2022年だけで34回と、異例の頻度でミサイルの発射を行っている北朝鮮。18日には、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下した。
 北朝鮮の外相は、日米韓が首脳会談を開き連携を強化したことに対して警告する談話を発表していて、それが、ここ連日のミサイル発射につながったと専門家は指摘する。

龍谷大学 李相哲教授:
今、日米韓の連携はかつてないほど強固になっているというのが一般的な見方。日米韓が北朝鮮の軍事能力に対して共同で対処するということですから、怖いことでもありますし、非常に不満を持っている。

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 李教授は、北朝鮮が今後もミサイルの発射を続け、核実験を断行する恐れもあるという。

龍谷大学 李相哲教授:
国民を餓死させながらもひたすら開発してきた核兵器が完成間近になっているのに、やめるということはまずない。核実験はするものとみられます。ただ、タイミングがいつになるかに関しては、金正恩総書記の政治的判断なので予測しにくい

■「北朝鮮が“ガチ”になってきた」 3つのポイント

 2022年3月以来のEEZ内落下で、緊張が走った今回のミサイル。北朝鮮のミサイル開発にも詳しい、東京大学先端科学技術研究センター特任助教の山口亮氏に聞きます。

(Q.「北朝鮮が“ガチ”になってきた」というのは、どういうことでしょう?)
東京大学 山口亮特任助教:

軍事力を強化してきたな、という印象です。今回の発射は日米韓へのメッセージ、特に先日の日米韓首脳会談で、アメリカが「拡大抑止」の強化を宣言しました。北朝鮮はそれに対抗しているということもありますが、それ以上に実戦配備に向けたICBMの軌道・移動能力や性能の検証、ミサイル部隊の練度や指揮統制システムの向上・確認なども兼ねていると思うんです。“ガチ”で戦力化を進めているとみられます

(Q.最近、日米、米韓の合同軍事演習に対して挑発的にミサイルを発射してきましたが、それとはまた違ったものですか?)
東京大学 山口亮特任助教:

よりボルテージを上げてきた、それなりの本気度を表に出してきた、という感じです

■ポイント1 落下地点

 今回のミサイルは、通常より角度を付けて高く撃ち上げるロフテッド軌道で発射されました。最高高度は約6000km、飛行距離は約1000km、飛行時間は約69分で、北海道渡島大島の西、約200km地点に落下した。
 山口特任助教は、「落ちた」ではなく「落とした」、精度の高さを確認したという見解だ。

(Q.狙って落としたということですか?)
東京大学 山口亮特任助教:
北朝鮮は、日本海のどこかにあらかじめ設定した標的を狙って撃ったんだと思います。極めて危険な行為だというのは承知の上で、ギリギリのところを正確に撃てるほどの精度があるということのアピール、あるいは検証だとみています

(Q.200キロというと、大阪から名古屋くらいの距離でしょうか?)
関西テレビ 神崎デスク:

そうですね、日本の領土からそれほど遠くないところに落ちています。今回のミサイルは「ロフテッド軌道」という、ほぼ真上に上げたような状態です。上がるのに6000km、下りるのに6000km、横に1000km移動しているので、単純計算で1万3000km飛んでいる。弾頭部分の重さにはよりますが、防衛省の見立てでは、1万5000kmの距離にあるアメリカ本土に届くと性能を誇示している。日本にも脅威ですが、アメリカ本土に届くというアピールになっているんです

■ポイント2 ミサイルの種類

 山口特任助教は、今回のミサイルを火星15の改良型、もしくは火星17型だとみている。今回のミサイルの怖いところは「複数の核弾頭を載せられるミサイルの完成に近づいた可能性がある」点だということだ。

東京大学 山口亮特任助教:
火星17は、超大型のミサイルです。今まで失敗が続いてきたんですが、今回成功したのであれば、それなりに技術が進んできたということを意味します。今までの問題点などを克服できたということです。また、火星17はまだ開発段階であって、MIRV(複数個別誘導再突入体)を搭載する能力についてはまだ課題が残っているんですが、かなり進んできていて、実戦配備も時間の問題だとみています

(Q.核弾頭を複数搭載すると、どういうことが起きるのですか?)
東京大学 山口亮特任助教:
1つのミサイルに複数の核弾頭を搭載すると、複数の標的に核弾頭を落とすことができます。例を挙げると、1つの石を投げつけられた場合は何とか止められるかもしれませんが、4つや5つの石を同時に投げつけられると、1つは止められても他は当たってしまう可能性がある。それと同じような感じで、全て撃ち落とせない、迎撃できないかもしれません

■ポイント3 タイミング

 北朝鮮がなぜミサイルを連発しているのかについて、山口特任助教は、「アメリカは下手なことをしてこないし、中国・ロシアは、目をつむってくれる」からとみている。

東京大学 山口亮特任助教:
アメリカは最近、日米韓の安全保障協力や「拡大抑止」の強化に力を入れていますが、戦力などに関してはまだ曖昧なところがあり、北朝鮮としてはそこを試したいんだと思います。中国とロシアは共に孤立してきていますし、米中対立も激化している。また、北朝鮮との協力を深めています。北朝鮮としては、軍事挑発に出ても中国・ロシアからのお咎めがほぼほぼないのではないか、または援護してもらえるのではと計算していると思います

■次は核実験 山口特任助教の見解

(Q.「北朝鮮は核実験をする、あとは金正恩総書記の政治判断」ということですが…)
東京大学 山口亮特任助教:

核実験場の準備は、ほぼ整っているとみられます。なので、いつ実施されてもおかしくない。いつ核実験を行うかよりも、複数搭載用の小型化がどの程度進んでいるのか、都市や重要インフラを標的とした戦略核なのか、戦場や敵部隊を標的とした戦術核なのかなど、いろいろと見なければいけないところがあります。さらに北朝鮮は『国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画』というのを前倒しで進めていて、核兵器のドクトリン(核の使用法令)のようなものを9月に出しました。急ピッチで各種兵器の開発や実戦配備、軍の運営面の改善などを進めているので、今後もこういった実験や訓練を行う可能性が高く、この緊迫した状況が引き続き高止まりすると考えられます

 ミサイル発射、そして核実験。日本は当分、その脅威に立ち向かう必要がありそうだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月18日放送)