サッカーのFIFAワールドカップ、決勝トーナメント進出をかけ、12月2日午前4時から、日本はグループステージ第3戦のスペイン戦に臨む。注目の一戦を前に、スペインのテレビやラジオで活躍する記者やコメンテーターの3人に話を聞いた。

1人目は、スペインの国営テレビ「RTVE」のサッカー専門記者、ダヴィ・フィゲイラ氏。ワールドカップとスペイン代表を取材している。

テレビに出演し解説するフィゲイラ氏(左)
テレビに出演し解説するフィゲイラ氏(左)
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「日本はドイツ戦でチームのいいところを見せてくれた」

――スペイン代表チームの調子についてここまでどう見るか?

とても良いと思う。上出来と評価するべきだと思う。コスタリカ戦は色々な面でとても良くて、サッカーはとてもレベルが高く、プレーの精度があり、コンビネーションもよく、決定力もあった。対戦相手が強豪じゃなくても、ワールドカップで7得点入るのはとても珍しい。

2戦目のドイツは、過去最高のチームではないが、4回優勝しているし、そのドイツに対してもスペインはゲームを支配することができた。最後の20分で少しだけゲームコントロールを許してしまったが、スペインの良さを出していた試合だったと思う。今まで勝ち点6のうち4点取っているのは、とても良いと思う。

――日本代表チームについては?

ドイツ戦でチームのいいところを見せてくれたと思う。それはスペースを突いて相手を嫌がらせること。ドイツは長い時間にわたって支配していたけれど、後半日本はドイツに2点目を決めさせずに、カウンターで速い攻撃で2得点とり、相手チームにダメージを与えた。

一方コスタリカ戦では、日本は試合への緊張感をコントロールするのに苦戦し、球際の厳しさやコスタリカ相手にゴール決める部分が少し足りなかった。

――グループEのここまでの展開についての印象は?

これまでの試合を見ると、日本がトーナメントに通過するのは難しいと思う。スペイン対日本は日本にとっては不利な状況だと思う。スペインは戦い方や、チームの特徴、監督の能力を見る限り、日本に譲歩して勝たせることはないと思う。

スペインが日本に勝ち、ドイツもコスタリカに勝つと思う。スペインとドイツが決勝トーナメントに進出する確率が高く、日本はそこまで可能性は高くないだろう。

日本がドイツに勝ち好発進したが、コスタリカに対して少なくとも引き分けられなかったことがマイナスになった。

――あなたにとってグループEのサプライズは?

日本の強みである攻撃をして、日本がドイツに勝ったこと。コスタリカ戦と比べて権田は好セーブをし、失点を1に抑えて、素早い攻撃で2点を取った。今回のワールドカップの大きなサプライズだと思う。また、スペインがコスタリカに勝ったことは驚きではないが、7対0で勝ったことは驚きだった。

ドイツ対スペインの1対1は驚きはない、どちらのチームもレベルが拮抗してるので。日本がコスタリカに負けたことも少し驚いたが、大きなサプライズではない。

「落ち着く時間が少ない試合展開」なら日本勝利の可能性

――日本対スペイン、それぞれカギになる選手は?

スペインは日本の情報をたくさん持っている。ワールドカップメンバーの多くの選手が東京オリンピックの準決勝でスペインと対峙している。久保、前田、遠藤、吉田が長年安定した柱となって知名度がある。もう一度言うけど、スペイン代表は日本代表の情報をたくさん持っている。

一方のスペインは、監督にとってラッキーなことに、ペドリ、ガヴィ、オルモ、アセンシオなど良い選手が多い。

しかし日本戦で試合に出る選手はドイツやコスタリカ戦と比べて結構変わると思う。アンス・ファティ、バルデ、ソレールのように今まであまり試合に出られなかった選手が日本戦に出ると思う。でも、さっき話した日本の柱はとても明確で、ここ数年プレーモデルがとても安定していて、スペインはそれを熟知している。

――なぜ日本戦でスペインチームの選手が入れ替わると思う?

