不要なものに手を加え、新たな価値を持つものに再生させる「アップサイクル」。長野県須坂市では、“農家に眠るリンゴの木箱”を棚やポストに生まれ変わらせるプロジェクトをスタートしている。プロジェクトを手がけるボランティアグループは、地域ぐるみの活動にすることを目指している。
地域に眠る「リンゴ箱」を再生
少々、武骨だが、木の温かみが感じられる椅子。使われているのは、木製の「リンゴ箱」だ。

軽い樹脂製のケースが主流となり、かつて使われていた木箱は今、農家の倉庫で眠っている。
回収しているのは、須坂市の三溝清洋さん(63)たちだ。

三溝清洋さん:
年数もたってるけど(リンゴ箱が)しっかりしてる。もったいない、ほんとにもったいないよ
リンゴ箱は市の中央地域公民館へ。三溝さんは元教師でこちらの館長。ボランティアグループをつくり、2020年から公民館を拠点に不要なものに手を加え再生する「アップサイクル」に取り組んでいる。
活動をする中で、「これは」と着目したのが地域に眠るリンゴ箱だった。

三溝清洋さん:
須坂市はリンゴ栽培が盛んで、各農家さんにいらなくなったリンゴ箱があるので、材料が譲り受けることができる。それを次世代につなげていこうと

三溝さんたちは600個から700個のリンゴ箱を回収し、少しずつ棚やポストに生まれ変わらせてきた。
三溝清洋さん:
不要物も一工夫すれば、一手間かければ、楽しめるんだなと。しかも地球に優しいということで楽しめるんだなと声が上がってうれしい

三溝さんには心強い協力者がいる。ボランティアの一人、祝井一幸さんだ。祝井さんは「活動を町おこしに結びつけたい」と、2022年6月、「あっぷさいくる蔵部」を立ち上げ、三溝さんと協力して活動している。

あっぷさいくる蔵部・祝井一幸代表:
公民館なので限界なところがあり、経済を回せないということがあって、『アップサイクル』で経済を回して町おこしができないかなと。公民館ではできないことを民間でやる

地域ぐるみの活動に
2022年春から本格的に始めたのが「アップル ボックス プロジェクト」。地域ぐるみの活動にするのが狙いだ。

リンゴ箱を椅子に再生。この日、取り組んだのは2022年、須坂市役所に入った職員だ。研修の一環として行われ、三溝さんと祝井さんが指導に当たった。脚などの骨組みは廃棄予定の椅子を再利用。座面と背もたれにリンゴ箱の板を取り付ける。
通称「アップルチェア」が完成した。

職員:
お、いい感じですね。椅子として機能してるのがびっくりで、すごくいい感じです
職員:
新しい木より温かみがあるような気がします。(リンゴ箱は)須坂にいっぱいあるものなので、それを再利用できてすごくいいと思う
「アップルチェア」は今後、イベントなどで使用する予定で、いずれは「販売」にもつなげたい考えだ。
高校生はプランターボックスを製作
こちらは須坂創成高校。生徒たちがリンゴ箱を、プランターを入れる箱「プランターボックス」にする作業をした。

市内の公共施設などにも設置する予定で、一年を通じて花が楽しめるよう、開花時期の異なるパンジーとアリッサムの苗、そしてチューリップの球根を植えた。
見た目がおしゃれになるだけでなく、夏の照り返しから植物を守ることもできるそうだ。

昔の文字やマークはそのまま…
生徒:
箱がレトロでかっこいいので良いと思う
生徒:
少しでも街、市が明るくなればいいなと思う。SDGs的な問題にも携わって良かったな

プランターボックスは「プロジェクト」の活動資金を集めるための「広告」にもなり、現在、ロゴの下に社名を入れる企業を募集している。
地域に眠るリンゴ箱を再利用。街を元気にするSDGsな取り組みだ。
三溝清洋さん:
須坂はいろいろなことにチャレンジさせてくれるいい街で、自然に優しくてごみを楽しめるような街になれば、すてきだなと思う

あっぷさいくる蔵部・祝井一幸代表:
捨てるごみが減ったりとか、そこに不加価値をつけることで楽しめる『SDGs』がどんどん広がれば、みんな地球に優しくなるんじゃないかなと思う
(長野放送)