富士山世界遺産に登録された景勝地の観光客が、コロナ禍の影響もあり激減した。観光客の回復を目指し、地元の大学生がジェラート店をオープンした。店名は「minamo」。きれいな水面(みなも)の観光地を皆で盛り上げていこうと願いを込めた。
観光客は最盛期から8割減 ”三保松原”復活へ
2022年3月、静岡市の中学生や高校生などが集まり、話し合いが行われていた。

参加した生徒:
三保がどうしたら有名になるのか、どうしたら三保に行くのか
静岡市が開いた意見交換会のテーマは、清水区三保地区の活性化。

別の生徒:
三保をこれからこういう場所にしていくべきと高校生が話し合う会があると、自分ごとにつながってくると思う
別の生徒:
情報を手に入れるのはSNSだと思うので、三保地区でも使っていけば、周りにも影響は大きくなると思う
活発に意見を交わす若者たち。三保の現状に問題意識を持っていた。

国の名勝に指定されてから100年を迎えた三保松原。富士山世界文化遺産の構成資産に登録された2013年度には、観光交流客数が156万人に上ったが、その後は減少傾向だ。2021年度は新型コロナの影響もあり、25万人にまで落ち込んでいる。最盛期に比べ8割以上も減った。
「もっと楽しめる場所を」大学生たちが奮闘
こうした中、三保松原周辺で新しい店がオープンの準備を進めていた。

静岡大学4年 天坂晋さん:
少しスペースがあくよね、この机を置くことできる気がする。レジに近いほうがよくない?
地元の企業に場所を借りて準備をしていたのは、静岡大学と県立大学の学生たち。ジェラートやドリンク、雑貨を販売する店を5日間の期間限定でオープンする。
代表の天坂さんは富山県出身だ。大学進学で静岡市に来て、この地区の魅力にひかれたと話す。

静岡大学4年 天坂晋さん:
三保はすごくきれいな場所で、来てくれる人が多いところだけど、すぐ帰ってしまう人が多くて。そういった人が少し滞在できたり、三保でもっと楽しめるような場所を作れたらいいと思って、ジェラート店を始めました

店の名前は「minamo」。三保の海の美しい水面(みなも)と、学生・地域・企業が「皆も(みなも)一緒に」という2つの意味が込められている。
コーヒーにお茶の葉クッキー 県内産素材の魅力伝える
その由来の通り、店の場所も販売する商品も、様々な企業が協力してくれた。

minamo 天坂晋代表:
今回、コーヒーのご提供ということでお願いしているんですけど、お願いしてもよろしいでしょうか

コーヒーは無償提供だ。以前からこの店のコーヒーが気になっていた天坂さんが、SNSでメッセージを送り出店することを伝えると、快く提供してくれたという。
自家焙煎珈琲豆かりおもん 渡部恵佑さん:
学生という立場でチャレンジするということだったので、助けになればと思って提供しました
学生たちが運営する店のこだわりの1つが、県内産の素材で作られたものを提供することだ。

岩崎恭三商店 岩崎麻須美代表:
きょう持ってきたのは、茶葉のクッキーとほうじ茶のクッキー、それから粉末緑茶
県外から多くの人が訪れる観光地ということもあり、静岡の魅力を知ってもらう絶好の機会と捉えている。そして、メインのジェラートも到着した。
minamo 天坂晋代表:
バルクの形で届くのは初めてなので、店をやっている感があります

さっそくカップに盛る練習を始めたが、なかなかうまくいかない。
学生スタッフ:
半分くらい入れたら上にあげる。ちょっとまだ溶けちゃってる
minamo 天坂晋代表:
どれだけお客さんが来てくれるだろう、という不安がものすごくあるんですけど、この店をきっかけに、三保に来てくれる人が1人でもいればうれしい
いよいよオープン 来店客の反応は…?
8月のオープン当日、メニュー表を刷って準備も最終段階。

午前10時、いよいよオープン。お客さんの呼び込みも初めての経験だ。
学生スタッフ:
こんにちは。大学生が期間限定でジェラートカフェをオープンしています。よろしければいかがでしょうか?
親子連れ:
あちらですか

浜松から観光に来たという親子が、店に来てくれた。注文は抹茶とほうじ茶のジェラート。厨房も前日の練習の成果を発揮する。

親子の来店客:
おいしい、すごい濃厚
学生たちの思いのつまったジェラートは喜んでもらえたようだ。
来店客:
全然、富士山が見えなくてがっかりして帰ったことがあったので、地元の名産を食べながらゆっくり話ができる場所があるのはいい

この日は日中の気温が上がり、続々とお客さんが来店した。狙いだった若者の姿も見かけた。

来店した若者:
地元のものを使っているものを食べられて、すごく幸せ
別の客:
こういう映えるような店が三保になかったので、いい店だと思います
若者・地域・企業が一緒になって
この日は用意していたジェラート100個のうち85個が売れ、オープンした5日間はいずれも大盛況だった。学生たちは初めての挑戦で、大きな収穫があったようだ。

minamo 天坂晋代表:
企業の人と近くならせてもらったことや、社会人にも助けてもらったので、そういうところは学生だからこそできたと思っています。一丸となって店ができるということがわかったので、地域や企業と一緒にやれるような場所はいいなと感じました

三保の活性化のために知恵を出し、実際に行動に移した大学生。誇るべき観光地を今後も守っていくために何が必要なのか、若者たちの活動がひとつのヒントになりそうだ。
(テレビ静岡)