太平洋戦争末期、特攻隊員と鹿児島県三島村黒島の島民の間に起きた実話を、高校の教師が脚本化し、演劇部生徒たちが熱演した。10月20~21日、鹿児島市では、2023年鹿児島で開かれる、全国高校総合文化祭出場への一歩となる演劇大会が行われた。大会では2022年にできたばかりの日置市・伊集院高校の演劇部が初舞台に臨んだ。2019年に、屋久島高校演劇部を全国大会出場へと導いた先生が生徒たちを引っ張る。

できたばかりの演劇部を引っ張る 全国大会出場の実績を持つ教師

20日と21日、鹿児島市の谷山サザンホールで行われた、全国高校演劇祭の鹿児島市地区予選。

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出場11校の中には創部して初めての舞台に臨む高校が。日置市の伊集院高校だ。

伊集院高校演劇部・上田美和顧問:
舞台が広すぎて、あそこはもう少し攻めたらよかったなあと思った。本番はもっと攻めようと思って

2022年にできたばかりの演劇部を指導するのは、2021年4月に赴任した上田美和先生。上田先生は2019年、当時赴任していた屋久島高校の演劇部を全国大会で2位に導いた。屋久島の森林伐採をテーマにしたオリジナルの脚本が高く評価された。

伊集院高校の初舞台も上田先生が自ら脚本を手がけた。タイトルは「See you tomorrow」。1945年太平洋戦争末期の三島村の黒島が舞台。

特攻隊員の柴田少尉は沖縄へ向かう途中に黒島に不時着。大やけどを負い、島民から手当てを受ける。特攻隊員に生きてほしいと願う島民と、祖国のために再び出撃を望む特攻隊員の思いが描かれた実話。

『ではわたしも刺してください、わたしも一緒に死にます!あなたを死なせたらみんなに申し訳ない!』

『国のために海に散ること、それがわたしたちの運命(さだめ)だった』

舞台上に鬼気迫るせりふが響く。

現実で戦争が起こっている今 過去の物語を見てほしい… 

ーー上田先生が戦争をテーマにしたわけは?

伊集院高校演劇部・上田美和顧問:
人は歴史から学んで二度と同じ過ちを繰り返さないはず。でも現実は今まさに戦争が起こっているわけで、だから今の国際情勢と合わせて過去の物語を見てくれたらという気持ちで作った

部員はわずか8人。ほかの高校よりもかなり少ないが、生徒らは約1時間の初舞台を演じきった。観客の拍手の中、緞帳(どんちょう)が下りる。

主役に抜てきされた1年生の生徒もほっとした様子。

主役に抜擢 伊集院高校 演劇部1年・上江 聖さん:
(僕が)一年生というのもあるし、大きな舞台に立ってやるという経験がなかったので、せりふの覚え方や演技のつけ方にすごく苦労した

伊集院高校演劇部・上田美和顧問:
ドラマというのは人間を描くことなので、作品の質にはこだわるべきだと思っていて、これからもどんどんこういう作品に、みんなで取り組めたら

進み始めた伊集院高校演劇部。上田先生と生徒たちはこれからも演劇を通して歴史や教訓を伝える。

そして20日午後4時過ぎ、鹿児島市地区予選の結果が発表された。初舞台となった伊集院高校は見事、最優秀賞を受賞した。伊集院高校は11月9日、10日に鹿児島市の宝山ホールで行われる県大会に出場する。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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