10月14日は「鉄道の日」で鉄道が開業して150年を迎える。

こうした中、赤字経営が続く近江鉄道が、10月16日に大人も子供も全線運賃無料となるイベントを実施する。SNSでは、「素晴らしい企画ですね!!」「これは行かねば」という声がある中、一部では「どうした、潰れるんか?」「これって正気ですか?」と言った心配の声も上っている。

近江鉄道 300形(画像提供:近江鉄道)
近江鉄道 300形(画像提供:近江鉄道)
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そもそも近江鉄道は、滋賀県東部を走り、地域住民の足となり親しまれている鉄道だ。電車の走る音から“ガチャコン”の愛称で呼ばれている。しかし、長きに渡り、赤字経営が続いており、令和6年度以降は、列車の運行は鉄道会社、線路などの維持管理は自治体が担う「上下分離方式」で運営することが決まっている。

近江鉄道 路線図(画像提供:近江鉄道)
近江鉄道 路線図(画像提供:近江鉄道)

こうした中、10月16日に「近江鉄道グループありがとうフェスタ2022」というイベントを開催。イベント当日は、近畿地区で初めてとなる「近江鉄道線全線無料デイ」を実施される。また、近江鉄道バス・湖国バス・八幡山ロープウェイ・オーミマリンの子どもの運賃もこの日は無料となる。

近江鉄道グループありがとうフェスタ2022(画像提供:近江鉄道)
近江鉄道グループありがとうフェスタ2022(画像提供:近江鉄道)

なぜ今回、全線無料となるイベントを開催したのか?SNSの心配の声をどう感じているのか?近江鉄道の広報担当者に詳しく話を聞いてみた。

コロナ禍で落ち込んだ利用客を呼び戻し、活気ある街を目指す

――なぜ全線無料することにした?

狙いは以下の3点になります。

〈地域鉄道の存続、乗車体験作り〉
従来の利用減少に加え、コロナ禍も重なり地域鉄道の存続は一層厳しい状況で、国の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」にも取り上げられ、全国的な課題となっています。近江鉄道線は企業単独での存続が困難となり、滋賀県ならびに沿線10市町による上下分離方式での存続に向けて検討が進み、地域の協働事例として注目されています。その中、自動車社会が進む滋賀県では、鉄道に乗車したことのない住民も増えていることが課題と考えており、乗車を体験する機会を積極的に作る必要があります。

〈コロナ禍で疲弊している沿線地域へ誘客し活性化を図る〉
鉄道の利用促進には魅力ある居住地・観光地が必要です。電車無料デイを実施することでコロナ禍により落ち込んだ沿線各地の利用旅客を呼び戻し活気ある街とすることを目指します。また、地域ごとに活性化イベントを実施してきた各団体の方々に呼びかけ、鉄道を軸に一体となり、同日に広域でイベントを協働する大きな活動を形作ることも試行します。 

〈鉄道活用の機運醸成〉
鉄道の無料デイにより利用者が増え、地域イベントが盛大になり、さらに渋滞が減ることで鉄道の存在感を地域に実感いただき、鉄道を誘客に活用しようという機運を醸成します。


――経営は赤字が続いている?

鉄道事業におきましては28期連続の赤字計上です。


――SNSの中には、「どうした、潰れるんか?」と心配する声もあるが…

そのような心配をいただくのは当然だと考えております。ですが、ただ電車無料をしただけでなく、この機会に鉄道を利用いただき、鉄道を身近に感じていただくこと、さらには、今後の利用するきっかけを作りたいと考えております。また、今回は沿線各地で協力団体による様々なイベントも開催されます。沿線各地に誘客を図り活性化を期待している点もございます。

※車両の様子(画像提供:近江鉄道)
※車両の様子(画像提供:近江鉄道)

宣伝効果、乗車体験の効果と見合わせれば問題ない

――全線無料にすることで、さらなる赤字を招くことにつながるのでは?

休日のご乗車が少ないことから宣伝効果、乗車体験の効果と見合わせて問題ないとは考えております。


――SNSなどで大きな反響があるが、企画の狙いとしては成功といえる?

沿線の方々、県内、関西、全国へとSNSやメディアの力をお借りしてこのように取り上げていただき、認知いただけていることは現段階では成功かとは思いますが、当日に多くの方にご利用いただき、今後の利用者の増加に繋がってこそ成功と考えています。

※車両の様子(画像提供:近江鉄道)
※車両の様子(画像提供:近江鉄道)

沿線ならではの歴史や自然を感じていただきたい

――近江鉄道の魅力を教えて?

沿線ならではの歴史や自然を感じていただきたいと思います。
国宝の彦根城や多賀大社、近江商人の地など文化遺産や昔ながらの街並みを楽しんでいただきながら自然の豊かさを感じていただくのがおすすめです。


――当日、お客さんにはどのように楽しんでもらいたい?

当日は近江鉄道にご乗車いただいて車窓からの風景であったり、沿線の連携イベントや観光地を巡っていただき沿線の魅力を感じて発見していただきたいです。


――人がたくさん集まりすぎて、当日、電車に乗れないということはない?

当日まで乗客数が分からないのが心配ですが、乗り切れない場合は臨時電車の運行も予定しております。


――全国の鉄道ファンや近江鉄道のファンに向けてメッセージを!

普段鉄道をご利用されていない方にも今回の電車無料デイを通して、利用していただき身近に感じていただきたいと思います。また近江鉄道沿線のイベントに参加して地域に親しんでいただきたいです。
 

休日の乗客が少なくPR効果が高いことから、さらなる赤字を招くことはなさそうということだった。10月16日の全線無料イベントで、近江鉄道の魅力を多くの人に知っていただき、利用客が増加することを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。