10月17日に衆議院の予算委員会が始まり、与野党の本格論戦がスタートした。政権への不信が深まる中、政府与党はどこまで国民が納得する説明をできるのか。そして、野党はどのように攻めるのか。BSフジLIVE「プライムニュース」では与野党の論客を迎え、後藤謙次氏を交えて議論した。

急落の内閣支持率、自民党内にも政権への逆風発生か

この記事の画像(13枚)

新美有加キャスター:
最新のFNN世論調査では、内閣支持率が40.9%で前回の調査から1.4ポイント減。不支持率は51.9%と1.9ポイント増。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
物価高と旧統一教会問題に対するスピード感のない対応への不満が強い。結果が出ないことに嫌気がさしてきた。(旧統一教会との関係が追及されている)山際内閣府特命担当大臣は、予算とコロナという2大テーマに責任あるポスト。来年度予算の編成が本格化する前に、岸田さんが人事で姿勢を示すことが必要。

若宮健嗣 自民党幹事長代理
若宮健嗣 自民党幹事長代理

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
旧統一協会問題の解決、被害者の方の救済を早くしてほしいという、一般の皆さんの気持ちがある。また円安を含めた資源価格、物価の高騰。見える形での手だてをこの国会で明らかにしていきたい。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
この1年間結果を出せていない。聞く力は全く発揮されず、語る力もない。旧統一教会問題では、党内に強い指導力を発揮して調査できていない。物価高に対しても、我々野党の提案をスルー。だから国民は支持率が下がるような判断をするのでは。

反町理キャスター:
旧統一教会問題は政府というより自民党の問題だが、自民党の支持率は内閣支持率のようには減っていない。立憲民主党は対前月比0.2ポイントの微増で低位安定。なぜ大きく動かないのか。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
野党がまだ自民党に代わる勢力になりきれていない。ただ自民党支持率の低下には、岸田内閣に嫌気がさしたという党内世論の微妙な変化が出ている。2023年には統一地方選がある。地方から意見が出てきた場合、岸田さんが本当に危ないのかどうかが見えてくる。

旧統一教会への「質問権」行使 関連団体の調査も必須

新美有加キャスター:
FNNの世論調査では、旧統一教会問題をめぐる岸田政権の対応を「評価する」が17.5%。「評価しない」は72.7%で前回の調査より25.7ポイントの大幅アップ。何が問われているか。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
全く自ら調査しようとしていない。山際さんの無責任な態度に何の言及もできない総理。国民の皆さんはおかしいと思うのでは。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行
逢坂誠二 立憲民主党代表代行

新美有加キャスター:
ここで予算委員会のVTR、旧統一協会問題についての部分。

宮崎政久 自民党衆院議員(VTR):
旧統一協会に報告を求めるに足る疑いは十分にあるのでは。解散命令の請求を判断するか否かの材料を集めるためにも、この権限(質問権)を行使すべき。

岸田文雄 首相(VTR):
宗教法人法に基づき、報告徴収及び質問権の行使に向けた手続きを進める必要がある。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行(VTR):
実態調査は一定程度の期間でやらなければいけない。また、関連団体も調査しなければ実態がわからない。

永岡桂子 文部科学大臣(VTR):
年内のできるだけ早いうちに権限が行使できるよう手続を進める。また宗教法人法では法人格を持った団体だけに対応でき、関連団体については対応できない。

岸田文雄 首相(VTR):
初めてこの法律が適用される事案であり、いつまでにと具体的に言うことは難しいが、できるだけ迅速に対応する。

新美有加キャスター:
質問権は宗教法人法に規定されており「法令に違反し、著しく公共の福祉を害する事実が認められる行為」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などがある場合、解散命令に該当する疑いがあるとして、当該宗教法人に報告を求め質問ができる権利。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
質問権を切り出したことは一歩前進。だが、結論を出すまでの期間については明示していない。政府のやる気が問われる。また、旧統一教会本体を見えなくしている関連団体の調査が大事。法の立て付け上は永岡文科相の言うとおりだが、例えば関連団体の代表者が本体の役員なら、関係は密接と判断できる。そういう観点でやらなければ。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
国会答弁では言えないと思うが、調べる方々は実際にその観点でやると思う。いろんな省庁を全て合流させた上で対策を講じる。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
国会の国政調査権を利用した調査特別委員会を設置すべき。与野党にわたって関係した議員がいる。国民の目の前で双方が忌憚ない意見をぶつけ合うところから活路が見出されるのでは。

