危険と隣り合わせの高速道路。パトカーが赤色灯を点灯し、サイレンを鳴らして緊急走行する。

「運転手さん!運転手さん!あなたです、あなた!」と呼びかけ止めるも、違反者は「えー、だから、自分の速度よりも抜いて行く車もあるじゃないですか」と反論。

非を認めようとしないドライバーの取り締まりに、落下物の処理。高速道路の安全を守るために奮闘する、3人の新人女性隊員に密着した。

覆面パトカーの横を猛スピードで走行

岐阜県羽島市にある「岐阜県警高速隊 岐阜分駐隊」。高速道路上で起きた事故や交通違反の取り締まり、さらに落下物の処理などが主な任務だ。

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ここに2022年春、初めて女性隊員が3人、入隊した。

この日、先輩隊員とパトロールに出たのは小木曽真央巡査長(25)。すると…。

小木曽真央巡査長:
アルファード速いですね。結構速いですね。前に引っ張ってますね。

覆面パトカーの横を猛スピードで走り去っていく車。

小木曽真央巡査長:
運転手さん、運転手さん。パトカーが前に入ります。パトカーに続いてください。パトカーに続いて走行お願いします。

違反車両をインターの出口まで誘導する。

小木曽真央巡査長:
(パトカーの)中にまずお願いします。ご自身の感覚では何km/hぐらいで走行していましたか?

違反者:
115km/hくらい。

115km/hほどの速度で走行していたという違反者に「指定速度が80km/hの道路」だと説明
115km/hほどの速度で走行していたという違反者に「指定速度が80km/hの道路」だと説明

小木曽真央巡査長:
ここの道路、養老のサービスエリアから彦根までにかけて、指定の80km/hの速度の道路になっています。

違反者:
追い越しの時はいいんじゃないですか?

「いえ、そういった決まりはないです」と小木曽巡査長
「いえ、そういった決まりはないです」と小木曽巡査長

小木曽真央巡査長:
いえ、そういった決まりはないです。基本的には、指定の速度が最高速度の制限になってます。

制限速度オーバーも「えーだから」と食い下がる

高速道路の違反の中で最も多い「スピード違反」。車を追い越す時も、制限速度を守らなくてはならない。

しかし、中には違反を認めようとしないドライバーもいる。黒川結香巡査長(25)がパトロールをしていると…。

黒川結香巡査長(25)
黒川結香巡査長(25)

黒川結香巡査長:
110km/h、116km/h、110km/h…。ノアの運転手さん、ノアの運転手さん。パトカー付いてください、パトカー付いてください。

運転していた女性は、制限速度を30km/h近くオーバーしていた。

28km/hの超過
28km/hの超過

黒川結香巡査長:
速度108km/hということで、80km/h(規制)の道路ですので。28km/hの超過になります。

違反者:
自分の車の前に、常に車ってあるじゃないですか。その車についていく…。

「右車線を走っていた前の車に追いついた。速度も速かった」と違反者に説明
「右車線を走っていた前の車に追いついた。速度も速かった」と違反者に説明

黒川結香巡査長:
その車についていくというか、今回の状況としては、運転手さんの車はずっと他の車両を追い抜いて行く形で、右車線を走っていた前の車に追いついたって形ですね。さらに速度も速かったので、パトカーが後ろついて、赤色灯つけて追尾しましたよ、測定しましたという結果です。

「えーだから」と反論
「えーだから」と反論

違反者:
えーだから、自分の速度よりも抜いていく車もあるじゃないですか。

先輩男性隊員:
追い抜いていく車、なかったですよ。

違反者:
それは…。

女性はなかなか、自分の非を認めようとしない。

ベテラン男性隊員が対応して収束
ベテラン男性隊員が対応して収束

先輩男性隊員:
運転手さんがおっしゃりたいのは、私より速い車が他にもいっぱいいたのに、ってことだと思うんですけど、僕らが見た時は運転手さんの車が速かったので、速度測定させていただきましたので。よろしくお願いいたします。

最後はベテランの男性隊員が対応し、その場は収まった。

父の影響で高速隊へ 同期3人の女子会で意見交換

黒川さんは女性隊員として、違反者を取り締まる難しさを感じている。

「精神面も強くなっていかなきゃいけない」
「精神面も強くなっていかなきゃいけない」

黒川結香巡査長:
自分が女性ってところがあるので、弱く思われてしまうところもあるかと思う。自分自身が強くいるために、精神面とかそういうところも、今後強くなっていかなきゃいけないなって思います。

自ら希望して高速隊に入ったというが、その理由は?

