19日、日本維新の会の役員会が行われている最中に、遠藤国対委員長の携帯電話が鳴った。電話の向こうは、自民党の国対幹部。「自公立維で旧統一教会の救済法案の協議会を設置することを公明党と合意した。この後、国対委員長会談をしましょう」という電話だった。電話が終わり役員会に報告すると、「おーーーっ」と歓声が上がった。
この2日前、立憲民主党と日本維新の会は、旧統一教会の一連の問題を踏まえ、悪質な献金などの被害者を救済する法案を臨時国会に共同で提出していた。法案は、マインドコントロールなど、正常な判断ができない状態で、可処分所得の4分の1を目安に「著しい損害」を生じさせる行為について、取り消すことが出来るようにした。また、被害者の家族などが寄付を取り消せる制度も盛り込んだ。
両党は、旧統一教会をめぐる一連の問題を受けて急ピッチで法案化を目指したが、当初、両党がそれぞれたたき台としてまとめた案にはいくつか隔たりがあり、何度も協議が行われていた。
焦点となったのは、寄付額の上限の規定だった。維新側は、当初から音喜多政調会長が「年収の3分の1もしくは4分の1を多額な被害として法案に書き込みたい」と話し、「司法や行政がちゃんと動けるようなルールを踏み込んで作らなければいけない」としてこだわった。一方で、立憲側は、「教団に逆手に取られて4分の1ぎりぎりまで搾り取られる恐れがある」(立憲中堅)などとして強く反対していた。維新側としても交渉が長引くことを想定していて、音喜多政調会長には「譲歩するな、ただしまとめろ」という指示が出ていたという。
交渉が動いたのは、立憲・維新の政調会長が並んで記者発表をした12日の前日。立憲側から4分の1の規定を盛り込むと連絡があったという。維新幹部は「法案の骨格は立憲側が用意したものだが、こちら側が盛り込みたいものをすべて入れた形で落ち着いた。あと一週間くらいは粘って交渉するつもりだった」と話す。一方、立憲側は「17日の予算委員会の質疑で、『臨時国会で対策はどうするのか、うちはもう法案を出している』と政府に迫る必要があり、期限を決まっていた」(幹部)と解説する。
狙いは的中する。冒頭の電話の後の与野党国対委員長会談で、「悪質献金等被害救済のための与野党協議会」の場を設けることが決定。悪質な献金被害などを救済するために協議会を設けて、法案を与野党で作成し、今国会中の成立を目指すと合意した。維新幹部は、「今から政府が閣法を用意するなんて無理。助け舟みたいなもんだよ」と自信を見せる。
野党ペースで進む国会ついて、自民党幹部周辺は「立憲・安住国対委員長、維新・遠藤国対委員長の体制になってから戦略的に攻めてくるようになった」と話す一方、「今はうまくいっているかもしれないが、政策的な違いが根っこにあるから、いずれは崩れるだろう」と見る。
立憲と維新の両党は、これまで国会対応で溝があったが、9月、国会での“共闘”で合意した。そして、今の臨時国会に共同で、悪質献金被害救済法案に加え、国会法改正案、通園バス置き去り防止法案を提出した。今回、その“共闘”に与党を巻き込んだ形だ。
異例の展開で設置された与野党協議会だが、「可処分所得の4分の1の規定」や「被害者の家族による取り消し」など、“野党側のこだわり”がどこまで受け入れられるのか。議論の行方を注視する必要がある。
(フジテレビ政治部 原佑輔)