150年続く長野県松本市の畳店の5代目が、畳の「縁(へり)」を利用したグッズ、その名も「ご縁(えん)グッズ」を作っている。丈夫で色とりどり、様々な模様の「縁」で作られた雑貨の数々は、客にも好評だという。
「和」のテイストで畳のある暮らしに目を向けてもらおうと、制作に励む様子を取材した。
畳を身近に感じてほしい 懐かしいけれど新しい雑貨の数々
和の風情を感じさせる、ペンケースにカードケース、そして手提げのバッグ。


伝統的な和柄から、ヒョウ柄や、ビールと枝豆が描かれたユニークな柄のものもある。


実はこれらの材料は、畳の「縁」だ。

作っているのは、松本市梓川の「村松畳店」5代目・村松俊弥さん。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
畳の縁の素材を、1人でも多くの人に身近に触ったり、見てもらったり、知ってもらいたいということがきっかけで、雑貨を作り始めました
畳職人として働きながら、クラフト作家としても活動している。さらに、もう一つの顔が…

ドラムをたたく村松さん。高校時代からバンド活動を続けている。
ロックと畳、共通点は見当たらないが…。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
本当に単純なんですけど、子どもの頃から父親の仕事風景、作業を見ていて…
小さい頃から、父親の姿を見てきた村松さん。家業を継ぐことは、音楽に親しむのと同じくらい自然なことだった。
村松畳店5代目・村松俊弥さん:
作るという作業も好きですし、新しい畳を入れた後にお客さまが本当にいい表情になって「まあ、こんなに部屋が明るくなって」と喜んでくださる。それが職人冥利につきます
創業約150年!店を守るため…畳の「縁」に注目
店は創業約150年。2代目・土佐蔵さんの時代の写真を見せてくれた。

父・恒宏さんは4代目。村松さんは高校卒業後、5代目として職人の道に進み、父の下で腕を磨いた。
しかし…
村松畳店5代目・村松俊弥さん:
自分が後を継いだ頃は洋間ブームというか、畳が少なく感じて。(父と)2人でやるほどの仕事はないのでは、という時はありました
住宅環境の変化で、畳の需要は減少傾向だ。地道な営業が続いた。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
仕事が本当に少なくて。どうにかしてこの畳の良さをお客さまに知ってもらって、畳の張り替えを促したりとかできないかと、そればかり考えてました
店を守っていくためにはどうしたらよいか…。
村松さんは、さまざまな色や柄、“ラメ入り”のものもある「縁」に着目し、グッズ作りを始めた。

丈夫で見て楽しい「ご縁グッズ」作るなら「職人クオリティーでやりたい」
村松畳店5代目・村松俊弥さん:
畳の縁に見えないですもんね、最初、雑貨だけを見ると
縁(へり)と縁(えん)を掛け、「ご縁(えん)グッズ」と名付けた。イベントなどで7年前から販売している。

作っているところを見せてもらった。
縁を折りたたんで、ミシンで縫い合わせていく。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
一級技能士の畳屋さんが作る雑貨なら、職人クオリティーでやりたいじゃないですか
完成したのはカードケース。柄が特徴的なご縁グッズだが、そもそも畳を補強するものなので、丈夫なのもうれしいポイントだ。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
結構、注目してくださるんですよ、皆さん。珍しいものですから、作品を見ていただいて「うちの畳もそろそろやらないといけないからお願いします」と畳の工事につながったことも
ご縁グッズは、知り合いが営むパンと家具を販売する店「パントキ」(長野県松本市梓川)で、10月23日までの期間限定で売られている。(ペンケース550円・カードケース550円・キーホルダー440円)


客:
ちょっとしたプレゼント、何かのお礼とかで渡しても喜ばれそう
ご縁グッズを販売する「パントキ」小口明宏 代表:
そうですよね
客:
欲しかった
ご縁グッズを販売する「パントキ」小口明宏 代表:
見てて楽しいし、パッと視覚的に目を引くというのもきっとあると思う。サッと手に取られてお求めになる方も多くいる
5代目の挑戦に、父・恒宏さんは…

村松畳店4代目・村松恒宏さん:
縁(へり)ってものは畳へつけるもんだと思っていたんですが、作っているのを見たら「おお、これまたいいじゃないか」ということで、新しい感覚を取り入れた仕事もいいじゃないかと。せがれには本当に感謝してます
畳に触れるきっかけに

クラフト展への出品に力を入れる村松さん。ご縁グッズをきっかけに、畳を求める客との「縁」も結べたらと考えている。

村松畳店5代目・村松俊弥さん:
畳に触れる機会がない方も増えてきてるとは思うので、雑貨を通じて畳の素材感、やすらぎみたいなものを感じてもらって、畳って日本人らしいねとか、落ち着くねとか、そういうきっかけになってもらえたらな
(長野放送)