福井市にひっそりとたたずむ銭湯がある。創業59年、昭和、平成、令和と3つの時代にわたり営業を続けてきた。ただ、2022年12月末で閉館を決めた。

創業当時から変わらない館内
創業当時から変わらない館内
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父から運営を受け継いだ男性も「苦渋の決断」と無念の表情を浮かべる。残り少なくなった銭湯の1日に密着。運営側と常連客らの交流に密着した。

「もう限界…」銭湯閉館を決断

福井市足羽地区の狭い路地。その一角に銭湯「いづみ湯」がある。湯船を手作業で丁寧に掃除するのは、この銭湯の運営する佐藤進さん(53)だ。幼い頃からこれが日常だった。ただ掃除中、疲れた表情の佐藤さんから「もう限界…」と本音が漏れた。

湯の温度は一般の風呂より少し熱めの43度。湯船、洗い場、脱衣所など館内はほとんど創業当時のまま残されている。創業したのは大野市の旧和泉村出身で父の充美さん(80)だ。

ダムの建設に伴う立ち退き資金を活用して、福井市内の銭湯を買い取り、1963年に「いづみ湯」としてリニューアルオープンした。30年ほど前までは福井市内に銭湯は30以上あったとされる。ただ時代が経つにつれ、運営者の高齢化などを理由に廃業が続き、現在は営業しているのは7カ所となった。

「薪でこんな感じでやってます」開店3時間前、薪で湯を沸かすため佐藤さんはボイラー室で汗をかきながら火の具合を見ていた。煙突からモクモクと上がる煙は、いづみ湯の営業日の目印だ。

昔ながらの薪を使ったボイラーでお湯をわかす
昔ながらの薪を使ったボイラーでお湯をわかす

佐藤さんは普段、石川県にある専門学校の事務職の仕事をしている。そのため「いづみ湯」が営業するのは仕事が休みの日のみ。月に2日~3日ほどしか営業していない。そして創業から59年目を迎えた2022年、ある決断を下した。

佐藤進さん:
利益が出ているかというと全然出ていないし。ボイラーの水漏れもあるし、木材もなくなってきていて。もう潮時かなと

ボイラーの水漏れ
ボイラーの水漏れ

設備を更新するにも莫大な費用がかかる。そのため銭湯を閉めることを決めた。

休日返上で銭湯の営業を続けてきた理由

59年続いた銭湯の営業は12月いっぱい。11月6日、この日は午後3時に営業が始まった。番台に座る父の充美さんが次々と訪れる客にいつも通り「いらっしゃい」と声をかける。

石川県から来た客:
ここの風呂の雰囲気が好きで3年くらい通っている。だんだん営業終了が近づいて、名残惜しい気持ちに。自分の中に記録をとどめておきたい

20年以上通う常連客:
なくなるのは寂しい。今まで来ていたところだから。閉館まで営業日は必ず訪れたい

佐藤さんは営業前から営業終了までの6時間半、この場所を離れない。薪を猛烈な熱さのボイラーに投げ込むためだ。営業中はひらすれこれを繰り返す。「あっちーな」汗だくだが笑顔で応えた。

休日返上でいづみ湯を営業してきた理由。それは「生まれ育った銭湯がなくなってほしくない」との強い思いだった。

佐藤進さん:
生まれた時からここにいた。ずっと銭湯に入ってきたから。なくなるのは寂しいけれど、まぁ時代の流れだから仕方がないね

ボイラーを訪れた客:
薪で沸かすということですごくいい湯。こういう銭湯が減ったり、なくなってしまうのは寂しい。いいお湯でした。ありがとうございました

創業59年の「いづみ湯」。閉館まであと1カ月となった。

(福井テレビ)

記事 412 福井テレビ

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