきた。

画像見ながら血管に通した管で治療

この記事の画像(24枚)

金沢大学附属病院の扇尚弘医師は、このIVRで国内トップクラスの実績を誇る専門家だ。その扇さんに、IVRを使って治療することができる「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」について聞いた。

直径“500円玉”の太い血管 冬がピンチ

大動脈は、心臓から全身に血液を送る「体の中で最も太い血管」。

どのくらいの太さなのかと言うと…直径約2センチ~3センチ。500円玉とほぼ同じくらいだ。

もし、大動脈が破れてしまうと大量出血に結び付き、すぐに命の危険が迫る。

その原因の一つが、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)。大動脈瘤とは、血管の老化現象である動脈硬化などによって血管の壁がもろくなり、一部がコブのように膨らんでいる状態のことだ。

この病気が厄介なのは、大動脈瘤ができていてもほとんど自覚症状がないため、患者自身が気づかないうちにどんどん膨らみ、ある日突然破裂してしまうと言う。

破裂した場合の死亡率は約90%とも言われ、特に血管が収縮し、血圧が上がりやすい冬場はその危険性が上がる。

そんな大動脈瘤を見つける方法や治療法は、まず定期健診でのレントゲン検査やエコー検査。

そこで大動脈瘤が疑われた場合、CT検査やMRI検査で確実な診断をする。

手術時間は2時間程度 数日で退院も

大動脈瘤が見つかった場合、治療法としては、IVRを使った「ステントグラフト内挿術」が普及し始めている。

これは、足の付け根からカテーテルを血管内に入れ、コブのある部分までバネ付きの人工血管「ステントグラフト」を運び、膨らませることでコブへの血流を内側から塞いでしまうという治療法だ。

傷は足の付け根の3~5cmほど。手術時間は2時間程度で、手術の翌日には歩行や食事が可能。傷が小さいので体への負担が少なく、早ければ数日後に退院することも可能だと言う。

金沢大学附属病院では一年間に70~80例のステントグラフト内挿術を行い、皆さん元気になって退院しているそうだ。

 

最新治療で体への負担もずいぶん軽くなっている、しかし、大動脈瘤はほとんど自覚症状が無い。60歳以上で生活習慣病の診断を受けている人、男性、煙草を吸う人、家族で大動脈瘤の人がいると言った人は、どうか毎年の検診を欠かさないようお願いしたい。

病気の元を“ピンポイント治療”

続いて聞いたのは「IVR治療の最前線」

体中の血管を全て合わせると、約10万キロメートル。地球を2周半できるほどの長さがある。実は人間の体は、骨と筋肉を除けば、その8割が血管。IVRは、この血管を体の外から観察しながらカテーテルという管や針を目標である病気の元に正確に送り込み、ピンポイントで治療する。

この長所を生かし、最近は様々な病気への治療法が開発されている。その1つが、肝細胞癌などに対して行われる「TACE」と言われる治療だ。

これは、がん細胞に栄養を送っている肝動脈にカテーテルを進め、そこから抗がん剤を注入、さらに血管にゼラチンスポンジなどを詰めてフタをし、がん細胞を壊死させるという治療法。

「がん」が小さくなっていくのが分かる。

「凍結してがん細胞を破壊する」治療法

また腎臓がんに関しては、直径1.5mmほどの細い針を腫瘍内に挿入し、針の先端部を超低温にすることにより腫瘍を凍結してがん細胞を破壊する「凍結療法」という治療法も行っている。

金沢大学附属病院は、北陸で唯一この「凍結療法」による治療を行っていて、年間平均20例ほどの治療例がある。

TACEや凍結療法は保険が適応されるので、高額な医療費がかかるということはないそうだ。

IVRは救命率の向上に貢献

IVRを使って、体に大きな負担をかけずに効果的な治療を行うことが可能になる事から、救急医療の止血手段としても欠かせない存在になっている。

これまでの外科手術とは違い、CT画像から体内の出血場所を特定し、出血場所までカテーテルを進めて血管の中から出血を止める。

IVRのおかげで現在は30分前後で出血を止めることも可能になり、救命率の向上にも貢献していると言う。

IVRは、今後さらに様々な病気の治療に活用されていくだろう。今後の発展にも期待をしていきたい。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。