被害者救済への立法は与野党の協力で迅速に行う

新美有加キャスター:
被害者の救済をめぐる政府の対応。消費者庁の「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」は、取り消し権の対象範囲の拡大と行使期間の延長を検討。また、寄付や献金は幅広い一般的な禁止規範を規定し、違反した場合は無効とするなど法整備を検討する、などと提言。若宮さんが委員長を務める自民党の「霊感・悪徳商法等の被害救済に関する小委員会」も先週、初会合を開いた。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
個別具体のケースで多くの方々を救う方法が議論のポイントになっている。これは非常に難しいところで、単に返金を求めるだけでなく、家族間の関係の問題にもなる。慎重に進めなければいけないが、11月いっぱいまでには形をつくりたい。

新美有加キャスター:
一方、立憲・維新は共同で救済法案をまとめ国会に提出。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
特にポイントとなるのは、「被害者家族も財産供与の取り消しを主張できる」という内容。献金した本人は信じ込んでいて冷静な判断ができない場面もある。岸田総理もだいぶ納得できると答弁されていたので、自民党の提案と合わせ、なるべく早く法案を成立させられれば。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
この案は考え方としては非常にいいと思う。現状の被害を助けるのはもちろん、今後被害を作らせないことが一番。与野党関係なく作っていく。公平性と信教の自由に鑑みながら進める。

物価対策にはスピード感と国民へのわかりやすさを

新美有加キャスター:
国民の関心が高い物価高対策について。FNN世論調査では、政府の物価高騰への対応を「評価しない」が77.8%、「評価する」は14.5%。今求められていることは。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
1つは直接家計に作用すること。ガソリン価格を抑えるために3兆円近くを出しているが、そのメカニズムが国民には全くわからない。電気やガス料金の対策についても予算委員会で話していたが、効果が出てくるのは1月と遅い。スピード感をもってわかりやすいことをやるのが大事。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
国内だけで見るとわかりにくいが、一時期ガソリン価格はヨーロッパなどで約2倍になっていたところ、日本はなんとか170円が200円になるという程度に抑えた。この点はご理解いただきたい。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏
政治ジャーナリスト 後藤謙次氏

反町理キャスター:
補正予算の規模や中身の注目点は?

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
岸田内閣がどういう方向性、全体戦略で物価高に取り組んでいるか。「これをやればこうなるが、皆さんもここまで我慢してほしい」と総理が先頭に立って全体像を見せないと、お金をただただ使うだけではないかということになる。円安に対する為替介入も、プラザ合意のときのように協調介入できなかった。金融外交の面でも見劣りしている。岸田さんが言う「新しい資本主義」、もっと血肉がついた形にして示す責任がある。

防衛費増額の財源をめぐり、自民党内には意見の相違が残る

新美有加キャスター:
防衛費の増額について、FNNの世論調査では賛成が62.5%、反対は29.8%。財源について、「他の予算を削って賄う」が55.0%で最多。「国債を発行する」が27.2%、「増税」は12.8%に。

反町理キャスター:
防衛費の対GDP比2%を念頭にという点について、予算委員会で萩生田政調会長が「研究開発費や年金を含む水増しではなく、2%に向けて真水で増額を」と質問。総理は「何が必要かという観点から内容の議論をするが、財源も重要」。政府に対する与党の質問にしては論点がずれているのでは。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
例えば宇宙の分野で、総理は衛星コンステレーションの話をした。たくさんの衛星を細かく打ち上げ、今何がどこでどうなっているのか把握するためのシステム。どんな攻撃をされる恐れがあるかが見える形になる。これは防衛の概念が強いが、現在の文部科学の枠になっている部分もあり、そういった点を総合的に考えたいという答弁だったのでは。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
憲法の専守防衛の枠組みの中で最大限何ができるのか。何が必要かということを考え、優先順位をつけてどの程度増やせるか考えることが大事。そして財源は、どれか1つということではない。基本は税で、増税するか他の予算を振り向けるか。また国債発行なら「この装備のために」など限定的に。この3つの組み合わせでの財源捻出が現実的だと思う。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
アメリカのバイデン大統領が来たとき、岸田さんが記者会見で防衛力を増額すると言ったところが始まり。当時健在だった安倍元総理は国債でもいいと言った。萩生田さんの質疑は安倍さんの意見をぶつけている。つまり、5月の段階の政府・自民党内の意見の溝が全く埋まらないまま来ている。岸田さんは今回、財政規律を守りながら防衛費を増やしていくという方向性を打ち出したのでは。

(BSフジLIVE「プライムニュース」10月17日放送)