ルイス・エンリケ監督にとって、4日間で2試合で行い、11人中10人同じ選手を起用するのは異例。現在、スペインが勝ち点4を獲得している。日本戦で引き分けでもトーナメント進出できるので、選手たちに休む時間を与えるのではないかと思う。すでにルイス・エンリケ監督は、今までの11人以外にも絶対的に信頼できる選手はたくさんいると言っていた。8日間で3試合目なので、出場時間が少なかった選手が能力を発揮するときであり、また、2試合の長い時間に出場した選手をリフレッシュさせると思う。

――日本がスペインに勝つ確率は?

とてもいい質問だね。80:20でスペインだね。

――日本がスペインに勝る点は?日本が勝つとしたらどういう試合展開になる?

試合の流れが行ったり来たりして落ち着く時間が少ない試合展開だったら、日本がスペインを驚かせる可能性はあると思う。

試合をコントロールし、ボールを持ち、チームがコンパクトになり、パスをたくさん繋ぎ、素早いコンビネーションをする。もし日本がスペインにそのスタイルをやらせないで狂ったような、予期せぬ試合展開をすることができれば、勝つか、少なくとも勝ち点を取ることができるかもしれない。

――スペイン対日本、ドイツ対コスタリカ、それぞれスコアの予想は?

ドイツがコスタリカに勝ち、スペインが日本に勝つと思う。その場合、スペインはグループ1位でドイツが2位となる。そうならない場合を予想するとしたら、コスタリカ対ドイツが日本にとって有利な試合結果となり、日本対スペインが引き分けるという展開。

試合は同時間なので、予想は難しい。妥当な予想だと、スペインが勝利し、ドイツも勝つだろう。ドイツ-コスタリカはドイツが2対0または3対0など2、3点差で勝つと思う。スペインー日本も2対0。

優勝は「フランス」と予想

――スペインはこの大会でどこまで行くと思う?

このワールドカップだけではなく、ここ数カ月のパーフォーマンスを見る限り、スペインは強豪国と対戦し、前評判で下手に出ることはないだろう。

去年行われたユーロでは、下馬評が悪かったにも関わらず、準決勝まで行き、PKで負けて決勝に行けなった。数か月後、UEFAネーションズリーグで、ファイナル4でスペインはイタリアに勝ち、決勝でフランス相手に善戦した。

さっき言ったスペインの特徴とプレースタイルは、どんな相手でも恐れずに試合に臨める。もし予想通りにスペインがグループEの1位になれば、ベスト16でベルギーかクロアチアかモロッコかに当たり、そしてベスト8でブラジルに当たる。スペインがブラジルに勝てるという可能性はある。スペインは準決勝に進出して、ベスト4まで行くだろう。

――優勝するのは?

フランスがとてもいいと思う。ワールドカップで2大会連続優勝は異例だが、チームは怪我人がたくさん出たことをうまく乗り越えている。カンテ、ポグバ、エルナンデス、 ベンゼマなど、怪我をしていなかったらスタメンだったであろう選手がね。フランスはたくさん良い選手がいて、プレースタイルも豊富だ。いろいろな種類のサッカーや試合展開に対応できる。

ワールドカップで一番光っている選手がいる。それはエムバペだ。彼が試合に出るだけで勝つことができる。そう言える選手は今、ほぼいない。だから他の代表よりもプラスがある。

フィゲイラ氏が評価する日本人選手は?
フィゲイラ氏が評価する日本人選手は?

――あなたが評価する日本人選手を教えてください。

さっき言ったことだけど、日本は重要な柱があり、それで良いチームができている。

ヨーロッパの経験が豊富な吉田はディフェンスを強化し、他には遠藤もブンデスリーガでの経験があり中盤の柱のキーマン。そして攻撃にも何人か良い選手がいる。監督が誰にかけるか分からないが、堂安、三苫、久保、この3人の誰でも、スペースがあるところへのカウンター攻撃でドイツ戦で見せたように2、3パスで攻撃し、危険なシーンを作り得るだろう。これらの3、4選手が注目選手だと思う。

(聞き手:FNNパリ支局長・山岸直人)

パート2に続く

山岸直人
山岸直人

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FNNパリ支局長。1994年フジテレビ入社。社会部記者、ベルリン特派員、プライムニュースイブニング、Live News αを経て現職に。ドイツのパンをこよなく愛するが、最近はフランスパン贔屓。