「岸田さんももうダメか」
そろそろ師走だが岸田首相がとっても苦しそうだ。閣僚が3人ドミノ辞任し、さらに4人目として秋葉復興相の名前が挙がっているほか、首相本人にも公選法違反の疑いが浮上した。内閣支持率も低迷している。旧統一教会への対応も迷走しているように見える。
この記事の画像(4枚)物価が上がって国民もイライラしているのか、最近SNSでは「岸田さんももうダメか」といった投稿をポツポツ見かけるようになった。岸田内閣は年を越せるのだろうか。
求心力の回復のため年末か年明けに内閣改造を行うとの見方もあったが、本人は24日これを否定した。またヤケッパチ解散などという声もあるが、首相が解散しようとしたら自民党内で直ちに引きずりおろされるだろう。今総選挙をやっても分裂している野党に政権を奪われることはまずないだろうが、相当の議席減は確実だからだ。
岸田おろしがない理由
解散するしないは別にして「岸田おろし」の動きは出ないのだろうか。もし岸田氏が「おりる」のであれば河野太郎、茂木敏充の両氏は手を挙げるだろう。他の人は準備できていないと思う。岸田氏は河野氏よりは茂木氏の方に肩入れするだろうし、安倍派も茂木氏か、できれば岸田氏にとどまってほしいだろう。
つまり岸田氏をおろしても、後継が茂木氏であれば岸田路線を継承するだろうから新味はない。だったら岸田氏続投でいいじゃないかということではないか。自民党内では「岸田辞めろ」の声はあまり聞こえてこない。
確かにいくら支持率は低くても与党が衆参両院で過半数を大きく超えている限り、予算はじめ法律は通るので政権は維持される。つまり岸田内閣は年を越せるし、来年5月の広島サミットだって開催できる。
弱いリーダーは国民の顔色を伺う
だが「弱い」政権を維持するのは結構大変だ。いろいろな勢力の話を聞く必要があるからだ。自民党の保守派、公明党、野党、メディア…。いろいろな話を聞くということは自分のやりたいことに集中できない、あるいはポピュリズムに陥る危険性がある。
たとえば防衛力は強化するが財源は増税や歳出削減でなく借金でまかなう。痛みを伴う規制改革はしない。補助金や給付金をじゃぶじゃぶ出す。これも財源は借金。皆が喜ぶことをやり、嫌がることはやらない。
そして世論が望むなら、旧統一教会に対して解散命令を請求し、被害者救済を信教の自由や個人の財産権より優先させる法律を作ることになるかもしれない。
政権を維持するために世論の顔色を伺うことは過去の政権でもあったし、昨今の欧米におけるポピュリズム政治はまさに弱いリーダーによる世論への迎合だ。
亡くなった安倍晋三元首相は7年8カ月の間首相を続けた強いリーダーだったので、消費増税や集団的自衛権の容認など当時は国民が嫌がった政策も断行した。今になってこれは評価する声が多い一方で「独断的だった」という批判もある。
安倍さん亡き後の日本は誰がやるにせよ、相対的に弱いリーダーによる、独断的でない、国民の顔色を伺う政治がしばらく続くのではないか。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】