10月に入り、国内ではさまざまな製品の価格が上昇している。コストパフォーマンスが良かったものも例外ではないことを、伊藤園の「健康ミネラルむぎ茶」を例にとりあげたい。

むぎ茶飲料である「健康ミネラルむぎ茶」は、ペットボトルのパーソナルサイズ(500~600ml帯)で、消費者のニーズに応えるように増量を続けてきた。その歴史をたどると、2002年に前身となる「天然ミネラルむぎ茶」が500mlで発売され、2010年には600mlに増えた。

2012年からは「健康ミネラルむぎ茶」の名前になり、630mlとさらに増量。その後も、2015年には650ml、2016年には670mlと、飲用シーンや時代に合わせて容量を変化させてきた。

伊藤園「むぎ茶」シリーズの増量の記録(編集部制作)
伊藤園「むぎ茶」シリーズの増量の記録(編集部制作)
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この間は消費増税もあったが、希望小売価格は130円~140円(税別)で通しつつ、内容量は増やしてきたのだ。今では当たり前となった、600mlクラスのペットボトルの先駆けともいえるだろう。

10月1日の出荷からついに価格改定へ

しかし、コスト上昇による今年の値上げの波には抗えなかった。伊藤園は10月1日の出荷から、健康ミネラルむぎ茶を価格改定して650mlは150円に、670mlは160円となった。これまでの企業努力を見ると異例ともいえるが、なぜ、このタイミングで決断したのか。伊藤園の担当者に背景を聞いた。


――むぎ茶シリーズはなぜ増量を続けてきたの?

当社では「お客様第一主義」のもと、お客様のニーズに合わせた製品開発を行い、時代に合わせた味わい、容器、容量などを検討しています。「健康ミネラルむぎ茶」は、水分&ミネラル補給という製品特性から夏場の需要が高く、「500mlより容量が多い製品がほしい」というお声も一部いただいておりました。こうしたニーズに応え、お子様から年配の方々まで安心して飲んでいただける価値を認知していただきたいという想いから続けてきました。

現在の「健康ミネラルむぎ茶」ペットボトル商品の一覧(伊藤園のブランドサイトから引用)
現在の「健康ミネラルむぎ茶」ペットボトル商品の一覧(伊藤園のブランドサイトから引用)

――600mlクラスにまで増量を続けた理由は?

平均気温の上昇もあり、飲料を飲む頻度や量が増えていること、健康管理としてこまめに水分補給をすることへの意識が高まってきたこと。近年では、1本を何時間もかけて飲む「ちびだら」飲みや冬場の水分&ミネラル補給として飲まれる方が増えてきていたこと。こうしたニーズに応えるためです。


――増量による、売上や利益への影響は?

お客様のニーズにあった製品開発が、売上増加など当社の収益として貢献するとともに、むぎ茶飲料の認知拡大と市場拡大にも貢献できたのではと考えています。夏場の飲み物のイメージだったむぎ茶が年間を通して飲んでいただける飲料になり、味わいの進化もご評価いただけています。むぎ茶飲料市場では、販売数量でNo.1ブランドとなっています。

年間を通して飲まれるようになったという(伊藤園のブランドサイトから引用)
年間を通して飲まれるようになったという(伊藤園のブランドサイトから引用)

――他社の飲料も増量したが、業界で内容量の競争はあったの?

各社も増量タイプを発売されていますが、当社としては容量を競うのではなく、甘く香ばしいやかん品質の「健康ミネラルむぎ茶」のファン、強いては伊藤園のファンになっていただけるよう製品開発に努めています。常によりおいしい製品づくりを求め、原料や焙煎を工夫して進化してきました。

さまざまなコスト増を企業努力でカバーできなくなった

――そうした中、値上げに踏み切ったのはなぜ?

昨今のエネルギー費や物流費・人件費の高騰といった社会・業界全体におけるコストの上昇、包材などの資材価格や原料価格の高騰などが続くことが想定される中、企業努力だけでコストの上昇を吸収し続けることは困難な状況です。そのためやむを得ず、価格改定をさせていただきました。


――企業内ではどのような検討がされた?

さまざまなコストが少しずつ上がっていく中、品質を落とすことなくお客様に満足いただける製品を提供していくにはどうするべきか常に検討しました。価格改定という手段を選ぶ前に、例えば容器の軽量化などの企業努力でしのいできましたが、この先もコスト増が解消されないと判断しました。

ラベルレス製品も販売※ケース販売専用(伊藤園のブランドサイトから引用)
ラベルレス製品も販売※ケース販売専用(伊藤園のブランドサイトから引用)

――製造コストの増加にはどんなことが影響した?

PET原料、ラベル原料、原料輸入コスト、また、石油高騰による物流費や人件費の高騰などの要因が影響しています。新型コロナウイルス感染症の拡大も背景にあると考えられます。
 

さらなる増量は?担当者「物理的には可能ですが…」

――健康ミネラルむぎ茶がさらに増量する可能性は?

現在も670ml以上の容量帯で、1Lや2Lなどのホームサイズがありますが、屋外で持ち歩いて飲むサイズとしては適していません。増量は物理的には可能ですが、飲用シーンを考慮すると限界があります。重さや持ちにくさ、ドリンクホルダーに入らないなどの不具合も考えられます。しかしながら今後もお客様のニーズに対して、可能な限りお応えできるよう努めていきます。


――伊藤園の製品が今後値上げする可能性は?

ほぼすべての製品に係わるコストが上昇し、状態の改善が見込まれない中で品質を維持、進化させていくには、価格改定という手段も取らざるを得ない状況です。現時点で検討中の課題ではありませんが、変化の激しい時代の中で、改訂した価格でお客様に満足いただける製品を提供していくことが困難と考えられる場合は、検討することになると思います。価格に見合った、もしくはそれ以上の価値を感じていただける製品開発に努めてまいります。



原材料の価格や物流関係の費用など、さまざまなコストが上昇し続けているという現在。企業努力だけではカバーが難しいというので、お気に入りの商品が存続していくために消費者側もある程度は受け止めていくべきかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。