黒川結香巡査長:
父親がずっと交通警察官で。高速隊員だったって話を聞いたんですよ。女性隊員がいるのかどうか気になって聞いたら、「女性隊員はまだ1人もいないよ」って。衝撃を受けたのがきっかけですね。

「女性隊員はまだ1人もいないよ」と聞き志望
「女性隊員はまだ1人もいないよ」と聞き志望

高速隊員だった父親の影響で高速隊に興味を持ち、交通専門の警察官を志した。

黒川さんはジムに通うのを日課にしている。筋トレやランニングなど、2時間みっちり自分を追い込む。

筋トレやランニングなど、2時間自分を追い込む
筋トレやランニングなど、2時間自分を追い込む

取材スタッフ:
(ジムに来るのは)周りが男性ばかりで体力の差を感じるから?

黒川結香巡査長:
男性警察官と(比較)っていう意味ではなく、体のコンディションはいつも万全な状態でいるのが、自分の務めかなと思うので。自分自身のためにって感じですね。

「体のコンディションはいつも万全な状態で」
「体のコンディションはいつも万全な状態で」

休みの日は、高速隊の女性同期3人で…。

中野琴音巡査(22):
定期的に開かれる女子会です。

同期3人:
ふふふ(笑)

久々の食事会。趣味のキャンプの話で盛り上がる。

黒川結香巡査長:
キャンプまだ行くの?

小木曽真央巡査長:
また11月に行きたいところがあって。琵琶湖行きたいんですよ。

中野琴音巡査:
あるんですか、琵琶湖に?

小木曽真央巡査長:
琵琶湖にあるんですよ。シーサイドみたいな感じで、琵琶湖を眺めながらできるところ。

しかし、話題は自然と仕事の話へ。

黒川結香巡査長:
この車速いなとか、ずっと見てて、やっぱ速いんで行こうとかそういう感じ。しかも方法が(人によって)違うの。

小木曽真央巡査長:
攻め方がですか?

黒川結香巡査長:
(目につく車の)様子を見るとかさ、急にバーッて行くとか。みんなどんなふうにやっとるのかなって、疑問には思ってる。

黒川さんは、「仕事の唯一共通点として話せるのが、この3人かなと思う。仕事の話はこの2人にすることが多いのかな」と話す。

追い越し車線に大きなポリ袋 命懸けの回収作業

つかの間の休みが明けると、再びいつもの職務が待っている。この日、パトロールをしていた黒川さんのもとに、1本の無線が入った。

「80.2kmポスト付近。大きめのビニール袋が1袋」
「80.2kmポスト付近。大きめのビニール袋が1袋」

無線:
路上落下物の目撃。現場は名神・上り東京向き。380.2kmポスト付近。大きめのビニール袋が1袋。

通過する車が踏んでタイヤに絡まれば、大事故につながる恐れも
通過する車が踏んでタイヤに絡まれば、大事故につながる恐れも

追い越し車線に、大きなポリ袋の落下物があるとの通報が。通過する車が踏んでタイヤに絡まったりすると、大事故につながる恐れもある危険な状態。急いで現場へ向かう。

黒川結香巡査長:
あれか、あれですね。

ポリ袋は、追い越し車線から中央分離帯に飛ばされていた。

先輩男性隊員:
もうちょい向こう、もうちょい向こうで旗振って。トラックの後、出ます!

高速道路を一気に横断し、ポリ袋を回収
高速道路を一気に横断し、ポリ袋を回収

先輩からの合図で、高速道路を一気に横断。無事にポリ袋を回収した。

「自分たちが撤収作業しなくてはいけない、という使命感」
「自分たちが撤収作業しなくてはいけない、という使命感」

黒川結香巡査長:
今回、現場見た瞬間に、絶対に(本線を)渡らなくちゃいけないと思ったので。怖いかって言われたら怖いんですけど、いち早く事故防止のために、自分たちが撤収作業しなくてはいけない、という使命感。

岐阜県警初の女性高速隊員となったことついて、3人は…。

中野琴音巡査:
今、自分が仕事することに精一杯にまだなってますので。いろんなところに目を向けられる警察官になりたいと思っています。

小木曽真央巡査長:
(高速隊に)私たちが入っているという一つの姿で、少しでも(女性警察官を目指す)きっかけになれるんじゃないかと思っているので。これからも頑張っていきたい。

「ぜひ高速隊を希望してもらいたい」
「ぜひ高速隊を希望してもらいたい」

黒川結香巡査長:
交通警察官になりたいという女性警察官がいたら、ぜひ高速隊を希望してもらいたいなと思います。そのために私たちは今、全力で頑張っているような状態です。

彼女たちは今日も全力で、高速道路の安全を守っている。

(「イット!」11月30日放送)