北海道函館市で活動する、若いプロ画家がいる。最大の目標にしていた札幌での個展が、10月5日から始まった。
作品を生み出す苦しみにぶつかりながらも、夢に向かった18歳。挑戦と成長の1年を追った。

「絵画は戦い、格闘です」 制作はいつも"生みの苦しみ"

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プロ画家 藤倉朱里さん(18):
絵画に関してはあまり楽しいと思えたことがない。戦い、格闘ですね

北海道南部の今金町出身、藤倉朱里(しゅり)さん 18歳。描き出される作品は、どれも奇抜で色鮮やか。"心の叫び"と"葛藤"をキャンバスにぶつける、新進気鋭のアーティストだ。

きっかけは、2年前に出演したテレビ番組だった。明石家さんまさんに作品を高く評価された。

プロ画家 藤倉朱里さん(18):
もともと絵で生きたかったが、私には無理だと思って諦めていた。そういう機会もあってか、じゃあ私は絵で生きていこうと決めた

2021年5月に拠点を函館に移し、プロの画家として活動している。注目度が上がる朱里さんだが、作品を生み出す苦しみが押し寄せることもある。プロならではの、プレッシャーに押しつぶされそうになったこともあった。

プロ画家 藤倉朱里さん(18):
つらくて、精神的にちょっときている

そんな時、支えになったのは家族だ。

朱里さんの父:
将来的に諦めてやめてしまった場合、「あの時もっとがんばっておけば」とならないように

朱里さんの母:
後悔だけはしないように

認められた"魅力" 「堂々としたいんだけど、うれしすぎて」

2022年3月、函館で個展を開いた朱里さん。作品に魅力を感じてくれる人がいるのか、少し不安そうだった。

個展を訪れた男性:
色使いが細かいのが、すごく好き

自分の作品を「好き」と言ってくれた。

朱里さん:
えっ、買うって。えっ、本当ですか?

男性:
買います

描いたのは、大好きなキリン。骨になってもずっと自分の味方でいてくれる、そんな思いを込めた作品が購入された。

さらに、キリンが縁で新しい出会いもあった。

個展を訪れた 中塚徹朗さん:
私は建設会社でクレーンを持っていて、(クレーンに)目玉をつけてキリンのようにしている。彼女もキリンが好きだということで、一枚絵を書いてもらうことにした

建設業界に親しみをもってもらおうと、20年以上前から、クレーンにキリンの模様をあしらってきた北海道福島町の建設会社社長、中塚徹朗さん。

朱里さん:
この絵だと70万円になる。高いんですよ

中塚さん:
どう?

朱里さん:
私だったらこんな感じの爆発したように描いちゃう

中塚さん:
爆発する、いいね!

朱里さん:
いいんですか?爆発して大丈夫なのであれば、ブワッと描いちゃう

中塚さん:
爆発いいね。こっちでいいよね

朱里さんに舞い込んだ、大きな仕事。さらに、ほかにもオーダーしたい絵があるという。

中塚さんの妻・真理さん:
今、(愛犬ガロアの)甲状腺が悪くてね。皮膚が悪くて、毛が抜けちゃって。だからこそ絵を残したいなって

朱里さん:
これはF8号。子どものサイズで大丈夫ですか?

中塚さんの妻・真理さん:
これも感性のままに描いていいですから、爆発で

朱里さん:
ありがとうございます。
やばい、どうしよう。2枚で、片方はF8という子どものサイズで、キリンの重機の方が1番でかいF30号っていうサイズ。初めてで、やばいですね、どうしましょう。堂々としたいんですけど、うれしくて…

総額約95万円の絵のオーダー。プロになってから最も高額な依頼だ。
うれしさの一方で、自らの発想で作品を生み出すことが多い朱里さんは、依頼者の思いをカタチにする難しさに悩んでいた。

朱里さん:
自分が思ったものと、お客様が思ったものが違ったらどうしようという不安が、やっぱりあります

描かれたのは"夢"と"未来"  悩み抜いて生まれる「出会い」

依頼を受けてから、半年。悩みながらも、作品は徐々に形作られていった。

絵を依頼した 中塚徹朗さん:
すごいね

プロ画家 藤倉朱里さん(18):
子どもの夢を作りあげる、キリンのクレーンというモチーフで描いた。こちらは子どものいっぱいのスマイル

絵を依頼した 中塚徹朗さん:
われわれにとっては過去ではなく、未来みたいな絵に見える。希望が感じられて。あと喜び。感情の起伏があるよね

キリン模様のクレーンと、愛犬の絵。どちらも朱里さんらしい、奇抜で力強い作品に仕上がった。

絵を依頼した 中塚徹朗さん:
ある意味出会いだよね

中塚さんの妻・真理さん:
(半年前)会えなかったら、まっすぐ帰るって。だから車で待っていた

夢の舞台は…確かな"手ごたえ" 「自信は一歩一歩」

そして10月5日に始まったのは、最大の目標と位置づけてきた、大丸札幌店での個展。自分の存在を知ってもらうチャンスだ。緊張感が漂う。

画商・片岡世地さん:
よろしいですか。ありがとうございます。お買い上げいただきました

朱里さん:
えぇ、本当ですか?

作品を購入した夫婦:
そのために(個展を)開いているんだから。頑張って

購入された作品の名は、「八方美人」。今金町に住む祖父母の家にあったコチョウランを鮮やかに描いた。

作品を購入した夫婦:
活躍を楽しみにしている。今金町の星として

作品を購入した夫婦:
北桧山で勤務したことがあって、思い出の土地だった。同じ地域から出てきた若い画家なので

ーー購入しようと思っていた?
そこまでは思っていなかったが、すごく若い方なので応援したい気持ちもあり購入した。才能がすごいので、どんどん伸びていってほしい

朱里さん:
えぇー、と、2度見してしまった。うれしいですね。
自信のかけらもないけれど、自信は一歩一歩つくのかなと思っている。
買ってくださるということは、自分を応援してくれているのと同じなので、意地でも粘って頑張ろうと思います。
よかった、です。

不安を原動力にしながら、この1年で確かな感触をつかんだ朱里さん。日本、そして世界に羽ばたくアーティストへ。描き始めているのは、未来だ。

(uhb北海道文化放送)

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