“茹でたブロッコリー”を海苔で切断する動画がTwitterで話題となっている。

明治大学の宮下芳明教授が10月15日、この切断する動画とともに、「フードテックグランプリで僕が一番感動したのは、ギフモ株式会社のDeliSofter(デリソフター)」と投稿。

ツイートで紹介されている「デリソフター」は、家庭料理や市販の惣菜、冷凍食品など、出来上がった料理を美味しさと見た目はそのままに“やわらかくする”調理家電。

京都にある「ギフモ株式会社」が開発し、2020年7月下旬に発売。10月1日にリニューアルされた。

「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)
「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)
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この「デリソフター」について、宮下教授は「なんとブロッコリーを海苔で切断できる!実際、舌でつぶして飲み込めた。広まってほしい。ぜひ拡散を!」と呼びかけている。このツイートには2万9000以上(11月28日時点)の「いいね」がつくほどの話題となった。

また、10月16日のツイートでは「唐揚げをポテトチップスで切れます。形を維持しつつ この柔らかさは驚異。噛む力や飲み込む力が弱くなった方々、そして そのご家族を救う技術だと感じています」と、デリソフターの魅力を紹介している。

さらに宮下教授は編集部の取材に対し、ツイートした理由を以下のように明かしてくれた。

「フードテックグランプリ2022」というイベントで、この技術を知りました。

自分も出場し、プレゼンしたのですが、参加者投票で2位。1位はこの「デリソフター」で、僕自身も聴衆として泣いてしまうぐらい感動的なプレゼンテーションでした。

きざみ食やソフト食を作るのには手間ひまがかかる上に、それを食卓に出しても「なぜ自分だけそんなものを食べなければならないのか」と怒鳴られて、喧嘩になったりするというのです。

工学的に問題解決を考えると、「咀嚼や嚥下が難しいなら、ミキサーで砕いたり刻んだりして、また固めれば良い」と安易になりがちです。ですが、それで失われた食べ物の「形」がとても重要だったわけです。

フードテックというのは、単に問題解決を行うだけでなく、人を幸せにする技術であるべきだと強く感じました。こうした理由で、自分を負かしたライバルではありますが、「デリソフター」のすごさを伝えるツイートを行った次第です。

開発メンバーの2つの思いから生まれた

この「デリソフター」は、出来上がった料理を美味しさと見た目はそのままにやわらかくしてくれるということなのだが、なぜ、このようなことが可能なのか? また、どのような人に使ってほしいと考えているのか?

「デリソフター」を開発した、ギフモ株式会社の担当者に仕組みと思いを聞いた。


――「デリソフター」を開発した理由は?

「デリソフター」は、2人の開発メンバーが、実際に経験することで改めて気付かされた、“2つの思い”から生まれました。それぞれの家庭環境の課題が開発のきっかけです。

一つは、「作る人と食べる人が思いをおくり合う、そんな食の幸せをいつまでも感じてほしい」という思いです。

開発メンバーの1人は、2015年、父が突然、誤嚥性肺炎になり、嚥下障害で普通の食事ができなくなりました。嚥下障害を持つ家族を介護して、はじめて分かったことですが、介護食にするためには、食事の準備(刻んだりペーストにしたり)に時間がかかります。

また、作れないときは市販の介護食に頼るのですが、購入すると、かなりの金額がかかることが判明しました。さらに見た目が変わってしまった食事には箸が進まず、作る方も食べる方もストレスになっていきました。

こうした経験から、このメンバーは「作る人と食べる人が思いをおくり合う、そんな食の幸せをいつまでも感じて欲しい」と感じたということです。

「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)
「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)

もう一つは、「家族みんなが同じ料理を食べられることの大切さと喜びを届けたい」という思いです。

開発メンバーのもう1人は大家族で、小さい頃から家族の手料理で育ちました。このメンバーの祖母は、100歳を超えてこの世を去るまで、家族が作った、みんなと同じものを食べていました。

また、そんな祖母を見ていると、人生の最期まで、家族と同じ食事を食べることができるのは、人生最大の喜びという思いを持っていました。こうした経験から、このメンバーは「家族みんなが同じ料理を食べられることの大切さと喜びを届けたい」と考えました。

「高圧力」と「高温の蒸気加熱」で可能

――出来上がった料理を美味しさと見た目はそのままにやわらかくする。このようなことができるのはなぜ?

