岡山大学病院の医師が聴覚障害者の命を災害などから守ろうと、直接、音の情報を届ける新しい機器の開発に取り組んでいる。
3年後の完成に向けてプロジェクトは本格化し、期待も高まっている。

10月、東京を訪れたのは、岡山大学病院耳鼻咽喉科の医師・片岡祐子さん。

岡山大学病院・片岡祐子医師:
きょうは開発の打ち合わせ。前に向けて進めるところ

片岡さんは9月に岡山大学病院に開設された聴覚障害者の支援を専門に行う施設「聴覚支援センター」の実務担当者だ。

岡山大学病院・片岡祐子医師
岡山大学病院・片岡祐子医師
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これまで、聴覚障害のある子供たちの声を聞き取り、学校で必要な配慮をまとめた冊子を作り配布するなど、聴覚障害者への理解を求めて活動を続けてきた。

片岡さんが今、大きな目標にしているのが、災害時に聴覚障害者の命を守るための新しい機器の開発だ。

岡山大学病院・片岡祐子医師:
何かを作り出すことで、教育でも、世の中に還元できて、難聴者の役に立てばいい

緊急事態の音を識別 新しいアプリを開発

技術開発を担うのは、大手電機メーカー「富士通」。

富士通 Ontennaプロジェクトリーダー・本多達也さん:
大きい声出すと、強めに振動して、小さいと小さく。音の強弱が分かる。ボタンを押すと押した瞬間に振動するので、みんなでリズムを合わせたり太鼓をたたく時、ダンス踊る時に一緒にリズムをとれたり…

富士通 Ontennaプロジェクトリーダー・本多達也さん(真ん中)
富士通 Ontennaプロジェクトリーダー・本多達也さん(真ん中)

本多さんは、全国の聾学校で活用されている「Ontenna(オンテナ)」という機器の開発者。

「Ontenna」は、音の強弱を振動で知らせるもので、リズムをとったり、みんなでタイミングを合わせる時などに使われている。

今回の開発では、「Ontenna」の技術を進化させ、新しい機器を作り出す。

情報技術開発 AI&データマネジメント推進部・日吉顕太さん:
救急車の音が鳴ると、緊急車両という形で表示されるアプリ

新しいアプリを開発して、緊急事態を知らせる音の種類を識別し、命を守るための音の情報を届けようという。

さらにこの日、東京で片岡さんが向かったのは…。

研究・開発が進まない分野に光を

沖縄出身のアイドルグループ「SPEED」のメンバーで参議院議員の今井絵理子さん。

参議院議員・今井絵理子さん
参議院議員・今井絵理子さん

今井さんの長男は、生まれた時から聴覚に障害があり、今井さんは、子育てをしながら手話を覚え、障害者施設などでボランティア活動を続けてきた。
彼女の秘書も聴覚障害者。国会議員として、国会で初めて手話を交えて質問したほか、防災や障害者支援などの施策にも力を入れている。

国会で手話を交えて質問する今井議員
国会で手話を交えて質問する今井議員

参議院議員・今井絵理子さん:
聴覚障害者に対しての災害時情報伝達手段というのが、まだまだ研究・開発が進んでいない現状があった。何かできないかと、それで片岡さんが研究しているということで

そんな今井さんに、片岡さんは新しい機器の開発について説明する機会を得た。

岡山大学病院・片岡祐子医師:
避難所など含めて支援してもらう情報のやり取りは、どうしても音声を使ってのコミュニケーションがメインになるので、なかなか難しい。これを何とか聴覚障害者が乗り遅れないようにしようと作っている

参議院議員・今井絵理子さん:
本当にうれしい。なかなか光の当たらない分野、障害者福祉の関係って。そこにスポットライト当てることは、実は障害のない人にも恩恵があると思っている

片岡さんが完成を目指す3年後の2025年には、世界中の聴覚障害のあるアスリートが集う「デフリンピック」が日本で開催される。

岡山大学病院・片岡祐子医師:
これからやっていくことは、1つの発信であり挑戦。それでも可能性は秘めている。ぜひ前向きに取り組みたい

障害の有無に関わらず、安心して暮らせる社会を実現するための取り組みが進んでいる。

(岡山放送)

岡山放送
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