大阪・北新地のクリニックで26人が犠牲となった放火殺人事件から、間もなく1年を迎える。

 12月6日、遺族がコメントを発表し、犯罪被害者らに対する国の支援制度が十分でないとして、制度の見直しを訴えた。

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■事件から1年 遺族の訴え

 2021年12月、大阪・北新地の心療内科クリニックが放火され、医師や患者など26人が犠牲となった。

 事件では谷本盛雄容疑者(当時61)が殺人などの疑いで書類送検されましたが、その後死亡し、不起訴となっている。

 事件から1年となる12月17日を前に、遺族や弁護士でつくる「犯罪被害補償を求める会」が12月6日に会見を開き、遺族の心境をつづったコメントを発表した。

事件で夫を亡くしたAさん:
この一年あっという間でした。たくさんの人に助けられ生きてこられました。でももう最愛の夫はこの世界のどこにもいない。この世の誰よりも大切な人はどこを探してもいないのです

 また、別の遺族が訴えたのは、想定外の事態で発生した経済的負担の大きさだ。

 殺人事件などの遺族に対して、国は「犯罪被害者等給付金」という補償金制度を設けているが、金額は320万円からおよそ3000万円と幅があり、被害者の収入などで決まる。

 今回の事件では、被害者の多くが職場復帰を目指して通院していたため、当時「無職」と見なされ、遺族への給付金が大きく減らされる恐れがあるのだ。

事件で夫を亡くしたBさん:
夫の命の価値を被害に遭ったその瞬間の「収入」で計られ、あなたの家族の価値は軽いのだと言われたように思いました

 「犯罪被害補償を求める会」は、現在の給付金の支給条件などは被害者に寄り添っていないとして、国に制度の見直しを訴えている。

■「犯罪被害者等給付金」の制度とは

 現在、日本には犯罪の被害者や遺族に一時金として補償を給付する「犯罪被害者等給付金」の制度があります。しかし、給付額は320万円~2964万5000円と幅広く、2021年度の平均は665万円だった。

 給付額に幅があるのは、被害者の年齢や事件前(過去3カ月)の収入、遺族の人数などから給付額が算出されるためだ。

 被害者遺族側が求めているのは、「自賠責保険と同様の補償」だ。

 交通事故の被害者に適用される自賠責保険の最高額は、「犯罪被害者等給付金」の制度とほぼ同じ3000万円だが、2018年度の給付平均は2400万円だった。ここには葬儀費(100万円)や、得られたはずの将来の収入である「逸失利益」、遺族の人数による慰謝料が含まれている。

 自賠責保険は民間の保険ですが、加害者が加入していなかった場合、国が同様の金額を給付するという仕組みがある。

 また、国の制度以外に、独自の被害者支援制度を設けている自治体もある。兵庫県明石市では、加害者から賠償金が支払われない場合、市が代わりに最大300万円を給付している。

 犯罪被害者の遺族の、その後の生活をどう支えてゆくべきか。誰もが犯罪被害者の遺族になる可能性はある…さらなる議論が求められる。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月6日放送)

関西テレビ
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