東京・千代田区の日本武道館で27日、行われている安倍元首相の国葬で、菅義偉前首相が、友人代表として弔辞を述べ、安倍氏との思い出を振り返った。

安倍内閣で「女房役」の官房長官を長く務めた菅氏は、弔辞の冒頭、7月の銃撃事件当日について、「『とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい、同じ空間で、同じ空気をともにしたい』その一心で、現地に向かった」と振り返り、「あなたならではの温かな微笑みに、最後の一瞬、接することができました」と述べた。
そして、安倍氏との思い出を振り返る中で、2012年の自民党総裁選に、安倍氏を担ぎ出した際のエピソードを語った。
菅氏は、2007年に首相を退き総裁選出馬を迷っていた安倍氏を説得するにあたり、「最後には、2人で銀座の焼鳥屋に行き、私は、一生懸命、あなたを口説きました。それが、使命だと思ったからです。3時間後には、ようやく首を縦に振ってくれた」と明かした。
その上で、「このことを、菅義偉、生涯最大の達成として、いつまでも誇らしく思い出すであろうと思います」と述べた。
また、安倍内閣で官房長官を務めた当時は、「(安倍氏が)官邸にいる時は、欠かさず、一日に一度、気兼ねのない話をしました」として、「今でも、ふと一人になると、そうした日々の様子が、まさまざと、よみがえってまいります」と語った。
さらに菅氏は、安倍氏の国会内の事務所の机に、読みかけの『山県有朋』(岡義武・著)が置かれていたこと、最後のページの端が折られ、ペンで印を付けられていたことを紹介。
菅氏は、印が付けられていたのは、山県有朋(明治期の首相)が先に亡くなった盟友・伊藤博文をしのんで詠んだ歌だとして、「今、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません。
『かたりあひて 尽しし人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ』深い哀しみと、寂しさを覚えます」と語った。