いよいよ始まる、FIFAワールドカップカタール2022(W杯)。

長友佑都はフィールドプレイヤーとして歴代最多、4大会連続W杯日本代表に選ばれた。

ベテランと言うべき年齢に差し掛かった長友の体を支えているのは、専属シェフ・加藤超也さんの存在だ。

長友自身が「最も重要な要素」と語る“食”を任された加藤超也さんは、前回のW杯ロシア大会から今大会までは“徹底”の4年間だったと話す。

前編で2人の出会いと、怪我をさせない食事について語った加藤さん。後編では今大会を見据えた長友選手と加藤さんの“食”の取り組みについて聞いた。

(【前編】インテルで話題になった長友佑都の“専属シェフ”。4大会連続W杯出場の男に怪我させない献身食事ケア

「肉」から「魚料理食べたい」に変化した4年間 

――長友選手が日本代表で遠征に行く際は何かアドバイスをするのですか?
最初の頃は頻繁に連絡を取り合っていました。食事の写真が送られてきて、それについて「こういうものをもう少し取り入れましょう」など、アドバイスするといった感じです。

ただ、今はもうほとんどないですね、本人がこれまでの知識の蓄積で、何をどれくらい食べたらいいのか全部分かっているので、本人に託しています。

2017年日本代表として国際Aマッチ100試合出場を達成
2017年日本代表として国際Aマッチ100試合出場を達成
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――2018年のロシア大会後に、今大会を見据えて何か変えたことはありますか?
如実に変わったのは、お肉の料理からお魚の料理にほぼ変わった点です。

イタリアの頃は(※加藤さんが専属シェフになったのは2016年、セリエA・インテル所属時から)、結構お肉が好きで食べていましたし、焼き肉を食べたいなどリクエストもありました。ただ、年齢を重ねたこともあるとは思いますが、体質が大きく変わっていったのかもしれません。

W杯のためにカタールに出発する2週間くらい前からサポートにも入っていましたが、8割〜9割魚料理でしたね。大体聞くと「魚料理食べたい」と言っていました。

どうやらそこには長友選手自身のある“確信”も影響していたようだ。

「本人もこれまでの積み重ねで、魚のたんぱく質、油によって自分のコンディションが維持できて、筋肉系の怪我の予防になることを理解していていました。そこで、これまでの取り組みを“変える”必要はなく、むしろ“徹底”することに変化した4年間だったと思います」

「もっと早く食という武器に出逢いたかった」 

――長友選手が“食”を意識し始めたのは30代からですか?
ちょうど29歳くらいですかね。本人も言っていたのは「20代でしっかり食のことを理解して取り組んでいたらバケモンになれてた」と冗談抜きな表現で話していたので、事実本当にそのくらい“食の力”を本人が感じているんだなと思います。

長友選手はイタリア、トルコ、フランスと海外移籍を経て、2021年に古巣のFC東京に復帰。

ただ新型コロナウイルスの影響もあり、加藤さんもこれまでのようなサポートを続けるのが難しくなっていたようだ。

マルセイユや帰国後は長友選手の妻・平愛梨さんと連携してサポート
マルセイユや帰国後は長友選手の妻・平愛梨さんと連携してサポート

「フランスのリーグアン・マルセイユに所属していた時は、コロナのロックダウンで現地でサポートすることができませんでした。

そこで奥様と連携し、自社でレシピサイトを運用し、そこに僕自身の持っているレシピをアップして、奥様にもレシピ検索していただきながら作っていただき、写真に収めておいてもらうという形にしました。帰国してからも感染リスクがあるので、奥様と引き続き連携しながらサポートしました」

加藤さんがこれまで提供してきたレシピ数は約1000品以上にも上るという。 

長友が忘れない“感謝の気持ち” 

2016年から6年に渡って専属シェフとしてサポートしている加藤さんは、長友選手のある気遣いに心を動かされたと話す。

「感謝の気持ちを忘れないと言いますか、『おかげさまで』という風に言ってくれるんです。それも毎回です。

料理を提供して最後、帰る時に『おかげ様で今日も凄く良い栄養が取れました』と言ってもらえる度に、改めて専属シェフとしてサポートさせていただいて本当に良かったなと思います」

――世界的なトップアスリートを支える責任というのはどう感じていますか?
重たいですね。常に自分の中で言葉として置いているのは“一心同体”という言葉です。

自分自身も責任を負うような気持でいるというか、行動、対応、料理含め全てにおいて心構えとして、常に自分の背景に長友佑都という人間が見えるような人でいなければいけないと思っています。

本人はすぐ察するんです、例えば新しいメニューや調理で出すと「おっ勝負してきてるね!」という感じで喜ぶんですよ。

長友選手は一言で言うと常に進化を求めてスポンジのように吸収して、いつでもフレッシュな気持ちで前に進んでいく人。それは僕自身もサポートさせてもらう人間として、同じように年齢を重ねるからこそ、常に吸収して、フレッシュで成長している姿を、料理や姿勢で見せていかないといけないと心掛けています。

――長友選手が4大会連続でワールドカップ日本代表に選ばれたことについては?
本当に実現したなと、ほっとした気持ちが大きかったですね。まずはようやくスタートラインに立てたと。

本人ともやり取りしましたが「楽しんで暴れてくるわ」って。もう楽しんでほしいです。

カタールに出発前のサポートで長友とツーショット
カタールに出発前のサポートで長友とツーショット

以前、長友選手は「自分が活躍してスポットライトを浴びることによって、それをサポートしてくれている人たちも注目されるような人間になりたいし、それが恩返しになると」と語っていたという。

自身4度目のワールドカップに挑む長友選手、たくさんの支えてくれた人たちの想いも乗せて、日本のために世界で暴れ回る姿に期待をしたい。

木下康太郎
木下康太郎

フジテレビアナウンサー。
神奈川県横浜市出身、上智大学卒。
2010年フジテレビ入社。
主に情報、報道番組を担当。
とくダネ!、知りたがり!、めざましテレビ、めざましどようび、グッディ!を担当し、現在は日曜報道THE PRIME・情報キャスター。
厚生労働省・国交省の記者も兼務している。