10月4日、北朝鮮がミサイルを発射した。5年ぶりに日本の上空を通過したことで、さらに緊張が高まっている。北朝鮮の狙いは何なのか、また日本はなぜ迎撃しなかったのか。朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授と、関西テレビの神崎デスクが解説する。

軍事力の向上とアピールが目的

10月4日午前7時22分ごろ、北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、7時44分ごろに日本の排他的経済水域外の太平洋へ落下した。飛距離は過去最長の約4600キロ、最高高度は約1000キロとされている。

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Q. 約4600キロといえば、米軍基地のあるグアムも射程に捉えるわけだが、北朝鮮はなぜこのタイミングで日本上空を通過するようなミサイルを発射した?

龍谷大学​ 李相哲教授:
今回、日本上空を飛び越す方向にミサイルを撃ったのは、ある意味でアメリカへの配慮があると思います。現在、米韓合同軍事演習を行っていますので、そちらの方に撃つと何か起こる可能性がある、だからグアムの方向は危ないと。方向としては2つしか考えられませんが、その中でも少し危険性の低い方向を選んだとみられます。
間違いなく米韓合同軍事演習に対する反発ですが、北朝鮮の目的はひたすらに軍事力の向上と、「我々はこれだけの軍事力を持っているんだ」というアピールです。今まで中距離弾道ミサイル「火星」を4回撃っていますが、やはり中距離の「火星12」が安定しているんですね。「火星17」は失敗だという評価があるので、安定したミサイルで技術力を見せたんだと思います。

Q. なぜ日本は今回、北朝鮮のミサイルを日本上空を通る前に撃ち落とさなかった?

関西テレビ 神崎博デスク:
日本の領土に落ちないと瞬時に判断したためです。アメリカの「早期警戒衛星」という、熱と赤外線を捉える衛星があります。北朝鮮内でミサイル発射時に出る熱を感知して、方向や角度を考慮し、未来位置が予測できます。今回は、日本を飛び越えて太平洋上に落ちるというのが数十秒で分かっていたので、迎撃するという判断をしなかった。

20回以上発射も成果報じず…その理由は

関西テレビ 神崎博デスク:
一方、実際に日本領土に落ちるとなった場合の迎撃システムもあります。日本海に浮かんでいるイージス艦にSM3という迎撃用のミサイルが搭載されています。これまでは高度500キロくらいと言われていましたが、現在は改良され、高度1000キロ以上を迎撃できる能力があるので、今回のミサイルであれば数値上は迎撃が可能です。

Q. 9月25日以降、ミサイルを連発している北朝鮮だが、李教授は“ある変化”が気になると?

龍谷大学​ 李相哲教授:
北朝鮮は今年に入って20回以上ミサイルを撃っていますが、労働新聞などで報じていません。今までは成果をアピールしていたのですが…裏を返せば、実験段階ではなく実戦配備、実戦に向けた訓練という位置付けとみられます。軍事目的です。

北朝鮮による核実験の可能性は?

Q. 国威発揚や対外的なアピールではないと。さらに、その先に核実験があると李教授は見ている。ICBM(大陸間弾道ミサイル)や SLBM(潜水艦発射ミサイル)の発射を行った上で、核実験というプロセスを踏みつつあるということだが…。

龍谷大学​ 李相哲教授:
そうですね。順番がどうなるかは定かではありませんが、北朝鮮が解決すべき課題は、ICBMとSLBMを完璧なものにすることです。さらに、今のさまざまなミサイルに核弾頭を乗せるには、核弾頭を小さくしなければいけない。そのための核実験の成功がぜひとも必要です。

Q. 韓国の国家情報院は、10月16日から行われる中国共産党大会と、11月8日に行われるアメリカの中間選挙の間に、核実験が行われる可能性が高いと指摘。これはなぜ?

龍谷大学​ 李相哲教授:
北朝鮮は核実験をすると、今年の2月から言われていました。米韓情報当局が「4月にやる」と言い切ったこともありますが、行われなかった。しかしその間、起爆装置の実験や豊渓里(プンゲリ)の実験場の整備など、準備を着々と進めていました。夏は湿気もありますし、道路事情が悪く、装備を運ぶ車が入るのが難しい。過去の例を見ても、北朝鮮の核実験は秋から冬に行われることが多いようです。

Q. 秋から冬ということなら、アメリカの中間選挙の後という可能性もある?

龍谷大学​ 李相哲教授:
中間選挙の前にやるのは、私は危険だと思います。バイデン大統領が何か変化をもたらしたいという考えを持っていたら、選挙で何かやるかもしれません。なので、韓国の国家情報院はこの期間に核実験をする可能性が高いとみていますが、私はそれは70パーセント程度で、中間選挙後に行われる可能性もあると思います。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月4日放送)

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