生涯で2人に1人がかかるといわれる病気「がん」。そんな中、卵巣がんを患い余命宣告を受けた福井県内の50代の女性が、2022年9月動画配信サイトでがん患者の苦悩や日常を発信し始めた。

ショックでふさぎ込んだ時期もあったが、自分の体験を通して早期発見と早期治療の大切さを訴えたいと立ち直った。

「スローモーションのように光景が浮かんだ」 突然の余命宣告...生きている証を娘に

坪川由美子さん:
ステージ4がんサバイバーのゆみねーです

慣れない手つきで配信用の動画を撮影するのは、福井県に住む坪川由美子さん(51)。2021年、「ステージ4bの卵巣がん」と診断された。

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坪川さんは2021年4月、仕事中に突然会話が理解できなくなった。病院で調べると脳に腫瘍が見つかり、摘出手術を受けた。ただそれだけでは終わらなかった。がんはすでに転移し、卵巣をはじめ子宮、小腸、大腸などの腹部に散らばっていた。そして医師から余命1年の宣告を受けた。

坪川由美子さん:
スローモーションのように光景が浮かんで、え?ってなって。頭が真っ白な状態。冷静なわたしとそうじゃないわたしがいて。涙が出てきて覚えていない

5年後の生存率は20%。1年以内に亡くなる人が多い。余命宣告を受けたあと、生活は一変した。ふさぎ込み毎日泣いて過ごしていたという。
絶望の淵に立たされたが、余命宣告を受けた3日後、自らの経験をブログで発信し始めた。

坪川由美子さん:
生きている証を娘に残したいという気持ちがあって。友達に、もしわたしに何かあれば娘に伝えてほしいと

生きることに前向きになれた理由。それは電話で毎日母親を励まし続けてた娘の存在があった。

坪川さんの娘 まやさん:
ポジティブな人だったので、次はわたしが支える。お母さんを励まして、ここを乗り越えれば明るい未来があるとポジティブな言葉をかけていました

自らが励まされた経験をもとに「次は自分が勇気づけたい」 

ブログを始めたことで、心境にも変化が現れた。

坪川由美子さん:
心が軽くなった。ふさぎ込んでいたものを表に出すことで、今までのわたしに少し近づいた

2021年12月、手術で左の卵巣、子宮、小腸と大腸の一部を切除した。ただ今もなお、抗がん剤の治療は続いている。この日は主治医との診察に訪れた。「歯医者に行きたい」との坪川さんの問いに、主治医は「採血の結果を見て決めましょう。出血が止まらなくなると大変なので」と答えた。

抗がん剤治療では、手足のしびれを予防するため、冷却グローブを装着する。「すでに冷たい。もう我慢できんかも」と坪川さん。さらに口内炎予防のため、氷で口を冷やし、冷たさに耐える。ただ、「これを乗り越えて、1週間つらい副反応を乗り越えると、好きな仕事や友達とでかけたりとかできるので頑張ります」と笑顔を見せた。

人生、悔いなく生きる。その決意表明として2022年9月、自ら闘病で感じたことをYouTubeで配信し始めた。誰にも相談できずに悩んでいる時、がん患者が自ら情報発信している姿に励まされたからだ。次は自分が勇気づけたいと一念発起。振り返れば、余命宣告から1年半が過ぎていた。

坪川由美子さん:
去年は死にたい、生きている意味ある?とか自分に問うことがあった。ただ今は欲がでてきて生きなきゃという思いが強い。娘の結婚とか出産とかを見届けたい。自分が体験したことを伝えて、みなさんもそうならないために早期に発見する取り組みを伝えたい

登録者数は現在630人。YouTubeを始めてから、全国各地のがん患者との交流も生まれ始めている。

坪川さんの娘 まやさん:
がん患者のコミュニティーを作っていることはいいこと。行動しないと変わらないということをお母さんから学んだ

「がんになることは悪いことではない。悩んでいるのはあなた一人じゃない」と坪川さんは呼びかける。

坪川由美子さん:
ステージ4がんサバイバーのゆみねーでした。ほんならまたの。バイバイ。ありがとの

(福井テレビ)

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