静岡市の安倍川のほとりにある施設「水辺の楽校」。10年以上前から毎年、子供たちが水遊びを楽しむ夏に開校していた。しかしここ3年間は、新型コロナの影響で開校できない状況が続いている。
そんな中運営するボランティアたちは、再開に向けて水辺の整備や、放流している魚の世話を続けている。そこには未来を担う子供たちへの強い思いがあった。

3年間途絶えている子供たちの姿

人けのない水辺(静岡市葵区・2022年8月)
人けのない水辺(静岡市葵区・2022年8月)
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毎年 夏になると、子供たちの楽しそうな笑い声が響き渡っていた、静岡市葵区の「うしづま水辺の楽校」。

しかしこの3年間は、静まり返ったまま。新型コロナウイルスの感染拡大により、開校できない状況が続いているからだ。

開校当初から携わる荻野さん
開校当初から携わる荻野さん

開校当初から、水辺の楽校の管理・運営に携わってきた荻野春美さん。毎年、子供たちと触れ合ってきた。

荻野さん:
遊んでいる姿を、魚を追いかけてワイワイしている姿を見たいですね

子供の笑顔が「いきがい」 活動続ける原動力

水辺の楽校(2013年)
水辺の楽校(2013年)

うしづま水辺の楽校は、2008年、国土交通省が子供たちの自然体験の場として整備した。管理や運営は、地元の有志で結成されたボランティア「世話人会」13人が行っている。

世話人会のメンバーは、子供たちの笑顔が「いきがい」と話す
世話人会のメンバーは、子供たちの笑顔が「いきがい」と話す

世話人会のメンバー:
子供たちの笑顔が見たいから。ここ3年ほどできていないけど、子供たちの笑顔が一番。いきがいというか

水辺の楽校を楽しむ子供たち(資料)
水辺の楽校を楽しむ子供たち(資料)

水温は真夏でも19℃前後。これまでに約16万人が訪れ、水遊びをしたり、魚のつかみ取りをしたりして、水辺の遊びを楽しんできた。

開校断念でも水辺の管理 アマゴの餌代 年30万円は年金から捻出

河原を見つめる荻野さん
河原を見つめる荻野さん

そんななか、猛威を振るい始めた新型コロナ。

行政とも協議をし、ボランティアだけでは感染症対策を十分に行うのが難しいとの判断から、開校を断念せざるを得なかった。

荻野さん「残念しかない」
荻野さん「残念しかない」

荻野さん:
残念しかないですね。やっぱり新型コロナがこれだけ流行っていると、行政とも相談をしていかなければならないので、いちばん難しい

管理を続ける世話人会
管理を続ける世話人会

世話人会は開校していないこの3年の間も、草刈りやごみ拾いなど、水辺の管理を続けている。
開校できる夏がいつ来てもいいようにと。

水辺の学校で放流されているアマゴは、荻野さんが育てている。

成長するまで2年ほどかかるため、開校できずにいるいまも、アマゴの生育を続けているという。
毎日の餌やりに加え、病気にかかっていないかの確認。また、アマゴは水が濁ると死んでしまうため、週に1度の掃除も欠かせない。

荻野さん「辞めたいと思ったこともある」
荻野さん「辞めたいと思ったこともある」

荻野さん:
(大変と思ったことは)時々ある。辞めたいと思ったこともあります。やっぱ体がついていかない。前なら一晩寝れば疲れが取れたけど、このごろ、この暑さもあると思うけど、疲れがずっと残っちゃうというのが一番つらい

年間約30万円にのぼる餌代も、荻野さんが年金の中から捻出している。

荻野さん:
そういうのが好きなんだよね。魚にしろ子供にしろ。好きなので続けられると思います

進む世話人会の高齢化 担い手確保も課題に

平均年齢75.6歳の世話人会
平均年齢75.6歳の世話人会

ただ、高齢化が進み、世話人会の平均年齢は75.6歳。体調などの面から、活動を辞めざるを得ない人もでている。

子供たちが安全に水遊びをするための監視や、遊具や補修を行う担い手の確保は喫緊の課題だ。

荻野さん自身も74歳。それでも前を向いている。

荻野さん「1年中遊べる場所に」
荻野さん「1年中遊べる場所に」

荻野さん:
2023年は、人数制限をしてくれと言われてもやります。やっぱり子供の顔を見て、こっちも元気をもらいたい。1年中遊べる場所にしたいですね。どうできるかわからないけど、検討してやっていきたい

地域の自然で“楽しく学ぶ”こと

水辺の楽校を楽しむ子供たち(資料)
水辺の楽校を楽しむ子供たち(資料)

地域で守ってきた自然の中で、子供たちに思いっきり遊んでもらいたい。
自然を感じ、自然の楽しさ、厳しさを知ってもらいたい。

未来を担う子供たちの笑顔のため、そして豊かな心を育てるために、荻野さんたちはこれからも活動を続けていく。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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