2.0気圧の「高圧力」と120度の「高温の蒸気加熱」を行うことで、食材を素早く、やわらかくすることを可能にしています。

一般的な「介護食」は、刻んだりペーストにしたりと、お料理そのものの状態が分からないように加工されて提供されることが多いです。その場合は、自分が今何を食べているのか分からず、食欲も湧きづらくなり、食事の楽しみがなくなっていきます。

一方で、「デリソフター」は、加圧水蒸気で調理するため、できる限り、通常食のお料理と変わらない見た目で、介護食の「やわらか食」として提供することが可能です。

「デリソフター」は、国内の電気圧力鍋として最高レベルの2.0気圧がかかるため、庫内も120度の高温となり、短時間で調理可能です。付属のデリソフター専用カッターでタンパク質などの繊維の筋を切り、熱と蒸気の通り道をつくることでも、やわらかく調理することの促進となります。

デリソフター専用カッター(提供:ギフモ株式会社)
デリソフター専用カッター(提供:ギフモ株式会社)

料理の煮崩れなどを想像していただくと分かりやすいかと思いますが、調理しすぎると、形が崩れたり、溶けたりします。デリソフターは試作を重ねて、材料ごとの最適な調理モードを導き出し、それを目安としてご案内しております。

推奨の調理モードで調理いただくことで、できる限り、見た目がそのまま(崩れない状態)、かつ、やわらかい状態でお食事を行っていただけます。


――デリソフター専用カッターは、食材にどのように影響する?

デリソフター専用カッターの刃物は、食材の形を崩さず、筋切りと穴あけ加工の跡を目立たせず、見た目そのままで、隠し包丁を入れることができます。

肉など、食材の繊維を細かく分断するとともに、熱が通りやすいように、食材の中心部に向かって、熱の通り道を作ります。

使い方の手順は…

――肉料理をやわらかくするときの使い方は?

まず、デリソフター専用カッターで調理済みのお肉をスタンプします。

ステップ1(提供:ギフモ株式会社)
ステップ1(提供:ギフモ株式会社)

次に、付属の専用調理皿に、お料理をのせます。

ステップ2(提供:ギフモ株式会社)
ステップ2(提供:ギフモ株式会社)

そして、本体の内鍋の中に200ccの水とお料理を入れます。

ステップ3(提供:ギフモ株式会社)
ステップ3(提供:ギフモ株式会社)

調理モードを選択して、調理開始ボタンを押します。あとは、調理が終わるまで、ほったらかしでOK。調理が完了したら、本体の内鍋からお料理を取り出し、やわらかくなったお料理をお皿に盛り付ければ、完成です。

ステップ4と5(提供:ギフモ株式会社)
ステップ4と5(提供:ギフモ株式会社)

――肉料理以外も使い方は同じ?  

基本的には同じです。ブロッコリーやにんじんなどの繊維が固くない野菜の場合は、デリソフター専用カッターの工程は不要です。


――「ブロッコリー」の場合の“使い方の手順”は?

以下は「冷凍食品のブロッコリー」の場合の手順です。

(1)ブロッコリーを準備します(カッターは不要)
(2)専用調理皿に重ならないように並べます
(3)本体の内鍋の中に200ccの水とお料理を入れます
(4)調理モードを選択して、調理開始ボタンを押します

あとは、肉料理と同じように、調理が終わるまで、ほったらかしでOKです。

ブロッコリーのやわらかさの比較(提供:ギフモ株式会社)
ブロッコリーのやわらかさの比較(提供:ギフモ株式会社)

――調理後、時間がたっても、やわらかさは変わらない?

肉などのたんぱく質は時間が経つと、「冷える・乾く」などの理由で固くなり、食べづらくなります。

出来上がり直後の一番やわらかい状態でお召し上がりいただきたいため、「デリソフターで調理した料理は、調理後15分以内を目安にお召し上がりください」と、ご案内しております。

なお、ブロッコリーやにんじんなどは、調理後、冷えても固くなることはございませんので、作り置きも可能です。

家族と同じお食事を食べたい方・食べさせてあげたい方に使ってほしい

――10月1日のリニューアルで何が変わった?

付属のデリカッターが使いやすくなりました。お手入れが簡単、抗菌、食洗器対応になりました。


――この調理家電は、どのような人に使ってほしい?  

以下の方におすすめです。

・加齢や病気、怪我などで噛む力や飲み込む力が低下してまった方
・歯科矯正などで、やわらかいものしか食べることができない方
・買ってきた介護食や、元の料理の原型が分からず、食欲がなくなってしまった方

見た目がそのままでやわらかくすることでできるので、家族と同じものを食べたい方、食べさせてあげたい方に使っていただきたいです。

また、離乳食などにもおすすめです。

「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)
「デリソフター」(提供:ギフモ株式会社)

「デリソフター」の販売価格は5万9400円で、「ギフモショップ」で購入可能。噛む力や飲み込む力が弱くなっている方、そして、そのような家族がいて、同じものを食べさせたいと思っている方から、食の楽しみを守りたいという優しい思いから作られたものだった。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。