臨時国会の召集から1カ月超。物価高対策が期待されたが、旧統一教会問題が中心で協議はスムーズに進まない。課題山積の岸田政権は会期末までに国民が納得する対策を講じられるか。BSフジLIVE「プライムニュース」では読売・朝日・産経3紙の政治部長を迎え、見通しを伺った。
旧統一教会問題、被害者救済の立法に向け岸田首相に焦りか
この記事の画像(16枚)新美有加キャスター:
旧統一教会問題を受け、岸田総理は悪質な献金などの被害者を救済する新法について「今国会を視野に、できる限り早く法案を国会に提出すべく最大限の努力を行う」と述べた。
村尾新一 読売新聞政治部長:
問題収束の兆しが見えない中で支持率低下が続き、外遊前にと野党から期限を切られて突き上げられた中、踏み込まざるを得なかったのでは。
林尚行 朝日新聞政治部長:
駆け込み表明に追い込まれたと思うが、表明の仕方が岸田さんらしく中途半端。「視野に」「できる限り」「最大限の努力」と留保の言葉が多い。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
支持率はかなり気にしていると思う。今何らかの結論や方向性を示して動かなければさらにダメージを受ける焦りがあり、ぎりぎりのタイミングだった印象。与野党協議の結論待ちでは間に合わないと。
反町理キャスター:
特に公明党からは非常に慎重な姿勢が見える。その中で山口代表を官邸に迎え話をつけた。いきなり党首同士。与野党協議より先に道をつけている印象だが、岸田総理の焦りか。
村尾新一 読売新聞政治部長:
政府も一貫して検討しており、お見合いのようなところがあっただろう。総理がこう決断して動いたことは評価していいと思う。
林尚行 朝日新聞政治部長:
前に進めようとする方向性は評価できるが、段取りに疑念。行政府の長である総理大臣が、野党を飛び越える形でゴールをつくると言っていいのか。国葬もそうだが、この政権は国会と内閣の関係性でやや簡単に踏み越える部分がある。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
岸田総理の立場では、今回の与野党協議はひとつも得がない。野党は、決裂すれば与党が消極的すぎると攻撃でき、形ができれば自分たちの手柄にできる。個人的には、野党のペースをひっくり返そうと岸田総理が巻き返しを図ったと思う。
支持率低迷の岸田政権 「不支持率」の変化に注目
新美有加キャスター:
読売新聞の最新の世論調査では岸田内閣の支持が36%、初めて30%台に。不支持は4ポイント上がり50%で、初めて50台を記録。支持率は岸田政権発足後最低の数字。
村尾新一 読売新聞政治部長:
10月には概ね下げ止まりのようになっていたが、大きく下がった。総合経済対策は評価する人が62%と高かったが政権浮揚にはならず。自民党支持率も33%となり政権発足後最低。やはり旧統一教会問題、特に山際前経済再生相を党の新型コロナ感染症対策本部長に起用したのが響いたという指摘がある。
林尚行 朝日新聞政治部長:
ポイントは不支持率。50%に乗った不支持率は、なかなか戻ってこないと思う。永田町の常識では山際前大臣の起用は必ずしもイレギュラーではないが、非常に悪いメッセージだった。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
岸田内閣の強みは低い不支持率だった。岸田総理は政敵がいないと言われる珍しい政治家。世論調査を見ても岩盤不支持層が少ない。だが、裏を返せば消極的な支持に支えられてきた。歯車が狂えばこの層は離れる。低い不支持率をどう維持するか。
反町理キャスター:
村尾さんは我々の事前取材に、「物価高が顕著となり支持と不支持が逆転。景気対策で反転攻勢できるか」とご回答。
村尾新一 読売新聞政治部長:
とにかく経済対策を盛り込んだ第2次補正予算の早期成立を目指すこと。ただ、円安や物価高の解決は一朝一夕にはいかず難しい。
反町理キャスター:
林さんは、新型コロナ、経済、安全保障、旧統一協会問題、安倍元総理の国葬、原子力政策、衆院選挙区の10増10減、「マイナ保険証」義務化を「岸田政権8つのリスク」と。
林尚行 朝日新聞政治部長:
国民の賛否が分かれるもの、逆風が強そうなものがこの8つ。一つ一つ本当にクリアできるか。できなかった場合、それぞれが絡み合って岸田政権を沈めていく可能性がある。
新美有加キャスター:
大谷さんは事前取材に「岸田総理のリーダーシップや明確なビジョンが見えない」とご回答。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
この1〜2年の難局でのかじ取り・判断には一定の評価がされるべき。だがどうしても心に響かない。難局にある日本はこういう我慢をすればこういう未来が開ける、この政策の先にはこれがある、それを自分の言葉で語ってほしい。
野党支持率は上がらず「自民党の方がまだマシ」か
新美有加キャスター:
自民党の政党支持率は10月の40%から7ポイントダウンで33%、立憲民主党は1ポイントアップの6%。日本維新の会は変わらず5%。支持政党なしは6ポイント増の43%。一強多弱の状態が続く。なぜ野党の支持率が上がらないのか。
