阿倍野・天王寺、通称「あべてん」は、「ストリートライブの聖地」と言われ、有名なミュージシャンを輩出してきた。コロナ渦を経て、「てんしば」で3年ぶりに開催された街をあげての無料ライブ。商店主たちが届けたかった思いとは…
3年ぶりの野外フェス 路上出身のflumpool参戦!
10月1日、秋晴れとなった「てんしば」では、朝早くから整理券の受け取りで行列ができていた。
スタッフ:
ゆっくりお進みください
この日、開かれていたのは「ABETEN STREET BUTTERFLY(あべてん ストリートバタフライ)」。2016年から「阿倍野・天王寺」地域で開催されてきた無料のライブイベントだ。

コロナ禍を経て、2022年に3年ぶりの開催。スペシャルゲストとして登場するのは…ここ天王寺でのストリートライブから始まり、紅白出場も果たした大阪出身のロックバンド「flumpool(フランプール)」だ。
整理券をもらうために列に並んでいた人は…
2人組の男性:
イベントはflumpoolが出るってことで知った
(Q.どちらからいらっしゃった?)
2人組の男性:
東京から来ました
3人組の女性:
flumpool!この天王寺で“復活ライブ”もここでやってたので、思い出して初心に返れる

ストリート聖地「あべてん」で野外フェス 仕掛け人はバンドマン
このイベントを企画したのは、普段はライブハウスで働くバンドマンの中川伸明さん。
ABETEN STREET BUTTERFLY 中川伸明実行委員長:
もともとこの阿倍野・天王寺という地域が、著名なミュージシャンとかも出てきたストリートライブをいろんな所でしている場所だったんですね。そのこともあって、“ストリートの聖地”というふうに呼ばれるようになっていた。音楽とこの地域と飲食と新旧つらぬく商業施設がたくさんあるんで、そこを連動するイベントしたいなあっていうのが一番最初の始まりで…

阿倍野・天王寺は「ストリートの聖地」とし、コブクロなどの有名なミュージシャンを輩出してきた場所でもある。
ABETEN STREET BUTTERFLY 中川伸明実行委員長:
気持ちは充電していた分、前のめりではあるんですけど、今までのように思い通りできないというか、感染対策などもあるんで、より慎重に時間をかけて進めている

商業施設の協力もあって、阿倍野・天王寺エリアに7ステージを構え、計61組のアーティストが、街のいたる場所で分刻みのライブを開催する。イベントには地元の飲食店14店舗が出店。地域の中心となったのが、阿倍野区商店会の和田会長だ。
阿倍野区商店会連盟 和田一義会長:
第1回目のオーディションの時も、音楽分からんのに(審査員で)出さしていただいて。見ていたら、男の子が「陸橋で歌ってたら、おっちゃんにえらい怒られた」と。「それが阿倍野で歌えるので応募しました」というようなことがあった

(Q.もともとはストリートミュージシャンに注意してた?)
阿倍野区商店会連盟 和田一義会長:
注意する側やったんですけど…彼らのパワーというか若い人のパワーが、阿倍野・天王寺を良くしているんかなと
昔はストリートミュージシャンの若者に注意をする立場だったが、今では74歳の最年長実行委員として、イベントを支えている。
コロナ禍で街から人がいなくなったが、このイベント開催をきっかけに阿倍野・天王寺地域…街をあげての再スタートとなる。

3年ぶりの街フェス復活の“舞台裏” 音楽で阿倍野・天王寺を元気に!
午前11時半に「ABETEN STREET BUTTERFLY2022」がスタートした。中川さんが楽屋に挨拶に行く。「皆さん一発目なんで、STREET BUTTERFLYよろしくお願いします!!」
高校生活全てがコロナ禍で、活動の場がなかった高校生たちのステージには家族や友人たちが集まった。

休む間もなく、それぞれのステージを見に行く実行委員長の中川さん。あべのハルカスの16階では街が元気になるならと、この日に特別にステージを作ってくれている。

「てんしば」の飲食ブースも賑わっている。
出店した店:
裏天王寺で割烹酒場をやってるんですけど…今コロナで落ち込んでる飲食業界も、音楽もライブとか小さくなってきてるんで、お互いに助けあってやっていけたらって思いました

スペシャルライブが直前に迫り、会場は一気に慌ただしくなった。お客さんたちに「申し訳ございません、ご協力よろしくお願いします」と言いながら、会場を駆け回る中川さん。
ABETEN STREET BUTTERFLY 中川伸明実行委員長:
僕にとったら、今までやらせて頂いた「恩返しがしたい」みたいな気持ちがすごくあったんで。今回たくさんの人が集まってもらって、より街に還元して一気に元気になってもらいたい

ついにスペシャルライブが! 多くの観客が喜んでいる姿…溢れ出た“涙”
ついに、楽しみにしていたflumpoolのライブが始まった。
flumpool 山村隆太さん:
てんしばの皆さん、こんにちは!フランプールです。最後まで楽しんでいってね

この日、約3000人もの人が集まった。音楽を楽しみ、街に人が集まる、見たかった景色。中川さんの目が潤んでいる。
flumpool 山村隆太さん:
15年前くらいかな、この天王寺、南口で路上ライブやってたんですよ。路上ライブは551さんの前でやってたんですけど、551さんにもだいぶ迷惑かけましたよ、豚まんも買いましたよ。

flumpool 山村隆太さん:
そういう思い出深い場所で、14年メジャーでやってきて、またこの土地に帰ってきて、こんなに温かく迎えてくれるのは本当にありがたいね。ありがとうございます

舞台袖で泣く中川さんの肩を、和田会長が抱いた。最初は一番怖かった商店会の和田会長が、いまは一番の理解者だ。

flumpool:
めっちゃ楽しかったよな~、めっちゃ楽しかった。
人と地域のつながりは大事にしたいなって思ってるんですよね。バンドして音楽を通して、大阪の人がもっと大阪を好きになれるような、自分たちがもっと大阪を好きになってもらえるような取り組みができたらいいなと思います

会場を出るflumpoolから中川さんへ「ありがとうございました、最高やったす。泣いてるの見えたから、こっちが泣きそうなった」と声掛けがあった。

ABETEN STREET BUTTERFLY 中川伸明実行委員長:
ずっと泣いてた。(インディーズ時代からの曲)「labo」がグッときた

音楽で街を元気に…また2023年にむけて動き出している。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月7日放送)