新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向だが、日本では依然として屋外でもマスクの着用が目立つ。静岡県では9月に、車内での着用をめぐりバス会社に行政処分が出された。
減少傾向をふまえ、わかりやすいマスク着用ルールの説明が求められるのではないだろうか。

感染者減少で市民は…

静岡県・川勝平太知事
会話がほとんどなければ、屋外ではマスクは不要。屋内でも2m以上離れて会話がないなら、マスクは不要

静岡県の着用指針を説明する川勝知事(2022年5月)
静岡県の着用指針を説明する川勝知事(2022年5月)
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国の動きに合わせ、静岡県からこの着用指針が示されたのは5月だった。
10月に入って第7波を越え、新型コロナの新規感染者の減少傾向が続いている。こうした中、10月12日に静岡市内の様子を取材した。

静岡市で取材する高里アナウンサー
静岡市で取材する高里アナウンサー

高里絵理奈アナウンサー
歩いている人を見ると、やはりマスク姿の方が多く見られます。そういう私もマスクをつけてリポートをしているわけですが、まだまだマスクを外しづらい状況なんでしょうか。皆さん、マスクの在り方について、どう考えているのでしょうか

市民
逆に、していないと目立っちゃうのかな

静岡市
静岡市

別の人
普段、子供と買い物など屋外では外しています

別の人
人がいないところでは外すけれど、人込みを通る時は着けた方が良いと思う

別の人
徐々に外すほうが主流になってくれば(外す)

政府も「マスク着用ルール」見直しの動き

10月中旬に入国の上限が撤廃され、水際対策が大幅に緩和された。観光需要の喚起策として全国旅行支援も始まった。

静岡市
静岡市

これを前に政府では…

岸田首相(9月6日):
屋外でのマスク着用、濃厚接触者の範囲などについても、同様の観点から科学的根拠に基づき、順次緩和を進めていきます

木原官房副長官(10月7日):
屋外屋内を問わず、(ルール)全体を整理されるものと理解しています

政府が意識しているのは、“世界と歩調を合わせた取り組み”。そのために「マスク着用のルール化」の検討はどう進められるのだろうか。

バス運転手と乗客のトラブルが波紋

こうした中、9月に静岡県内で出されたマスク着用をめぐる行政処分が大きな議論を呼んた。

マスク未着用の女性が乗車したバス停
マスク未着用の女性が乗車したバス停

雨宮帆風記者
マスクをめぐるバスの乗客と運転手のトラブル。女性は順天堂大学静岡病院の近くにある、こちらのバス停からバスに乗車しました

マスクをめぐるトラブルがあったバス路線
マスクをめぐるトラブルがあったバス路線

トラブルが起きたのは2022年4月、沼津市から伊豆の国市に向かうバスでの出来事だ。
バスに乗ってきた女性がマスクを着けていなかったため、運転手は複数回、「マスクをしてください」と協力を求めた。しかし、応じなかったため女性を降ろした。

女性が降ろされた場所
女性が降ろされた場所

雨宮帆風記者
女性が降ろされたのは、乗車したバス停の次のバス停である、こちらではなく、10mほど過ぎたこの辺りだったということです

中部運輸局の行政処分
中部運輸局の行政処分

国土交通省 中部運輸局は、正当な理由なく乗車を拒絶する行為だったとして、「バス2台の使用停止25日間」という行政処分を出した。

市民
(降ろすのは)せめてバス停がよかったのかな

別の市民
「こういう事情でマスクをつけられません」という理由が、見てすぐに分かれば、何も言われないのかな

道路運送法では、「約款に反する」「設備がない」など乗車拒否をできる事例を6つ定めていて、その中に「公の秩序、もしくは善良の風俗に反するものである時」という規定がある。

しかし、行政法を専門とする静岡大学 人文社会科学部の高橋正人教授は、マスクを着けていないだけでは「公の秩序・善良な風俗に反するもの」に該当しないと話す。

また運輸規則では「感染症患者とみなされる人」の乗車拒否も認められているが、これについても「マスク未着用」だけでは該当しないと言う。

事業者の対応に問題があったため、今回は行政処分が下された。

タクシー・旅館でルール見直しの動きも

高橋教授は「行政処分は過去の同じような事例を元に行われたと思うが、コロナ禍の特殊な事情を考慮すると、通常の処分よりも軽くすべきではなかったか」との見解も示す。

バス事業者のこうした対応の一方、タクシー会社の中には「病気など正当な理由なく、マスクをしない場合には乗車を断れる」と運送約款の変更を求め、国から認められた事業者がある。
また、マスクや検温など感染対策への協力に応じない人の宿泊を拒否できるよう「旅館業法の一部改正」も、いま臨時国会で審議されている。

加藤勝信厚生労働相(10月11日):
政府が発信している今時点におけるマスク着用の考え方は、必ずしも国民の皆さんと十分に共有できているとは言い難い状況。必要な所はしっかり(マスクを)やって下さい。そうでないところはマスクの着用は求めておりません。必要ありません。そこのメリハリ、そういった所を申し上げていくのが大事ではないか

今後の感染動向 懸念されるインフル流行

厚生労働省に助言を行う専門家組織アドバイザリーボードは、10月5日の会見で今後の感染動向について、3つのシナリオを示している。

1つ目が、小規模の流行が継続していく。
2つ目が、年内に大きな流行が来る可能性がある。
3つ目が、年明けに規模として大きな流行が来る。

どれになるのかを決める要因も3つある。

1つ目が、ウイルスの特性。どういう変異株が来るのか。
2つ目が、人々の免疫。ワクチン接種、感染による免疫がどの程度持続されるか。
3つ目が、社会的な要因・人々の行動だ。

これに加え、懸念されるのがインフルエンザとの同時流行だ。

静岡県健康福祉部・後藤幹生参事
静岡県健康福祉部・後藤幹生参事

静岡県健康福祉部の後藤幹生参事は、南半球でインフルエンザの流行が起こっていて、今冬はとくに警戒が必要と話す。

政府は“マスク着用”で明確な方針を

マスク着用をめぐる政府の見解
マスク着用をめぐる政府の見解

こうした中、肝心な政府は見解がどうか。
木原副官房長官がマスク着用ルールについて「屋外屋内を問わず、全体が整理されるものと理解している」と発言したことに対して、加藤厚生労働相は「木原副長官の話では、新たな(ルール)という言い方はしていない」と打ち消すような発言があった。
さらに加藤厚生労働相は、「感染対策のありかた、海外の動向をみて不断の見直しを図る」との見解を繰り返し示した。

入国緩和、旅行支援などコロナ禍前の社会経済を取り戻す動きが進む中、今後の感染動向については依然として見通せない面もある。国際的な歩調とのズレも生じている。

マスク着用の明確な指針が望まれる
マスク着用の明確な指針が望まれる

マスク着用は、いつどうすればよいのか、今後どうしていくのか。医学的な根拠を踏まえた上で、政府には見える形で議論を進め、誰にも分かりやすい明確な指針を示すことが求められる。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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