還暦を迎えても年齢を感じさせないアスリートが佐賀・鳥栖市にいる。走り高跳びの60歳から64歳の部門でアジアNo.1の記録を持っている女性だ。「少しでも世界記録に近づきたい」と語るこの女性。さらなる記録更新をめざして、日々厳しいトレーニングを続けている。
普段は大学教授の秘書として働く女性 実はアジア記録保持者
大型バイクに乗るこちらの女性。趣味はツーリング、天気のいい日は職場までバイクで通勤する。
この記事の画像(24枚)轟木理恵さん:
久留米大学バイオ統計センター轟木です
佐賀・鳥栖市在住で、福岡・久留米市で働く轟木理恵さん(60)。大学教授の秘書として、主に会計など事務仕事を担当している。そんな轟木さんが、あるもので記録を持っていることについて、仕事仲間は…。
同僚:
同年代としてすごいとしか言いようがない。だって私より筋肉ありますよ
轟木理恵さん:
いやいや褒めすぎですよ。褒めすぎ
謙遜しているが、アジアNo.1のすごい女性なのだ。
轟木理恵さん:
わたしは60~64歳の走り高跳び、日本記録、アジア記録保持者です!
轟木さんは、走り高跳びの選手。2022年5月に佐賀市で行われた陸上大会の60歳から64歳の女性が出場する部門で、日本記録タイの1m25cmを跳ぶことに成功。
しかも、8月の長崎大会では、1m27cmを跳び、日本記録を2cm、アジア記録を1cm更新。さらに、9月の鹿児島大会では1m28cmを跳んで、轟木理恵の名を陸上業界に轟かせた。
驚きなのが競技歴。
轟木理恵さん:
走り高跳びの競技歴は5月から、まだ大会は3回しか出ていない
元々は200メートルの選手としてインターハイや国体に出場。大学時代は、西日本で1位になったほか、12回九州一に輝くなど活躍し、実業団から誘いもあったが大学卒業と同時に現役を引退。走り高跳びの選手として大会に出場したことはなかった。
ーーなぜ走り高跳びに挑戦した?
轟木理恵さん:
学生の時から高跳びかっこいいなと思っていた。(60~64歳の)日本記録一覧を見ると、短距離より走り高跳びの方が、記録が出せるかもしれないと思った
基本的に、1人で練習するため近くにスマホを置いて、1回跳ぶごとに動画でフォームを確認する。
轟木理恵さん:
風が吹いている割には、ちょっと踏切が遠いのかな。だから降りる時に当たっている。時々、専門の友人たちに指導を仰ぐぐらいだから自己流です
陸上から離れて40年 体を取り戻すきっかけとなったのはジム通い
ちなみに轟木さん、現役引退後、およそ40年陸上から離れたが、なぜアジア記録を出せるほど体を動かすことができたのか。
轟木理恵さん:
体重増加や筋力低下は年齢とともに否めないが、(コロナ禍の)リモートワークで体を動かさなくなった。「50代後半でリセット」ということでジムに通おうと思った
ジムには、2020年の夏から週2回、通っている。
担当トレーナー:
いつもは50kgなのでウォームアップという形で40kg。筋肉量は多い方ですね
ーー通い始めた当初は何kg?
轟木理恵さん:
何も持たずに。何も持たずにこう(スクワット)ですよ
やりはじめたら投げ出さない負けず嫌いの轟木さんは、およそ2年で15kgのダイエットに成功した。
痩せたことで、現役時代の感覚を取り戻し陸上へ復帰したそうだが、体との相談が必要不可欠な60歳。なぜここまで頑張れるのか…。
轟木理恵さん:
60年生きていると、あと何年四季を過ごせるかなと考える。いま、やれることをやろうと
ーー次の目標は?
轟木理恵さん:
少しでも世界記録(1m47cm)に近づきたい
さらなる高みへの挑戦 アジア記録より高い1m29cm
10月16日、大分県で開かれた陸上大会。短距離や中距離など17種目に28歳から83歳の、のべ180人が出場した。健康維持や仲間との交流、目的はさまざまだが、轟木さんは、自身のアジア記録1m28㎝を1cmでも更新するのが目標。
1m13cmからスタートし、3cm刻みで、順調に跳び続ける。同じ高さで挑戦できるのは3回まで。1回でもバーを落とさずに跳ぶことができれば成功だ。轟木さんが更新する前の日本記録1m25cm。クリアしたことのある高さだが、空中でうまく体をさばけず2回連続で失敗する。後がない3回目…。
何とか成功する。次は1m28cmの予定だが…。
轟木理恵さん:
129行きます!
アジア記録より1cm高い1m29cmに挑戦。
続く2回目もバーを落とした轟木さん。迎えたラストチャンス…。
轟木理恵さん:
ありがとうございます。やっぱり練習あるのみです
高く跳べているが、空中動作が思うようにいかず、3回連続で失敗。アジア記録更新は、かなわなかった。
轟木理恵さん:
バーを落とした時は大声を出したくもなるが、“悔しいよりは“次につなげよう”と。2022年の目標は1m30cmです
ーーその後は?
轟木理恵さん:
体の調子と相談しながら記録を伸ばしていければ
轟木理恵(60)。還暦ジャンパーの挑戦はまだまだ続く。
(サガテレビ)