中越地震から18年。被災による存続の危機を乗り越え、伝統をつなぐ新潟県長岡市山古志地区の牛の角突き。近年では新型コロナ禍や飼料の高騰に直面している。こうした中、地区の外からも若者たちがボランティアに訪れ、開催をもり立てている。

「山古志が大好き」 ボランティアを始めた高校生

9月18日、長岡市山古志地区の闘牛場では開催に向けた朝礼が行われていた。この場で山古志闘牛会・会長の松井富栄さんが紹介したのは、中越高校の3年生で写真部に所属する栗林璃世さんと阿部心乃さん。

中越高校・写真部 阿部心乃さん(左)と栗林璃世さん(右)
中越高校・写真部 阿部心乃さん(左)と栗林璃世さん(右)
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中越高校の写真部は2017年から「写真甲子園」の出場に向け腕を磨こうと、牛の角突きに通うように。取り組みの撮影と運営のボランティアは今も続いている。

1年生の時から通っている2人。テントの設営や販売するグッズの陳列など、頼まれる前に次々と作業をこなす。しかし、部活動の一環とはいえ、この日は3連休の中日。なぜ、ボランティアに通うのだろうか。

中越高校 栗林瑠世さん:
山古志の方と交流して、色んな話を聞いたりして、山古志が大好きになった。みんなすごく温かくて、色んな話をしてくれるので、こっちも笑顔になる。そういうところが好き

中越高校 阿部心乃さん:
普通に高校生活では得られない経験ができることが魅力

山古志にひかれる若者たち 闘牛会会長は“角突きの発展”に期待

昼ごろになり、客席が少しずつ埋まってくると、別の若者の姿が。中越高校の2年生で放送部の関苺花さんは、全国大会で発表する題材として闘牛関係者を取材したことをきっかけに、2022年5月から場内アナウンスのボランティアを行っている。

中越高校・放送部 関苺花さん
中越高校・放送部 関苺花さん

関さんもまた、このボランティアに自分なりの価値を見出していた。

中越高校 関苺花さん:
自分の地域のものを大切にしている人たちに出会えたというのは、すごく貴重な体験

そして、写真コンテストの写真の張り出しや入場する勢子の手の消毒などに精を出していたのは、長岡市の団体職員・高木陽菜さん。観客として角突きを訪れるうち、次第に興味が湧き、2022年の春からボランティアとして参加している。

ボランティアの高木陽菜さん
ボランティアの高木陽菜さん

高木陽菜さん:
できるところからみたいなスタンスで。できないことはできないけど、なんでも言っていただければ、できます。やります!

若者が山古志地区の人や角突きにひかれ、自発的に取り組む姿に闘牛会の松井さんは。

山古志闘牛会 松井富栄 会長:
牛の角突きに興味・関心があって、楽しみたいという人が集まってくれることが、これからの山古志の角突きの発展につながる

牛の角突き
牛の角突き

「闘牛の魅力広めたい」 困難続く牛の角突きに希望の光

ここに至るまで、度重なる存続の危機を乗り越えてきた牛の角突き。

山古志闘牛会 松井富栄 会長:
中越地震が起きた10月23日は毎年、牛飼い仲間が集まって、ここで手を合わせる

中越地震で亡くなったウシを供養する「牛魂碑」。

地震で倒壊した牛舎の下敷きになるなどして角突きの牛は約70頭から半分以下に。全村避難を強いられる中、生き残ったウシは他の地域に預けるなど、伝統の存続に向け奔走する日々だった。

そして近年では新型コロナ禍による初場所の開催中止、観客の大幅な減少に加え、飼料の高騰が大きな負担になっている。

それでも中越地震から18年。その伝統を守りたいと願う人の輪は、山古志地区の外にも確実に広がっている。

中越高校 栗林瑠世さん:
山古志の闘牛の魅力をもっと大勢の人に知ってもらって、山古志がさらに活気であふれたらいい

地域で守ってきた伝統に新たな力が加わって、山古志の牛の角突きを希望の光が照らす。

山古志闘牛会 松井富栄 会長:
この牛の角突き千年の歴史をまた一年一年繰り返しながら、皆さんに楽しんでいただける角突きを今後とも行っていきたい

(NST新潟総合テレビ)

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