清水港の海中で熟成されたビール200本を引き揚げ

お酒を海の中に沈めて熟成させると味はどう変わるのか?
東海大学海洋学部(静岡市)の合志明倫客員准教授らの研究グループはこうした研究を進めている。10月20日には、地元のビール工房の協力を得て、静岡県の清水港で深さ3~4メートルの海底に沈められ、3カ月ほど熟成させたビール200本が引き揚げられた。

引き揚げられたビール(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)
引き揚げられたビール(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)
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ビールの瓶には、貝や海藻が付着していたが、開栓した1ケース20本の中身については、海水が入るなどの影響はなく、無事であることが確認された。研究グループはこれまでにも、日本酒やワインを海に沈めて、熟成させた研究を行っていた。

今回、ビールの熟成は初めてということだが、味のほうはどうだったのか?商品化はできそうか?東海大学海洋学部の合志明倫客員准教授に詳しく話を聞いてみた。

新たな海底の利用方法として期待される

――なぜビールを海の中で熟成させる研究を始めた?

かつてから沈んだ船から引き上げられるお酒の熟成が進み美味しいと言う説や、漁師さんの中には自分でお酒を沈めて熟成させる人が多くいるなど海底熟成は今に始まった話ではなく昔からの知恵として行われて来た経緯がある。しかしながら、本当に変化があるのか、またどのような変化があるのかを実際に数値で見られないかということから東京にあるライターの老舗ライテック様からの研究費獲得を期に実験を行うことにしました。

3年程前から宮古島での泡盛(多良川酒造様)、2年程前は清水港でワイン(中伊豆ワイナリー様)と日本酒(三和酒造様)を沈めて実験を行なってきたことから、今回は地元のクラフトビールを材料に新しい付加価値の創造にクラフトビール会社と一緒に実験をスタートさせました。

※宮古島で熟成の様子(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)
※宮古島で熟成の様子(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)

陸上保管には大きな倉庫が必要で場合によっては室温を管理する為に大きなエネルギーを必要とします。利用されていない海底の新しい利用方法や占有料金の安さに加え、付加価値や副次効果が得られること等から新たな海底の利用方法としての期待があります。


――地ビール200本はすべて無事だった?

まだ全てのビールを開栓していませんが今のところ1ケース20本は無事でした。

熟成させることで、深みのある味わいに!

――海中熟成ビールを飲んだ味の感想は?

微発泡ビールの発泡が凄く良い感じで進み、増炭酸と甘みが豊かになって、深みのある味になっていたと感じました。もちろん海底にあったと言うロマンも含まれていると思いますが。


――周りの熟成ビールを飲んだ人たちの感想は?

みなさん飲んだ後は思わずニヤッと笑ってしまう程、最初の口当たりが柔らかくなっていると感じたようです。


――ワインや日本酒を沈めた時の味はどうなった?

泡盛の場合は杜氏さんにも参加いただき沈酒の物に関して古酒に近い味の評価をした結果を得られました。ワインは赤ワインはポジティブに熟成、白ワインは酸味が強くなりやや発泡が起こってしまうなどネガティブな結果。日本酒はまろやかになるといった結果より現在プロダクション生産に向けて地元有名酒造が沈酒中です。

※宮古島での引き揚げの様子(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)
※宮古島での引き揚げの様子(画像提供:東海大学海洋学部 合志明倫客員准教授)

発売は未定だが面白いものになりそう

――他の場所で沈める予定はある?

我々は今のところ別のところで沈める予定はありませんが、西伊豆や日本全国の他の場所でも沈酒は行われています。


――海中ビールはいつごろ発売できそう?

発泡が強くなりすぎていたり、沈殿物も発生したりとまだ解決しなくてはならない事項があるのでまだ未定ですが、面白い物になりそうです。

 

ロマンを感じる海中熟成ビールだが、味も口当たりが柔らかくなると好評のようだ。近い将来、商品化され我々の手元に届くのか注目したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。