大相撲は注目力士が次々を誕生するなど相変わらずの人気だが、女子相撲となると競技人口2000人とまだ普及の途上だ。その女子相撲界にヒロイン候補が現れた。静岡県の中学生で、2022年春の全国大会では高校生などを破り日本一に輝いた。夢は「女子相撲を世界に広める」ことだ。
高校生を破り日本一に
2022年4月に偉業を成し遂げた一人の中学生。
高校生などを次々と破り、女子相撲界の日本一に輝いた。焼津市の平口幸芽(こうめ)さん、15歳だ。

やいづ少年相撲クラブ・平口幸芽さん:
スピードと技で勝つ
身長152cm、主戦場は体重別に5つある階級のうち、最も軽い50kg未満の「超軽量級」だ。
ただ普段から、階級が上の相手や大人と稽古を重ね、持ち前のスピードと技を磨いている。

平口幸芽さん:
普通に勝つだけではなく、“技”で勝って見ている人に「かっこいい」と思ってもらえるように勝ちたい。一番はやっぱり大会で勝って、女子相撲をすごく世界に広めたい
小学生で少年相撲クラブに参加
相撲が盛んな焼津市で育った。
焼津は小兵ながら得意技「肩透かし」で土俵を沸かせる幕内力士・翠富士の故郷でもある。

平口さんが相撲を始めたのは、7年前に妹が興味を持ったことがきっかけだ。
小学生の時に地元の相撲クラブに入った。

負けず嫌いな性格と駆け引きの楽しさからのめり込み、これまで世代別で4度の全国優勝を果たした。

さらに2022年4月には、日本女子相撲連盟主催の全国大会で、年齢制限のない中、高校生などを破り日本一となった。
小さな体で成人男性並みの筋トレ
現在、女子相撲の競技人口は約2000人で、少しずつ増えてはいるが知名度は決して高くはない。
だからこそ「強くなって、もっと女子相撲を広めたい」と、筋力トレーニングにも力が入る。バーベルの重さは最大のもので80kgと、一般的な成人男性と同じメニューをこなせるまでになった。

平口幸芽さん:
以前は体が小さかったので技に頼って、技だけで勝っていたのですが、筋トレをすることで押して勝つ相撲が増えました
力強さを身につけたことも、全国制覇の大きな要因だ。小柄だが、“小さな巨人”として、いまや女子相撲界のヒロイン候補だ。
ただ、強さの裏に心の弱さも抱えていた。

平口幸芽さん:
焦らないこと。立ち合いで滑って、1秒で負けたこともある
憧れの“レジェンド”元世界王者がエール
ミスをしてしまった経験もあるが、伸び代は十分だ。これから女子相撲界で輝く彼女に、今回あるレジェンドからサプライズが寄せられた。

野崎舞夏星さん:
よろしくお願いします
平口幸芽さん:
やばい

憧れの世界チャンピオン、野崎舞夏星(まなほ)さん。
野崎さんは浜松市出身で、2014年に世界女子ジュニア相撲選手権大会(軽量級)で優勝するなど、日本人で初めて世界の頂点に立った女子相撲界のレジェンドだ。
すでに競技を引退したが、幸芽さんが小学生だった頃には胸を貸したこともあり、頼もしい後輩の成長を楽しみにしている。

元世界王者・野崎舞夏星さん:
(練習で幸芽さんの)立ち合いを受けた時に、“鉄の球”が飛び込んできたと思うくらい威力が半端じゃなかった
力強さは元世界王者も認めるところだ。そして、メンタル面の弱さにもアドバイスを送る。
野崎舞夏星さん:
相手に圧力さえかかっていれば、滑ることも空回りすることもない。いつも通りの幸芽ちゃんの相撲ができれば大丈夫。優勝できるよう応援しています、頑張ってください

平口幸芽さん:
対戦したことはないけれど、大会でいつも(野崎さんを)見ていた。自分の相撲にアドバイスしてくれたので、次の大会に活かしたい
中学最後の大会は3位 「初心に戻って頑張る」
その大会が全日本中学生大会、中学生最後の大舞台だ。2022年10月に京都で開かれた。

注目は初戦の2回戦だった。
元世界王者・野崎さんからのアドバイス通り、立ち合いから「鉄球」のような圧力。力強さと瞬発力で相手を圧倒した。

しかし準決勝では、その立ち合いが相手に見透かされてかわされ、そのまま主導権を握られ万事休す。
優勝を逃した幸芽さん、実はケガを抱えていて万全の状態ではなかったが、負けは負けだ。
悔しい結果を心に刻み、再び前を向く。
平口幸芽さん:
今回は3位という結果に終わってしまったけれど、次(の大会)からは高校生になるので、また一から初心に戻って稽古を頑張りたい

女子相撲界 期待の逸材、平口幸芽さん。
栄光も挫折も経験した彼女は、次のステージでさらに成長した姿を見せてくれるはずだ。
(テレビ静岡)