事業の継続が難しくなった医療機関と、開業を希望する医師を引き合わせる「医業承継バンク」が、福島の地域医療に効果をもたらしている。
福島県の人口10万人当たりの医師の人数は、東日本大震災後に減少した後、徐々に増加しているというが、都道府県別では42位。そして、全国では増加している診療所の数は、震災前と比べて100カ所以上減少している。課題山積の福島県で、地域医療を守る取り組みを取材した。

医師不足の地域で医療を
福島・川俣町の十二社内科外科。2020年12月に開院した。
十二社内科外科・三宅弘章院長:医者が少なくて困っている所で、医療をやりたいというのがありまして。それで、こういう所を選んでいるだと思います。自分でも良く分からないですけど。
院長の三宅弘章さんは、福島市で営んでいた診療所を息子に託し、川俣町で新たに開業した。かつてクリニックとして使われていた建物を活用している。

十二社内科外科・三宅弘章院長:診療所とか病院とかというのは、特殊っていいますか。普通の不動産屋さんで、そういう情報はあんまり入ってこないんですよね。そうしている時に、医師会に「承継バンク」というのがあるって分かって。

医療機関と医師をマッチング
福島県内の診療所は減少傾向で、2008年と2017年を比べると、113軒少なくなっている。地域医療を守るため、県の委託を受けた県医師会が2019年から取り組むのが、三宅院長が利用した「医業承継バンク」
事業の継続が難しくなった医療機関と、開業を希望する医師を引き合わせるもので、これまでに9件のマッチングが成立している。

福島県医師会・石塚尋朗さん:出来るだけ、閉じようとしている医院を閉じさせないためには、どうすればいいかという事で「医業承継」という考え方が出てきた訳です。

「承継第1号」が十二社内科外科。
医療機器の購入費や、建物の改修費の半額を福島県が補助する制度も開業を後押しした。医師は変わっても同じ場所に診療所が開業したことで、地域医療が守られている。
地域住民:やっぱり近くにお医者さんがいないっていうのは、不便だったね。
地域住民:みんな感じのいい人だから、先生も。やっぱり近くなった方がいい。だから近所の人も随分来てるよ。

効果と課題
「医業承継バンク」がもたらした、プラスの効果がある。この診療所では、胃カメラの検査にも対応。町内で検査を受けられる場所が増えたことから、川俣町は「がん検診」の対象者を、以前の80歳以上から50歳以上に拡大することができた。

上手くいった例がある一方、過疎地域は都市部に比べて開業を希望する医師が少ないという課題もある。
福島県医師会・石塚尋朗さん:お医者さん達も、だんだん自分の生活優先っていうのがありますから。条件の違いで、承継出来るか出来ないか決まってきますから。そこの所を何とかしていかなければいけない。

働きやすい環境を整えて、過疎地域での開業を促す。
福島県医師会は、住む場所の確保や家賃の補助といった支援策を充実させるため、自治体との協議などにも力を入れようとしている。

県民の健康を守るために欠かせない”医療機関”
引き継いだ医師が、その土地に定着して長い間医療を提供できるよう、受け入れる自治体や住民のサポートも必要となる。
(福島テレビ)