今、夜を彩るショーとしておなじみのプロジェクションマッピングの世界が進化している。グルメや医療の現場にまで進出するその魅力を、取材した。

プロジェクションマッピングがつくる世界

建物などの立体物をスクリーンに見立てて映像を映し出す、プロジェクションマッピング。観光地やテーマパークにとどまらず、さまざまな場所で見かけるようになってきた。

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大津市にある比叡山延暦寺のエリアで開催されているアートイベントは、スマホとの連動も。「DANDELION PROJECT」は、タンポポの綿毛を模したオブジェから、自分の名前が飛び出すように投影される仕掛けだ。

吉原功兼アナウンサー:
QRコードをかざすと…おぉ!「KOKEN」の綿毛が飛びました!ここまで進化してるんだ…

演出は、ただ映し出すだけにはとどまらない。足元を照らす「ディスタンス提灯」は、美しい模様が影で邪魔されないよう、他の人との距離を自然と保ちたくなるような狙いが。

また、消毒液に手をかざすと花が咲く仕掛けなど、「Withコロナ」に対応した演出まで生み出されているのだ。

このイベントを演出しているのは、二条城などさまざまな場所でアートイベントを成功させてきたクリエイティブ集団「NAKED」。

村松亮太郎代表は、「プロジェクションマッピングは、自分の枠を壊してくれたもの」と語る。

NAKED 村松亮太郎代表:
このリアルな場所が映像の力によって違う世界に変わるとか、実際その中の世界に自分が入り込めるとか、そういう効果ってすごく大きいものだと思うので。広義に考えれば、「どう世界を作り上げていけるか」みたいなツールとして発展していくと考えれば、可能性がすごく見えてくるかなと思います

リアル×物語の食事

これまでの常識を打ち破る仕掛けで、エンターテインメントの世界で多用されるプロジェクションマッピング。その演出は、「食」の世界にまで広がっていた。

吉原アナがやってきたのは、高級ホテル「セント レジス ホテル 大阪」のレストラン。料理を待っていると、幕が上がるようにテーブルの上が照らし出される。

吉原功兼アナウンサー:
わ!えっ何?すごいです!テーブルの上に草原が広がった…

テーブル一面に広がった、リアルで小さな世界。わずか58ミリのシェフが、お皿の上で料理を作ってくれる。
日本に初上陸した、ベルギー発のプロジェクションマッピングを使ったショーだ。

テーブルの上で展開されるコミカルなアニメーションに引き込まれたタイミングで、すっと差し出される前菜。

アニメーションの中で小さなシェフが作っていたのとそっくりな料理がタイミングよく提供される、心にくい演出です。

吉原功兼アナウンサー:
程よい酸味とチーズのなめらかさ…草原が見えますね

「シネマダイニング」とも呼ばれるこの仕掛け。まるで物語の中に入りこんだかのような没入感が人気の理由で、料理を待っている時間も「料理の一部」にしてしまう。

セント レジス ホテル 大阪 レストラン・バー 石田類アシスタントディレクター:
ある種、映画を見るようなエンターテインメント、楽しみっていうのをこの食文化の中に落とし込めるんじゃないかなって考えて。新しい食の楽しみ方を体験していただけたらいいかなって思っています

来店客は…:
セントレジスさんっておいしいので、ショーとプラスされて、余計に楽しい時間に

来店客は…:
新たな食事の境地を見出したなと思って。素晴らしい映像とともに、お料理が運ばれてくるときの香りも味わいというか…感動しました

世界各地で上映されているショーですが、日本では料理の提供方法などでオリジナルの演出が加えられ、ここでしか体験できないプログラムになっているそうだ。

吉原功兼アナウンサー:
ストーリーの世界の中で出てくる料理って見え方が変わりますね。ただ味だけじゃなくて、見て、食べて、その背景も見えてくるって意味では、2倍3倍の楽しみがあるなって感じがしました

こうしたプロジェクションマッピングの広がりについて、研究者は…

群馬大学 情報学部 奥寛雅教授:
プロジェクターっていうのはコンピューターにつながっていますから、本当にその場で合成された映像をそのまま投影することができると。コンピューターが発展してきて、いろんなことができるようになったことに加えて、さらにそれが映像っていう分かりやすいもので出力されてきますので、その2つによって急速に発展をしていってるんだと思います。これまではあまりプロジェクションっていうものを利用しなかったような領域まで、応用していくようないろんな試みが、今、盛んに行われています

プロジェクションマッピングが手術をサポート

技術の応用は、医療の分野にまで。

記者リポート:
こちらの会社では、このプロジェクションマッピングの技術を、なんと手術に応用したというんです

5年の歳月をかけて開発された、世界初の手術ガイド「MIPS(ミップス)」。その仕組みは…

三鷹光器 中村勝之 取締役:
人間の目では見えない蛍光薬剤が入っていて、その部分を中の赤外線カメラが捉えて、がんのある範囲と血流のある温存すべき範囲っていうのを、プロジェクションマッピングの技術を使ってガイドするシステムになります

患部に特殊な薬剤を注射し、その情報を受け取ったプロジェクターが切除するべき部分と残すべき部分を光で色分けする仕組み。一般的な手術ではモニターと患部の両方を見る必要があるが、MIPSを使えば患部から目を離さずに済み、医者の負担が軽減される。

最大の特徴は、リアルタイムの追従機能。臓器が動いてもプロジェクターが追い続けるので、患部を見失うことがないだ。

MIPSの発案者で、現場で活用している医師は…

京都大学 肝胆膵・移植外科 波多野悦朗教授:
色が付いているところと付いていないところの境目を切るということは、非常に分かりやすいんです

京都大学 肝胆膵・移植外科 波多野悦朗教授:
こういう機械を使うことで、例えば僕が100やって初めてできる技術が、10の経験でできるっていうことになるかもしれません。外科医の満足度が上がる、手術している快適さが上がる。そういう憂いのない手術をすれば、合併症のない手術になると

波多野教授は「MIPS」を導入したことで、手術時間の短縮や、出血量の減少を実感したという。

現在、関西では京大病院をはじめ、4病院が「MIPS」を導入。当初は肝臓の手術向けに開発されたが、今では乳がんや食道がんの手術にも使用されているそうだ。

三鷹光器 中村勝之 取締役:
人間の目では見えない血流情報を可視化することができますので、どこを切れば一番患者さんに負担がないのかとか、そういったものを術中にリアルタイムで見ることができる。いろんなところで応用が可能じゃないかと、われわれはすごく期待しています

エンタメから医療まで。プロジェクションマッピングの技術は、大きな広がりを見せている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月17日放送)