上越新幹線の開業40周年を記念し、新幹線の車両1両を貸し切りにして、新幹線の運転士を目指す兄弟の夢を叶えようというプロジェクトが行われた。このプロジェクトに当選した家族にはもう一つ叶えたい夢があった。
“2つの夢”をかなえたい…プロジェクトに応募した家族の思い
プロジェクトの4日前…
JR東日本 新潟支社 吉間健さん:
新幹線が7時くらいに入線してきますので、新幹線の入線は見ていただきながら…
JR東日本の職員とともに特別企画「ゆめときプロジェクト」の打ち合わせをしていたのは、新潟市東区の米田実花(よねだ・みか)さんです。
そして、電車のおもちゃに夢中になっていたのが今回の主役・諒祐(りょうすけ)くんと、琉晟(りゅうせい)くんの兄弟。
母・実花さん:
本当に朝から夜寝るまでずっと2人で仲良く、時々ケンカもするが、ずっと遊んでいる
学生時代に車内販売のアルバイトをしていた実花さんの影響もあり、新幹線が大好きな2人。そんな2人の夢が「新幹線の運転士」になること。
母・実花さん:
こんなに大好きだし、「新幹線の運転士さんになりたい」と、毎日のように言っている
息子たちの夢とともに実花さんには叶えたい夢がもう一つあった。
母・実花さん:
難病で、なかなかお出かけができないという状態で…
夫の誉史さんは7年前にALS・筋萎縮性側索硬化症を発症。この病気は全身の筋肉が次第に動かなくなる国指定の難病で、明確な治療法は見つかっていない。
病気も進行し、家族みんなで出かけるのも難しくなっていたのだ。
母・実花さん:
家族4人で出かけたのは「最後いつだっけ」と、思い出せないくらい。パパも旅行を励みに「毎日、闘病を頑張れる」と言っている
3年ぶりの家族旅行へ… 旅はサプライズの連続!?
いいよいよ迎えたプロジェクト当日。
母・実花さん:
病気になってから、なかなか外に出かけるなんて諦めていたところもあったが、夢のような幸せな2日間が始まるんだろうなと思うと、とても楽しみ
こちらもワクワクが止まらない兄弟。
弟・琉晟くん:
新幹線になんか名前書いてある
兄・諒祐くん:
30って書いてあるんだよ
すると早速、兄弟に制服のプレゼントが贈られた。
JR東日本 新潟支社 吉間健さん:
今から新幹線の運転士になれる制服をプレゼントします
運転士の制服を着て、特別な旅の始まり!ホームに向かった家族の目に飛び込んできたのは、電光掲示板に映る諒祐くんと琉晟くんへのメッセージ。
このメッセージを見ていると…
兄・諒祐くん:
着いた?
弟・琉晟くん:
緑と白か?緑と白!
今回の旅の舞台、「なつかしのあさひ号」がホームに到着した。
貸し切りの車内は、まさに夢のひとときを演出する空間に。サプライズの連続に誉史さんにも笑顔が見られた。
JR東日本 新潟支社 吉間健さん:
心配事も今のところ、もう全くない。お客様に楽しんでいただければそれがいい
そして、新幹線は新潟駅を出発!その頃、実花さんは…
母・実花さん:
失礼します。お茶にお弁当はいかがですか?
学生時代以来の車内販売のサプライズ!手渡すお弁当には、諒祐くんが描いた新幹線の絵も。大好きな新幹線で家族と一緒に食べるからこそ味も格別だ。
夢のようなひとときにはデザートも必須。兄弟の前に現れたのは、なんと新幹線の形をしたケーキ!
母・実花さん:
とってもおいしいよ〜
ケーキが大好きだという諒祐くんだが、この日ばかりは、ふだん見られない新幹線からの車窓のほうが気になってしまう様子。
元気をチャージしたら、いよいよ子どもたちの夢を叶える時間!まずは車掌が行う「スタンパー」を体験する。
車掌:
せーのっ!上手!
この日のために用意された特別な切符にスタンプを上手に押した2人。
そんな2人のために、こんな粋なプレゼントも…
運転士:
大きくなったら、一緒に運転しようね
JR東日本 新潟支社 吉間健さん:
行き先は運転士で、運転士になる席はすでにご予約いただけていますという意味で指定席とさせていただいています
特別なプレートを手に2人も嬉しそう♪
母・実花さん:
子どもたちにとっても、きょうが人生の1ページになったというか、貴重な体験になっていると思う。本当に。
車両から聞こえてきたのは…? お父さんにも自然と笑みが
ここで、大役を任されている諒祐くんはお母さんと琉晟くんとともに、ある場所へ。お父さんが車両で待っていると、聞こえてきたのは…
〈車内放送〉兄・諒祐くん:
ごじょうしゃ、ありがとうございます。なつかしのあさひごう、おおみやいきです。つぎのていしゃえきは、くまがやです
諒祐くんの車内アナウンスだ。この日を夢見て…そして、目標にして闘病に励んでいた誉史さんに自然と笑みがこぼれる。
(Q.楽しいですか)
父・誉史さん:
ありがとうございます
母・実花さん:
ずっとこの日を心待ちにして、毎日リハビリとか、つらい治療とかあるが、これを励みに頑張ってきた。大切な思い出が一つ増えたので、これからも頑張っていこうと思う。頑張れる。「この時間がいつまでも続けばいいな」と思うくらい、夢のひとときを過ごさせていただいている
大宮駅に到着後は鉄道博物館へ。新幹線が大好きな2人がずっと来たかった場所だ。
夢のひとときを楽しんだ子どもたちにとっても、この日は忘れられない1日となったようだ。
兄・諒祐くん:
楽しかった~!
弟・琉晟くん:
楽しかった~!
母・実花さん:
また夢に一歩近づいたというか、貴重な体験をさせていただけて本当にありがたい。夫も「また、あしたから頑張れるね」と言っていた
プロジェクトの翌日も家族で旅行を楽しんだ米田さん一家。動物園に行ったものの早々に切り上げ、この日も鉄道博物館に行ったそう。
大切な家族と大好きな新幹線で過ごした「特別な旅」は忘れられない思い出の1ページとして刻まれた。
旅行後に届いたメッセージ 「大きな励みに」
そして後日、感想を伝えたいと、誉史さんが実花さんと協力してつくったメッセージが届いた。
父・誉史さん、母・実花さん:
この映像は一生の宝物です。この先、子どもたちがつまずいてしまった時も、この映像を見返して夢に向かって進んで行くことができる、そんな内容になっていました。また気持ちも新たに家族で頑張っていける、大きな励みになりました。本当にありがとうございました。私たちのために時間を作っていただき、心から感謝申し上げます。
いつかお父さんとお母さんを乗せる運転士に!その日を夢見て…米田さん一家の旅は続く。
(NST新潟総合テレビ)