「妊娠したかもしれないが誰にも言えない」と、人知れず悩みを抱える若い女性を支援する団体が宮城県内にある。本人への支援だけでなく、性教育の出前授業に力を入れる背景には、知識を得られる場所が限られていることへの危機感と、「赤ちゃんの命を救いたい」という思いがあった。

誰にも話せない女性支えるNPO

「18歳高校在学中です。避妊無しでしてしまいました。誰にも話せず親にも話せない」

「できることなら彼氏にも親にも知られずに中絶できたらなと思っています」

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未成年の女性たちから次々と寄せられる悩み。こうした女性たちに寄り添っている団体が仙台市内にある。

ラジオ収録:
キミトナラジオの時間です。みなさん、こんばんは…

予期しない妊娠に悩む女性を支援するNPO法人「キミノトナリ」。支援のかたわら、エフエムたいはくで、毎週水曜日にラジオ番組を放送している。パーソナリティーを務めるのは、法人代表の東田美香さん。

東田美香さん:
こういう問題があるんだとか、世の中にこういうことが起きているんだと    知ってもらえたらなと思う

「キミノトナリ」は、電話やメール、SNSで相談を聞き、病院へ一緒に付き添うなど、女性が一人で悩みを抱えることがないよう支援している。こうした直接的な支援に加えて力を入れているのが、性教育に関する情報の発信。

「知らないは恐ろしい」教育に危機感

この日は、中高生を対象にした性教育の出前授業に招かれた。

NPO法人「キミノトナリ」 北山潔さん:
ピルの避妊率は99.7%、コンドームの避妊率は98%、残念ながら100%ではない。どちらを使っても絶対に妊娠しないということはありませんが、かなり妊娠の可能性は低く抑えることができます。最低限コンドームを使う、あるいは女性の場合はピルを飲む

情報発信に力を入れる理由。それは、子供たちに科学的な根拠に基づいた性に関する知識を持ってもらうため。現在の学習指導要領では授業で性交渉については教えられず、中絶や避妊も原則として取り扱わないとする、「歯止め規定」が存在している。
東田さんたちは、子供たちが性に関する知識を手に入れられる場所が限られていることに危機感を抱いている。

東田美香さん:
知らないということは何よりも恐ろしいことですので…。まず知ってもらうことを念頭に置いています

東田さんたちが、特に力を入れて伝えているテーマが「性的同意」。「性的同意」とは性的な行為を行う際にお互いの意思を確認すること。出前授業でも、「交際相手に突然、自宅で性行為に誘われたらどうするか」とみんなで考える。

東田美香さん:
もちろんイエスもノーもどっちもあるけど、嫌だなと思った時のうまい断り方、もちろん断らないという選択肢もあります

女子生徒:きょうはダメな日なんだって

東田美香さん:いいね、でもなんでダメなの?

女子生徒:ガールズデイ

東田美香さん:そうそう、その断り方はいいんだよね。わかりようがないから男の子にはね

嫌なら嫌とはっきり伝える、自分と相手の両方を尊重する気持ちが大切だと語りかける。

東田美香さん:
同意というのは別に性的なことに限らないで、お互いを尊重していたら必要になるもの。勝手に何かを相手にしてやるとか、相手の物をとってはいけないとか、そういう根本のところを教えられたらなと思っていて

男性にも責任 命を救う性教育を

そして、もう一つ。東田さんたちが大切にしていることがある。それは男子への性教育。

NPO法人「キミノトナリ」 北山潔さん:
実際にいまやっぱり日本の避妊は男性のコンドームが一番数が多いので。コンドームの装着の具体的な方法って、人から習わないんですよ。親からも学校で習うこともない。これはもう自主練をしてもらうしかない。自分で実際に触って装着を練習する

厚生労働省の調査によると、2003年から2021年までの間、生まれたその日に放置されるなど、虐待されて死亡した赤ちゃんは173人にのぼる。このうち「計画していない妊娠」が背景にあったケースは、122人と7割に上った。

東田美香さん:
中絶した赤ちゃんの遺体を最後に「ごめんね」と言って火葬に入れて、出てきたお骨をみんなで拾うことを実際にしました。これをやらせた男の人は何なんだろうなと思いました。本当にそういう人にならないでほしいと思います

望まない妊娠の背景には、相手となった男性が必ず存在する。妊娠を女性だけの問題とせず、男性が正しい性知識を持つことが、命を救うことにつながると東田さんたちは考えている。学校でも避けられてきた性についての教育。大人が目を背けず向き合うことが大切だと指摘する。

東田美香さん:
大人がタブー視しないというのが非常に重要だと思っていて、タブー視するとどんな悪いことが起こるかというと、いざ子供が性の問題を抱えたととき、親には死んでも言えないという方向に行ってしまう。性行為ってなんなの?、どういうことをすれば赤ちゃんができるの?どういう風にすれば赤ちゃんができないの?というのは、そこはきちんと教える責任が大人にあると思います

大人も子供も、性についてオープンに話し合える環境を作る。性教育はアップデートの時機を迎えている。

(仙台放送)

仙台放送
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