村尾新一 読売新聞政治部長:
失礼だが「自民党の方がまだマシだ」と国民から思われているのでは。特に安全保障、原発、消費税など国家の根本政策に曖昧さが残り、政権担当能力が弱いと。特に立憲民主党は、民主党政権の失敗への批判を引きずっている面も。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
自民党対第二政党の野党の形なら国会にもかなり緊張感は出ると思うが、野党にちょっとパフォーマンスの印象が透けて見えてしまうところにも、政権運営を委ねていいのかと疑念があるのでは。
林尚行 朝日新聞政治部長:
自民党内で疑似政権交代が起こっていた55年体制の令和版が定着し始めているのでは。今回、安倍さんを継承した菅さんから宏池会の岸田さんという形で、疑似政権交代を果たしたと言える。国民の側のそれを求める意識が一強多弱の支持率になっているのでは。政権与党として生き残るしたたかさ、自民党はうまい。
反町理キャスター:
立憲の枝野前代表が、自らのYouTubeで「総選挙で時限的とはいえ消費税の減税を言ったのは間違いだった」と発言。党首として総選挙を率いた人のこの発言はアリなのか。
村尾新一 読売新聞政治部長:
批判を承知で発言したと思うが、民主党の特に野田政権を理想の姿と捉え、そこへの回帰を図っているのでは。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
この発言、前後の流れがよくわからないが、やはり政権担当の意欲を示すための発言という感じはする。
林尚行 朝日新聞政治部長:
枝野さんは自分の立ち位置をリセットしたのでは。前回の総選挙の一番のポイントは、消費税廃止を言う共産党との連携だった。そこに寄った立ち位置を戻したと思う。次の選挙まで時間があるので、今のうちにと。
解散総選挙は広島サミット後の可能性 ポスト岸田は?
新美有加キャスター:
解散総選挙の時期はいつか。皆さんの見解は、村尾さんは2023年のサミット後か2024年9月の総裁選直前。林さんと大谷さんもサミット後と。
村尾新一 読売新聞政治部長:
今は解散できる状況ではない。2023年5月の広島サミットで成果が上がれば、その勢いで解散に踏み切ることはある。だが4月に統一地方選があり、議席に影響すれば解散どころでなくなることも。
林尚行 朝日新聞政治部長:
サミット後の解散をするのが岸田さんかポスト岸田か。岸田さんがサミットで支持率を上向かせる前提は通常国会をうまく乗り切ること。逆に言えば、サミットで勇退となり選挙に勝てる新総裁で、ということも考えられる。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
統一地方選を乗り切れば、最速ではサミット後、その後は自民党総裁選まで何とかやりながらタイミングを見計らっていく政権運営になるのでは。
反町理キャスター:
ポスト岸田について、村尾さんは茂木幹事長、林外相、高市経済安保相、河野消費者相。林さんは林外相、茂木幹事長。大谷さんは女性首相と。
村尾新一 読売新聞政治部長:
次の衆院選まで3年近くあり、まだ岸田おろしも目立たず、絞り込む段階ではない。国政選挙が迫る中で党内が混乱していれば、意外な方が出てくることはあり得る。
林尚行 朝日新聞政治部長:
岸田政権が選挙もできず長期政権にならない場合という前提では、宏池会で岸田総理の後継役である林外相と、麻生元総理を味方につけ多数派を形成したい動きが見える茂木幹事長。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
期待を込めて、日本でも女性の政治的リーダーが出てほしい。そもそも、もうそういう時代じゃなく、本当に実力とリーダーシップがあれば男女関係ないが。ただ、流動的な変革期で局面を変えようとするとき、女性が出てきてもいいのかなと。
反町理キャスター:
産経新聞的には、他の男性国会議員よりも、高市さんの保守性に賭ける部分がある?
大谷次郎 産経新聞政治部長:
有資格者ではある。
旧統一教会問題の報道姿勢を3紙政治部長に問う
新美有加キャスター:
視聴者の方からのメール。「貴社の報道姿勢が政治を不安定にさせている。旧統一教会系の政治家の魔女狩りがそんなに重要か。関係団体の会合に参加していただけで大臣を辞職に追い込むマスコミは異常」。
大谷次郎 産経新聞政治部長:
私個人は、魔女狩りをしたり追い込んだ記憶はない。我々は正しいものを正しく報道し、こうあるべきだという主張をすることに尽きる。
村尾新一 読売新聞政治部長:
ご指摘は受けとめる。弊社も冷静かつ客観的に抑制的に事実関係を伝えることを心がけており、引き続き努めていきたい。
林尚行 朝日新聞政治部長:
魔女狩りのつもりは全くない。最初の段階で自民党が点検をしたもの、どこから先がアウトかという自己評価をしなかったところから問題の悪循環が始まっている。
(BSフジLIVE「プライムニュース」11月8日放送)